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第81話 留守番

「えーと、今回街へ行くのは、アイリさんとアルフにお願いします」


 そう言ってから、決定を告げたソーンが皆の顔を見回すと、1人を除いて了解と告げるようにうなづいている。


 首を横に振りながらその一人が答える。


「ボクはソーンの側に居たいゾ、また魔物が襲ってくるかもしれないし・・心配ダ・・・」

 いつもは元気にピコピコとはねている黒い耳を横に伏せて、泣きそうな表情でアルフがそう言った。


 それには、意外にもミリアが答える。

「そうね、心配と言えばそうだけど、ルルキアへソーンが行くのも聞いた話だと危なそうだし、かと言って補給せずに次の目的地へ行くのもあまり得策じゃないしって・・・話しは、さっきしたんだから、2人は、ソーンが心配だったら、サッと行って、サッと帰ってくればいいんじゃない」


 少し悩んでいるようだったソーンもそれを聞いて答えた。

「・・・ごめんね。なんか心配かけてばっかりで・・・でもね、今度はちゃんとうまくやるから、ユキヒメも簡単な巣を張って守ってくれるってことだし、大人しく留守番してれば大丈夫だと思うんだ」


 それを寝転がって見ていたマイが答える。

「そうね、心配だったら魔物除けの香も焚いておこうか?」


 それには、ミリア以外の皆が一斉に答える。

「いえ、それはいりません!ってか余計なことはしないでくださいね」


 そのやりとりを不思議そうな顔でミリアがみている中で、ソーンがマイに尋ねる。

「それでマイ先生は街へ行かなくていいんですか、短時間ですが用事とかあれば分かれて行くのもできますよ」


それには、マイが慌てたように答える。

「えっ、そうね・・・とくに街へは用事もないし・・・そうそう、丁度いい機会だし、ソーン君に魔術の講義の続きも教えてあげたいしって事で」


それを聞いて、嬉しそうにソーンがうなづいている。


 一通り意見が出そろったところで、今度はアイリが答える。


「じゃあ、ソーン君の提案通りに、買い出しチームと、留守番チームに分かれて行動でいいわね。暗くなる頃には帰ってくるから、留守番は頼んだわよミリアちゃん」


 了解と手で合図をするミリアの横で、少し寂しそうな顔をしたソーンが頼もしい幼なじみの勇姿をみつめていた。



 ___必要な物資を再度確認した後、ルルキアへと向かう道へアイリとアルフが出発した。


 ソーン達は街道を少しだけ戻って、先に確認していた脇道へ進み、ちょっとだけ高台になっている場所へと移動する。


 なだらかな丘で、周りが広く開けている場所の中央に大きめの木が立っているので、その横に馬車をつける。


 ここなら見晴らしもいいし、突然襲われることも無いだろう危なくなったらユキヒメの協力で木の上に避難したりもできそうだ。


 そう思っていると、早速、白大蜘蛛ユキヒメが軽快に木の上に移動してなにやら糸を張り巡らしている。


 その近くをふさふさの尻尾を揺らして浮かびながら両手にリンゴを抱えた毛玉クーマが木の頂上へ向けて登っていく。


 特等席で、誰にも邪魔をされずにデザートを食べるつもりだろうか。


 

 その様子を御者台で、灰色の外套のフードに頭がすっぽり収まるぐらい上を見上げていたソーンに、そっと隣にきたミリアが声をかける。


「本当は街に行きたかったんでしょ。盗賊とか人攫いが危ないって分かってても、いつもは気にせずに行っちゃうソーンがどうして今回は留守番してるの?」


 それを聞いて慌ててフードから顔をだして、ミリアの方を向いたソーンが、困ったような照れたような表情で答える。


「えーと、そうかな。気のせいじゃない・・・」

 そう答えながら、ふいっと横を向いた。


 じーっとその顔を見つめていたミリアが、ふと答えに辿りついたのか、声をあげる。


「えっ・・・ちょっと、それが原因?もう・・・信じられない。アイリもちゃんと言えばいいのに・・・帰ってきたら後で説教だからね。アタシだってそれぐらいの危険は覚悟の上ですぅ」


 拗ねたような顔でそう言って、自らの赤毛に負けないくらいに、頬を赤くしたミリアがそっぽを向く。



 突然ご機嫌ななめの幼なじみにかける言葉が見つからずに、あわあわとソーンがしていると、馬車の中で真っ先にくつろいでいたマイが声をかけてきた。


「早速バレちゃったの?はじめからちゃんと相談すればいいのに。まあ私が言えたことじゃないけど・・・落ち着いたら講義をはじめたいけど、それどころじゃない感じかしら?」






 ___木の頂上で、シャクシャクと小気味良い音を立てて、果実をかじりながら遠くを眺めていると、気がつけば無くなっていたので、つづけてもう1つの果実に手をつける。


「ふむ、やっぱり足りないのぉ、買い出しについて行くべきだったかのぉ・・・まあそれも一時じゃろうが・・・」


 そう呟きながらふさふさした毛皮を揺らして目を細め、再び遠くを眺める。



 どれくらいの時がったのか、突然、クーマが囁くように答えた。


「・・・ほぅ・・・1つ、2つ・・・・」


 何かを楽しそうに数えだした。



 

 いつの間にか


 2本に分かれた尻尾を左右に揺らし___下に聞こえないくらいの小さな鳴き声をあげる。


 

 ___まだまだ夜までは時間が長そうだ。


いつも読んでくださりありがとうございます。続きも読んでいただけると嬉しいです。

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