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第66話 旅の宿

 この村一番の宿といえば、村人が皆真っ先に思い浮かべるのが、

情報ギルドのすぐ隣にある旅の宿『動く石像亭』だろう。


 ソーン達はギルド長に連れられて、目的の宿にて評判の日当たりの良いテラスへやってきた。

 店内へとつづくスロープで繋がっているテラスには、

白いテーブルと椅子がいくつか並んでいる。朝早くであれば、宿に泊まっている客と、ここがお気に入りの村の常連さん達で賑わっている朝食の風景が見られるところだ。

 

 そんな風景をイメージしながら、庭の片隅へと移動すると、いつもは気にかけていなかったが、丸い大きな車輪がついた小さな建物があることに気づいたソーンがギルド長に話しかける。


「これがそうだったんですか」

 近くにくるとより鮮明にその姿を確認できた。


 後ろから歩いて来ていたギルド長が側に来て答えた。

「そうですね。まだまだ現役の馬車ですよこれは」


 そういうと、ギルド長は車輪に手をかけて動きを確認する。

よくみると馬車の下には台座のようなものがおかれていて、地面から少し車輪は浮いているようだ。

 

「ヨウコソ、ソーンサン。マスターヨリ話ハ聞イテオリマス」


 少し甲高い声で挨拶しながら、宿の中からこちらに向かってきてくれたのは、宿の名前の由来でもある、店主のゴーレムである。

 実際は石像ではなくて、全身ミスリル製の煌めくボディに3本の腕と、4本の足、魔力で浮かんでいると聞いたことのある丸い玉の上にそれらがのって動いているのだから一度見たら宣伝効果は抜群だ。


 店主自らめぐるましく手足を動かして料理をしながら、宿に来た客への案内をしたりと2~3人分の働きをしているので、人手が無くて忙しい宿でもなんとか運営できているようだ。


 その逞しく輝くボディに見とれながら、ソーンが答える。

「ゴゴさん、こんにちわ。お邪魔してます。この馬車をお借りできるんですか」


 するとそれに答えるように、ゴゴのミスリルボディが器用にくるりと回転したかと思うと、腕をのばして車輪の間にある扉を開いて中へと案内してくれた。


 地面からは高さあったが、梯子のような部分に足をかけると案外、すんなりと馬車の中に入れたソーンが興奮して声をあげる。


「わぁ、思ったより広いんですね。こっちが御者台に繋がってるんでしょうか、アルフ前に回ってみてよ」


 そう声をかけると分厚い皮の幕のようなものをかき分けて、顔をだしたソーンと外から回り込んだアルフの目があってお互いに笑顔で微笑んだ。


 しばらく様子を見ていたギルド長が御者台に座っているソーンとアルフに話しかけた。

「気に入ってくれたかな。宿のテラスの一部として使用していた部分は旅仕様に戻して整備したから、荷物を積み込めばいつでも準備完了の状態ですよ」


 それにはソーンが答えた。

「ありがとうございますギルド長。でも馬車を引く馬はどうするんでしょうか。馬を借りたり世話をするのは、難しいと思うんですが・・・」


 少し困った顔でソーンは隣に座っているアルフを見ると同じく、少しテンションダウンしたように黒い両耳を伏せている。


 するとギルド長が少し目を細めながら指を立てて答えた。


「それには、とてもいい案があるんですよ。のちほど詳しく説明しますね。それと当日はゴゴが馬車を途中まで引いていってくれますからそこは安心してください」


それを聞いて、おおっ、という声をだしたソーンとアルフに、

3本の腕をあげて力こぶをイメージしてみせるゴゴ。


 その頼もしい姿に感動している若者達を、そっと優しい顔でギルド長が見つめていた。

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