第51話 思惑
溢れることなく、
時折、波ができ、頭の先から足先へと流れていく
ゆらゆらと、体ごとゆられながら、
永遠に続く時間、そうしていた気がする。
遠くで、かすかに呼ぶ声がする。
伸ばしたその手を、そっとつかんで。
___声が聞こえる。
「おーい、起きろ、ソーン」
手をひっぱられながら強引に起こされる。
ベッドの上で上半身だけ、起こされた状態で、
首をがくがくさせながら、銀色の髪の少年がうっすらと目を開ける。
「ふぇぇ、ど、どうしたの。アルフ」
ぐいぐいと手をひっぱられて、何がなんだか。
「ソーン、起きろ。そんで昨日の事件を思い出セ」
まだ、寝起きでぼーっとしているソーンの手を、アルフが強くひっぱり、ぐっと抱きついてきた。
友人の黒い艶やかな髪が頬にかかる。
驚いて目をぱちくりしている、ソーンの髪をくしゃくしゃに撫でながら、ベッドの傍らにアイリが座りこみ、話かける。
「身体はなんともないの?ソーン君あれからずっと寝てたから、もしかして気づいてない?」
ふぅーと息を吐きながら、金色の髪が肩から、スルリと流れ落ちるまま、のぞき込むように、ソーンの顔をみた、アイリは確信した。
「アルフ、やっぱりソーン君何も気づかなかったみたいよ」
それを受けて、今度はアルフが目を大きくして、叫んだ。
「えぇー、じゃあずっと気づかずに寝てたの、ボクとかアイリも頑張ったってのに。もう、じゃあ、今の状況は誰も知らないってこと?」
すると、ソーンの足下の布団がもぞもぞと動いて、茶色のもふもふした尻尾がとびだしてきた。
尻尾の先になにやら手紙のようなものがのっている。
それを受け取った、ソーンが不思議そうにクーマに訪ねた。
「どうしたのクーマこれは?・・・ユシアさんからの手紙だ」
受け取った手紙をくるりと返してみると署名がしてあった。
なにやら丁寧に封もされている。
更にもぞもぞと布団から抜け出してきて、いつもの定位置である、ソーンの頭の上にのっかったところで、クーマが話だした。
「散歩帰りで宿に戻ったら、ユシアの使者でカインと名乗る者が、これを渡してくれと。あと、宿に来たときソーンが連れていかれそうだったので、大声をだしたら、悪者は逃げていったそうじゃよ」
ふんふんと聞いていた、ソーンが驚いたような顔で答える。
「そうなんだ、って、僕、誘拐されそうだったの?」
アルフとアイリが顔を見合わせながら大きくうなずいた。
つづけて、クーマが説明する。
「ソーンは布でぐるぐる巻きじゃったのぉ、そんで、裏口に倒れている、アルフをカインとやらと一緒に運んで、部屋で同じく倒れておるアイリをベッドに運んだんじゃが、これが重くて、重くて・・・」
そう言い終わらないうちに、クーマを捕まえようとしたアイリの手をかいくぐりながら、ソーンを離れて天井付近へふよふよと浮いていく。
「ちょっと、クーマ。降りてきなさい。なんでいつも・・・」
頬を赤くしたアイリが飛び跳ねるようにして、ふさふさの尻尾をつかもうとするが、ひょいっと、うまくかわしている。
「まあ、手紙じゃが、招待状らしいぞ、気軽にきてくれだそうじゃ」
それだけ伝えると、窓を開けて、すばやく外へ逃げていくクーマを、拗ねたような顔で見送るアイリを横目に、ソーンが手紙の封をきる。
すると、手紙が一瞬青く光って、鳥のような姿をした光がソーンの手元から飛んでいった。
内容は、先日のお礼も兼ねて、この街にある館へ本日招待したいとのことだ、昼食を準備しておくから忘れずにきてね。と書いてある。もちろん、手紙を読んだことは魔法で確認したから昼食が無駄にならないように絶対に来てねとも書いてあった。
有無を言わさない強引さにユシアさんらしいやと思いながら、こちらも白金貨の件で、会って話がしたかったので、丁度良かった。
___色々と不明なところもあったが、昼の招待のこともあり、各自の予定をすりあわせた結果、まずは情報ギルドへ行き、昨日の結果を確認して、アイリの相談したい品があるお店に寄った後、館へ行くことにした。
昨日のこともあったので、もういっそのこと全員で行動しようということになったので、ちょっと慌ただしい予定になってしまったのは仕方ないところだろう。
じゃあ、ということで、早速、友人達が上着を脱いで着替えをはじめたので、お湯をもらってきますとソーンが慌てて部屋を飛び出していった。
『ユシアさんから招待か、運良くカインさんに助けてもらわなかったら、大変なことになってたみたいだし、お礼言わないといけないね』
寝起きから目覚めて、やっと頭がまわるようになってきたソーンが、色々と思いをめぐらしながら廊下を駆けていった。
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