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第56話 遺跡調査

「ちょっと慣れてきたかも、今回はなんとかなりそうよ」


 少しふらつきながらも渡し船から降りてきた、アイリは、ゆっくりとソーン達に続けて歩いていた。


「大丈夫か?肩貸すゾ、アイリ」

 心配なのか声をかけるアルフに、首を横にふるアイリ。


「あたし達は護衛なんだから、そんなんじゃ駄目だからね。アルフはソーンとマイさんに付いてて。少ししたら大丈夫だから」


 アイリの状態を横目にハラハラしながら見ていた、ソーンだったが、その言葉で今は役目を果たそうと心に決めた。


 そのやりとりを見ていた、マイが逆に困った顔をしている。

「そこまで無理しなくてもいいんだけど、船酔いとか、しんどいでしょ。ちょっと休んでなさいよ。別にここらは平和だから」


 そう告げると、声をかける前にマイは遺跡の麓にある出店方面に走っていった。すると、遠目にも、串焼きとか色々買って食べているのが見えた。意外とドライな性格らしい。

 

「えーと・・・きっと、気をつかってくれてるんですよ。何か飲み物でも買ってきますね。アイリさんはそこの休憩所で安静にしててくださいね」


 つづけてアルフも答える。

「そうだゾ、ボクらの出番は夜の護衛だからナ。今は体を休めておくのも大事だゾ」

 なんだか居たたまれない雰囲気を感じて、ソーンとアルフが飲み物を買いに走っていった。


 それを寂しそうに見送りながらアイリが呟いた。

「うーん。なんだろう、心が折れそうよ。ねえクーマちゃん。あなたは、一緒にいてくれる?」


 そういいながらふさふさの尻尾をしっかりとつかんで離さない女騎士アイリに、毛玉の主は、ふむといいながら頭の上にのって、一緒に待つことにした。



___再び訪れた遺跡は、以前と変わらず光を反射して真っ白な景色を作り出していた。

 あたり一帯に敷き詰められた白い石が、幻想的な雰囲気を醸し出している。


 中央に向かってすり鉢状になっている階段の一番底の部分が広場となっていて、中心地にマイとソーン達が出会った祭壇がおかれている。


 その景色を眩しそうにながめたあと、今回の遺跡調査へ向けた設営がマイの指示の元はじまった。


 遺跡の周辺部分にある巨大な柱か何かの土台のひとつの側に荷物を下ろして拠点とした。


 全部で6つある土台の前と祭壇には、胸ぐらいの高さがある石でできた灯籠がいくつかある。


 その石灯籠に、マイとソーン達で手分けして持ってきた木の束のようなものを設置してく。

ソーンが何なんですかとマイに聞くと、どうやら夜の明かりと魔物除けのための松明のような役割をするもののようだ。独特の強い香りがするが、すぐ慣れるそうだ。


 それらを設置したあと、夕食の支度をしていると早くも日が落ちてきた。街から運んだ食材を使っての鍋料理を皆で囲んだ後に、調査の予定と護衛の流れの意識会わせをした。


 マイは遺跡の変化を朝まで逐一記録するそうだ、その間、輪番でソーン達が辺りを見張る。といっても魔物除けも仕掛けているので、何かあった際に、他のメンバーを起こす役割といったところだ。

 暗くなる前に遺跡から島中を観察してみたがとくに変わったことは無さそうというか、ほとんど誰もいないのではと思うくらい静かになった。


 あらかじめ設置しておいた石灯籠の魔物除けに火をつける。たしかに独特な刺激のある強い香りがする。それに薄く赤い煙のようなものが、もくもくと広がっていく。


 準備が整ったところで、マイから改めて依頼内容をソーン達に伝える。

「じゃあ、私は調査を続けるから、護衛をお願いね。遺跡の他に何もない島だけど、念のために、ひとりで遺跡を離れたりはしないように、その場を離れるときは私に伝えてからにしてください」


 最後に真剣な顔でマイが念をおしてくる。

「とくに、この魔物除けの効果範囲からはでないように、必ずこの煙がある場所で居てくださいね、上空から渡りの魔物が狙っている場合もあるので、おびき寄せることになると困るのでお願いね」


 了解しました気をつけますとソーンが伝えると。

 安心したように、マイが微笑んだ。

「ありがとう、ソーン君が来てくれて良かったわ。今日はよろしくね」


 そう言うと、早速、マイは調査の続きのためか祭壇に向けて階段をゆっくりと降りていく。

 ソーンは、その姿を見送りながら、ちょっとだけ急なめまいがしたが、旅の疲れが早くもでたのかと、頭を振って気を引き締めなおした。


 まずは、アルフが見張りの番だ、ちょっと煙が苦手なのか鼻のところを押さえている。早く交代してあげないといけないかもとソーンは心配しながら予定の場所に座り込んだ。




___ゆらゆらと漂う赤い煙が暗闇に溶けていく、

それは霞のように視界にとけて、ぼんやりと辺りをただよう。


 静かな遺跡の夜に染み込んでいくようだった。


いつも読んでくださりありがとうございます。続きも読んで頂けると嬉しいです。

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