第28話 お守り
無事にというと、判断に迷うところだが、捜索の旅も終盤を迎えていた。もう少し進むと、商人隊が最後に立ち寄った村に、辿りつくようだ。
あまりこのあたりの地理に詳しくないロックウェルが、揺れる馬車の中で向かい側の席に座る旅慣れた様子をみせる初老の男に、いくつかある質問の中から、まずはじめにこう訊ねた。
「えーと、この子たちが鞄を漁るのを止めたいんですが、なんて言ったら止めてくれますかね」
それを聞いた、深い緑の外套を着た初老の男は、眉間に皺をよせて、少し困った顔をして、こう答えた。
「・・・うむ、無理だな、大人しく、明け渡すしかなかろう」
なんとなく、想像していた答えが返ってきたので、がっくりと肩を落としながらロックウェルは、ダメもとで、さっきから熱心に鞄の中身を探している2人の青い髪の子たちに声をかけた。
「えーと、ローナさん、ニーナさん、さっきから何をお探しで」
すると、青い短髪の目元が白い仮面で隠れているので表情がよく見えないが、弾んでいる声からして、楽しそうにローナと呼ばれた男の子が反応して答えた。
「あの甘い奴、なんか小袋にはいってたはず」
続けて、青いショートの髪が隠れるくらい鞄の中に顔をつっこんで、中身を探していたニーナと呼ばれた、同じく目元に白い仮面をつけた女の子が呟くように答えた。
「・・・ロックの癖に、どこに隠した?もしかして一人で残り全部食べたのか」
それだったら、こっちのポケットにと答えるが早いか、飛びついてきた2人に一瞬で、奪い去られる小袋を、ロックウェルがあっけにとられていると、初老の男が苦笑いをしながら話しかけてきた。
「・・・すまぬな、ロックウェル君。2人とも、甘いものがこんなに好きとは知らなくてな、お礼と言ってはなんだが、これを・・・」
そう言いながら、一枚の細長い紙を手渡された。
見慣れない文字が書き連ねられた紙を受け取りながら、眼鏡の青年は、初老の男に不思議そうに訊ねた。
「ヨンフさんこれは、どういったものなんですか」
不意な展開から、何度か助けてもらったお礼にと、ロックウェルが故郷の村から持ってきていたお菓子のいくつかを子供達に渡すと、思いの外、好評で、おかわりにつぐ、おかわりで最後の小袋をさきほど渡してしまったほどだった。ただ、食べている間はとてもご機嫌で、3人の名前も教えてくれたので、今はお互いに名前で呼び合っている。
思い当たる文字がないか、紙を裏返してみたりしていると、ヨンフさんが説明してくれた。
「・・・うむ、細かい説明は、長くなるので・・・私が君に逃げろと言う代わりにその御札が燃えて知らせてくれるというものになるかな」
まあ、いわゆるお守りというものだよ、たいした役には立たんかもしれんがねと言うことだった。
「そんな、大事にしますね。ヨンフさんのアドバイスがなければ、この旅の途中に何度もあの世に旅立ってますから」
受け取った御札をそっと大事に上着の内ポケットにしまい込みながら、ロックウェルは質問をつづけた。
「探してる、商人隊の途中で分かれたメンバーですが、何度もモンスターの襲撃があったみたいですし、普通に考えても、残念ながら既に亡くなっていると思うんですが、何でそこまで探しているんですかね」
旅の途中で、他の探索メンバーの動きをみても、意外とあっさりと次の場所に移動していることから亡くなった人達を弔うことが目的という風でも無いようだ、大穴を見つけたときも痕跡が無いのを確認するとすぐに移動しだしたし、目的の場所があるのだろうか。
「・・・うむ、私も気になっていたが、本格的な探索は最後の村に寄ってからだろう、依頼者から探索のために、頼まれていることもあるのでな・・・」
そう言って、村に着いたらおいおい分かるだろうという結論になったところで、小袋の中身を食べ尽くした2人の子供達が再び鞄の中身を漁りだしたのをみて、どう説得しようかと悩みがつきないロックウェルだった。
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