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第69話 馬車の旅

石畳で整備された街道を馬車が駆けていく。


このペースなら思った以上に速く到着しそうだと、ソーンは隣に座っている幼なじみに振り向きながら話しかけた。


「いいペースだね、これだったら昼前には着いちゃうんじゃないかな」


突然振り向かれて目があった赤毛の少女が急いで目線をそらしながら答える。

「そっ、そうね。大街道にはいってからは道も良いし、でもゴゴさんは疲れてたりしないのかしら」


それを聞いたソーンは急いで尋ねる。


「ゴゴさん、ごめんなさい気づかなくて、そろそろ休憩にしませんか」


それには優しい声色が銀色のボディからかえってきた。

「心配ニハ、オヨビマセン、ゴゴハコレグライノ速度デアレバ全然大丈夫」


それを聞いて、ソーンが答える。

「それは心強いです。・・・じゃあどれくらい急いだときが大変だったですか」


ちょっと気になったので、優しくて力持ちの動く石像ゴーレムに尋ねてみた。


 すると少し考えた後に答えが返ってきた。

「・・・ドラゴンニ追イカケラレタ時デスネ。アレハ頑張リマシタ」


「えっ、ドラゴンですか。この辺りでドラゴンが出現したなんて聞いたことないですが、一体何処でそんなことに・・・」


 驚きと興味で続けて質問をすると、すぐにゴゴが答えた。


「イヤ、冗談デス。ソウイエバ騎士団ニ追ワレタ時モアリマシタ」


ええっ!と声をあげてしまうソーンだったが、それも冗談と返されそうな気がしたので、あまり聞いては良くない話かもしれないとそっとしておくことにした。



___そうしているうちに、目的地まであと少しという所まで到着したので、頑張ってくれたゴゴさんに感謝を伝えて一旦休憩することにした。


 街道から少し開けた広場に隣接している場所で馬車を停めて、日陰にそれぞれ腰をおろした。


 ソーンは停めてある馬車の後部にある梯子から荷台にあがって、荷物を下ろそうとすると、荷物に被せた幌の下で隠れるようにして何かを漁っている茶色い毛玉を見つけた。


「クーマ、何してるの?リンゴなら下で皆で食べようよ」


 しまったという顔をして振り返ったクーマが答える。


「そ、そうじゃの。・・・じゃあ仕方なく・・・」


 名残惜しそうに、両手と尻尾にリンゴを掴んでおりていくが、あたりに甘い果実の香りが漂っているので、すでに口の中でかみ砕かれているのもあるみたいだ。


「まだまだいっぱいあるから、そんなに出し惜しみしなくてもいいのに・・・って、あぁ!もう数個しかない。クーマ食べ過ぎだよ」


 いつから食べてたんだろうと疑問に思いつつ、目的の物を見つけて梯子を降りる。

 リンゴをもったふさふさした尻尾を左右にふりながら、ミリアとアルフに追いかけられるクーマを横目に準備をはじめた。



___休憩場所で、沸かしたお湯をさきほど荷物からとってきた茶葉がはいった筒に注ぐ。少し置いてからそれを手頃な器に分けて注ぐ。


「動く球根リビングプラント茶を煎れてみました。疲労回復にいいそうですよ」


 それぞれに手渡しながら説明するが、アルフは熱心に息を吹きかけて冷まそうとしているので、今度から煮沸した湯を冷まして水出しするのもありかなと思った。


一通り配り終えたので、手頃な石の上に腰掛けると、ミリアが話かけてきた。


「このお茶なかなか良いわね。今度、あたしのポーションの材料と混ぜてみようかな。だいぶ育ってるみたいだしね」


 それを聞いてソーンは村をでて途中でみかけた、畑になっていた場所を思い出す。


___柵で囲って栽培範囲を決めているようで、溢れた部分と育った葉と球根を定期的に刈り取るようだ。

 球根ができている場所には旗が立てられていて大きさを確認しながら手入れをしているが、時々予想してなかったところで育った球根が暴れるのが今後の課題だって、気になって尋ねたときに教えてくれた。


「たしかに、あれに襲われると思うとなかなか大変だ・・・」

 棘のある蔦のことを思い出して、嫌な汗がでてくる。


 手入れをしている人と、見回りでついている人も結構な装備していたので、なんていうか農作業というよりは、モンスターを見張っているような雰囲気だった。



___一息ついて英気を養ったところで、再び出発した。


 直ぐ近くまで来ていたので、目的地に到着するのに時間は掛からなかったが。以前とは少し違っていたので驚いた。



「僕たちで、通れるようにするので、ちょっと待ってください」

ゴゴさんに手前で停まってもらって、ソーン達が馬車から降りた。


 街道には、以前には無かった木でつくられた柵がいくつか設置されていて、道の脇に立てられた看板にはこう書かれている。

『この先、魔物の巣有り』


 柵を街道からずらして馬車が通れる隙間を作ったところで、

 ふと前方を見たアイリが呟いた。


「あれから、なかなか立派になってるじゃない」


 街道の先には、森がせり出して道にせまっているところがあったが、そこには以前よりも更に連なるように白いベールに覆われていて、高い木の上まで辺りが真っ白な霧にでも包まれているようだ。


 それをはじめてみるマイは素直な言葉で答えた。

「・・・これはちょっと想像以上ね。直ぐに引き返すよう助言したいわ」


 あらためて、その光景をみたソーンが、振り絞るように声をだした。


「大丈夫です。・・・この前と違って皆がいます。きっと巧くいきますよ」


 すると、白黒の耳をピンと立てたアルフがソーンの側に来て答えた。

「そうだゾ、ボクが来たからソーンは安心だゾ」


 つづけてアイリが剣の柄に手を添えながら答える。

「そうね。まあ、なんとかなるんじゃない。こういうの大分慣れてきたわ」


 あわててソーンの側にやってきたミリアも答える。

「ふーん。なかなか凄そうね。ちょっとだけドキドキしてきたわ」

 そう言いながら、ソーンの外套の袖をちょっと掴んでひっぱっているが、ソーンは気づいていないようだ。



___馬車と並んでソーン達は進んでいく、

幾重にも細い糸で編まれた白いベールが風になびいて視界を真っ白に染める。


 あと数十歩進めばベールに触れるというところで、立ち止まるように、

ソーンが合図をした。


いつも読んでくださりありがとうございます。続きも読んで頂けると嬉しいです。

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