第39話 探し物
トコトコ歩いた先で、生えている草を食む子羊を横目に、金色の髪の少年が複雑そうな表情で話し出した。
「私もよく分からないんだが、アドリー曰く、ここで穴を掘ると、探し物が見つかるらしくて、アドリーが朝からずっと掘り続けてるんだ、掘った穴をそのままにしておくと危ないかと思って私が埋めてたんだが・・・こんなことになるとは」
ふーっと、息を吐くユシアの心情を察してかソーン達はそっと頷いた。
みると、白いローブを着たアドリーが今度は、上を向いている。
なんだろうと皆が同じく上を向いた隙に、アドリーが黒いブーツを地面に打ちつけた思うと、反動で飛び跳ねるように、一瞬にして、アイリの目の前に移動した。
「えっ、何?どうしたのアドリー君」
咄嗟の事に頭が追いつかないアイリは、目の前に急に現れた少年に話しかけるのが精一杯だった。
すると、白い手をすっとのばしてきて、アイリが抱っこしている、もふもふした茶色の毛玉を指さしてアドリーが答えた。
「この毛玉ちょっと見せテ、うーン。ココカ?」
アドリーが手をのばしたのは、クーマが頭にのせている帽子のあたりで、ちょうどそれに触れようかというところで、手の動きが止まった。
「うン?ナンダ、尻尾が巻き付いてきたゾ。じゃあコッチダ」
アドリーがそう言うと、止まった手と逆の手を動かそうとするが、今度は逆の手も動きを止めた。
「うェ?コッチもカ、邪魔ダナこの尻尾ハ」
よく見ると白いローブから伸びたアドリーの真っ白い両方の手にそれぞれ茶色い尻尾が巻き付いている。もう少しで帽子に触れることができそうな直前で、止められたアドリーの両手が小さく小刻みに震えた。
「ぐっ、ナンダ、邪魔するナヨ、毛玉メ」
ギリギリと歯ぎしりをするようにして、アドリーが力をいれて、ふりほどこうとするが、しっかりと巻き付いた尻尾がそれをさせまいとより一層絡みつく。
突然目の前で開始された力比べに、アイリは困惑の表情で、抱えたもふもふの毛玉と白いローブのアドリーを交互にみる。
埒があかないとみたのか、ずっと黙っていた毛玉が口を開いた。
「なんじゃ、小僧。まずはお主が手を引っ込めるの筋じゃろうが」
すると、噛みつくようにアドリーが吠えた。
「イヤダ、お前、ソレ一人占めズルイ、アドリーにもよこセ」
その喧噪をみかねて、ユシアが叫ぶ。
「またか・・・君は我慢を知らないのか?手を降ろすんだアドリー」
ソーンも所どころ土がついたままの灰色の外套を揺らしながらあわてて駆け寄ってきた。
「どうしたの?喧嘩しちゃだめだよ。あれっ!クーマ、それって」
ソーンが異変に気づいて指さしながら訊ねた。
「クーマ、尻尾が2本あるよ。どうなってるの」
アドリーの両手を止めている、それぞれの尻尾を辿るとクーマから生えているのが分かるが、それが2本あることに気づいたソーンが驚きの声をあげた。
「うむ、なんじゃ。緊急事態で増えたんじゃ・・・」
しどろもどろでクーマが答えていると、今度はユシアが叫んだ。
「アドリー!手を降ろすんだ・・・次は無いぞ、コレを見ろ」
真剣な声に、一同がハッとして、声の主を見る。
アドリーからは少し離れたところで、立ち止まったユシアの青いベストからのびる白いシャツに包まれた右手が肩からすっと水平に構えられている。
右手には、先ほどまで腰に吊していた金属製の物体が握られている。その金属製の筒の先の部分が誰も居ないところを向いているが、物体の中ほどに添えられた人差し指が何かトリガーのようなものに掛かっていることから、次の動作が実行されるとマズイと、見ている皆の頭の中で想定された。
真っ先に反応したのは、当人のアドリーだった。
「うェ、ユシア待テ!それは勿体無いゾ・・・でもコレも欲しいゾ」
明らかに悩んでいる様子をみせる白いローブの少年を可哀想と思ったのか、ソーンが尻尾に釘付けだった視線をもどして、クーマに訪ねる。
「尻尾も気になるけど・・・アドリー君が欲しがってるのって何?クーマが沢山持ってるの?」
「そうだゾ、この毛玉が沢山もってるのがオカシイ、アドリーに渡すのがイイ!・・・うン、ユシア分かったから睨むナヨ」
興味が移ってきたのに気づいてアドリーが声をあげるが、すぐにユシアが睨むように見てきたので、諦めたように手を降ろした。
それにあわせるようにして、ユシアも構えていた右手を降ろす。
先ほどまでの元気を失い、すごくしょんぼりとした表情で下を向いたアドリーを見かねて、ソーンが続けて訪ねる。
「ねぇ、クーマ、いくつかあるんだったら、アドリー君に分けてあげてもいいんじゃないかな?ミナちゃんにもあげてたし」
それを聞いてむっとしたようにクーマが答える。
「むう、ミナにあげた奴とは違うぞ、その小僧が欲しがってるのは、コレじゃろう」
帽子にふさふさした茶色い手を突っ込んで、何かを取りだしたクーマが、下を向いているアドリーに無造作に放り投げる。
「そうダ、コレだゾ!アドリー探してタ・・・お前イイ毛玉ダナ」
受け取った黒紫色の石を確認して、手のひらを返すように答えたアドリーが、早速、口の中に放り込んだ。
それをみて、ソーンがあわてたように灰色の外套をバタバタさせながら叫ぶ。
「えっ!それ石だよ、アドリー君、ぺってして」
あわてるソーンを楽しそうに見返してからアドリーが、ニヤリと悪い顔をした。とたんに凄いガリッゴリッという音がして、みるからに石を噛み砕いているのが分かる。
「えぇー!もしかして食べてるの!」
目を見開いたソーンが叫ぶ。
すると、何度か噛み砕いてから飲み込んで満足そうな顔をした後、アドリーが答えた。
「コレは食べると旨いやつだゾ、そこの毛玉もそうダロ?」
そうなの?と気が抜けたような顔でソーンがクーマを見つめると、どことなく目線をそらすようにして毛玉が答えた。
「それで十分じゃろ、お主みたいな礼儀知らずには、もうやらんからの」
ふよふよと浮きながら、離れていくもふもふの毛玉をじーっと見送りながら、何か聞くのを忘れているような気がしてならないソーンだった。
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