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第60話 光の蛇

___そろそろ効果を発揮するかと思ったが、

なぜか毛玉クーマの周りを紫色の光の蛇が、いつまでも、

ぐるぐると蠢いているのをみて、マイが叫んだ。


「・・・何?抵抗しているの?悪足掻きは無駄よ。それはね、効果を発動するまで、ずっとまとわりつくわ」


 そう言いながらも、気になるのか、マイは詠唱のために離れていた距離をつめる。


 すると、光の蛇にまとわり憑かれたことで、縮こまって、ふるふると震えているかのように見えた茶色の毛玉クーマがビクッと一瞬動いた。


 突然、マイの目の前に黒い大きな影が出現した。


「貴方!それはっ・・・その黒い羽は何?」


 自らの体よりも巨大な黒く艶やかな蝙蝠のような皮膜のある羽を背中に生やした毛玉が、赤いつぶらな瞳を輝かせながら、答えた。

「これはな、悪い魔法使いを追いかけるためじゃよ」


 そう答えると、先ほどまで、ふさふさした茶色であった毛玉が、徐々にごわごわとした堅い焦げ茶色の毛玉に変貌して、今度は、ズルッという音と共に、黒く濡れたような鱗をもった長い尻尾が数本こぼれ落ちるように地面に垂れて、ビチビチと床で跳ねた。


 その間も光の蛇はまだ毛玉クーマの周りを、ゆっくりとぐるぐると回っているが、気のせいか、すこしづつ離れた位置を大回りしているように見える。


「何、何なの・・・それは、その尻尾は何?貴方は何なの・・・」


 目の前で、徐々に変貌していく毛玉の塊に、マイは慌てて、数歩後ろへ下がろうとした時、足下に何かが触れた。


 焦げ茶色の毛玉の口のあたりがすぅーっと開いて、赤い口腔から、ちろちろと真っ赤な舌が姿をみせる。

「長い尻尾で、悪い魔法使いを捕まえるためじゃよ、お嬢さん」


 足下の影から突然生まれたかのようにして、マイの足に絡みついた黒い尻尾にバランスを崩して、あっと言う声と共に後ろへ倒れ込む。


「ど、どうして・・・こんな・・・」


 ズルズルという音と共に、更に黒い蛇のような尻尾が影から踊りでてきて、両足に巻き付き、そのまま胴体へと這い上がってくる。


 あわせて毛玉の周りをゆっくりと大きく旋回していた光の蛇も更に速度を弱めて、今にも止まりそうだ。


 すると、赤い口から舌をちらりと見せながら、毛玉が答えた。

「ふむ、やはりこれは、ワシには無理があったようじゃのぉ」


 その声に反応したのか、床に転がるマイと空中に浮かぶ毛玉クーマの間で光の蛇がピタリと動きを止めた。


 ぐぐっと光の蛇が向きを変えて、驚愕の表情でその様子を見つめる、マイに鎌首をもたげた。


 咄嗟に、起こした上半身から両手をのばして、マイが魔術を唱える。


ラーサーセンタン


 煌びやかな光と共に目の前に現れる魔力の盾に、紫色の光の蛇が食らいつく


___ミシミシという音をたてて、蛇の頭が盾から突き抜けようとしている。


「ふむ、この魔術からは逃げられないそうじゃよ」


 パキンッという音と同時に突き抜けた、紫色の光の蛇が、苦虫を噛み潰したような顔のマイに直撃した。




___静まりかえった部屋の中で、ギャッギャッという鳴き声だけが、天井に壁に床に反響して歓喜の歌のように響きわたった。


いつも読んでくださりありがとうございます。続きも読んで頂けると嬉しいです。

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