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第5話 市場にて

 ぐっすりと寝た成果なのかどうか、翌朝起きて、みた景色は少し落ち着いてきているようだ、いつもの平和な村は普段通りの活気に満ちていた。


 朝早くに昨日の残りとありもので簡単に朝食をすませたソーンは、家からクーマを連れて出かけると、まずは教会へと向かった。

 

 昨日は声を荒げていたミリアも一晩過ぎると、溜飲も下がったのか、受け取った代価分のいくつかの硬貨と、新しい箱を渡してくれた。

 それと野イチゴが美味しかったので、今度は自分も一緒に採りに行きたいから、声をかけて欲しいとのことだ。

 ちなみに今朝はお互いに反目することなく、新しく渡された箱をソーンが確認している間に、興味深そうにミリアから尻尾をなでたり、クーマの手をつついたりしている。それを安心したように、笑顔で見ながらソーンがクーマを手招きしながら提案した。

 「ちょっと、この後、市場に寄ってみようか、食料を買い出しておきたいし、クーマが食べたい物の種類とかも知っておきたいし」

 「ふむふむ、良い心がけじゃ、主よ」

 尻尾をつかんだミリアの頭の上で、ふんふんと、首をたてにふりながらクーマが答えた。


____教会を出ると、朝の爽やかな風をうけ灰色の外套の裾がぱたぱたとなびく、広場をはさんで向かい側の市場がある通路へ向かって歩き出すソーンの後を、クーマがふよふよと浮かんでついていく姿を、少し名残おしそうにミリアが見送った。


 村の中心にある広場から南につづく通路の両脇にいつくかの商店が並んでいる、ここが村ではいわゆる市場とよばれている場所で、食料品、生活雑貨から、装飾品のお店などが色々と立ち並び、大勢の人々でいつも賑わっている。市場の通りを抜けていくとそのまま大街道へ出られるので、村の玄関口にもなっていることから、人通りが一番多い場所でもある。

 

 まずは、いきつけの食料品を売っている店に顔をだすと、気になっていたことが少し判明した。


 どうやら、村周辺の至る所に、例の空間の裂け目ができていたようだ、一番近いところでは、広場の西側にもあったらしい。それ自体は、とくに問題があるようなものではなかったようだが、その影響なのかどうなのか、いつも定期的に商品を運んでいる港町からの商隊が昨日からまったく来ていないそうだ。

 そのため、店で売り出せる商品に、ちょっと影響がでているらしく、言われてみると品揃えが少ない気がする。そのうち情報も入ってくるだろうということで、それでも詳しく知りたいならギルドによってみてはとのことだ。


 裂け目の件については、のちのち聞いてみることにして、本件の買い出しも大事ということで、保存のききそうな乾物をいくつかと、これは食べられそうとのことでクーマが指さした、果実をいくつか購入した。

 もちろん、店主もクーマを見てすぐに、あれやこれやと質問してきた。テイムしたビーストと答えると、これがそうかと、珍しいと、辺境の村らしい素直な感想が漏れていた。

 ついでに、クーマが果物を指さしながら、もっと買わないのかと尋ねているのをみて、テイムしたビーストはしゃべるんだなと、とくに比較対象もないので、そういうものかと、少し驚いたあと自ら納得していた。


____そのまま、ぐるっと市場を見渡しながら、昼食としてパンに野菜と干した肉をはさんだようなものを購入したので、クーマはさきほど購入した果物をいくつか選んで、それ以外を家に置いてから、今日の分の採集のため、昨日と同じく森へと向かった。

 もちろん、目的地はあの塔のある森の奥だ。クーマはあんまり乗り気じゃないようで、別の日にすればとしきりに言ってくる。

 

 しかし、ソーンとしても今日聞いたところの、広場の裂け目の件もあるし、状況確認がしたいと説得して、遠目にみるだけという条件で、しぶしぶ納得した形だ。



____森をしばらく歩いたところで、そろそろ、ぐにゃっとした木が見えて来た。丁度それを越えたところで、さあ、いざ!と、心をざわつかせながら、木を横目にくぐっていくと、、、。とくに代わり映えのない森が続いていた。

「あれ?この前はここらで、突然森を抜けて砂の大地が見えたのに、、、」

 そこには、空間の裂け目らしいものもなく周辺を探してみたが、見慣れた森の木があるぐらいだった。ついでに、昨日、もともと目指していた倒木も発見して、キノコも採集できた。

 塔が無いことを、大変だとクーマに伝えてみたが、とくに慌てる様子もなく、まあいいんじゃないかと答えてくるのでソーンも、なんだか自分だけ慌てて損したような気分になってきた。

「うん、よく分からないことは、きっとまだ分からないことなんだろう」


 ということで、あとでギルドによって聞いてみるとして、もう数カ所の採集場所によってから、昼飯にすることにした。


 その日は、裂け目がなかったこと以外は、順調で、予定していた採集も豊作だった。新しくミリアから受け取った箱が閉まらなくなるかというくらいだ。


____その後は、村に帰還して教会によってから自宅へと、いつもの日常のルーチンが開始され、後でいいかと思っていたら、裂け目の件もギルドに確認しないままに、平穏な日々が数日過ぎていた。


続きを読んでいただきありがとうございます。また読んでいただけると嬉しいです。

追記:誤字脱字修正致しました。

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