第21話 リザルト
「ふぅ、だいたいは刈り終えたかな。アルフそっちはどう?」
ソーンがしゃがんだ姿勢から立ち上がり、ぐっと腰をのばしながら、少し先で同じ作業をしている獣人の幼なじみに声をかけた。
「こっちも丁度終わったところだぞ、使えそうなのも運んだし、残りは、自然に還るんじゃないか」
そうアルフが答えて、立ち上がり、服についた砂を払っている。
馬車の方からアイリさんが呼んでいる声がするので、あっちの積み込み作業も終わったのだろうか。そんなことを考えているとアルフが近くまで来たので、一緒に馬車まで移動した。移動の合間にアルフが気にしていたことをずねてきた。
「そういえば、クーマは何してるんだ、馬車が止まってからずっと見てないぞ」
たぶん聞かれると思っていた質問に少し困った顔でソーンが答える。
「えーと、棘に毛がひっかかると面倒だからって、馬車の上で、皆の活躍を温かく見守っているっていってたよ」
それを聞いたアルフが批判の声をあげる。
「なんだそれ、困ったやつだな。クーマよりは、ボクのほうが100倍役に立つな。そろそろソーンもテイムしたくなってきただろ」
本気か冗談かよくわからない顔でアルフがソーンを見つめてきたので、テイムのことには触れずに、ソーンは素直に答えてみた。
「今日のアルフは大活躍だよ、でもクーマも僕たちが危なくなったら、助けに来てくれるよ。心配しながら見てたと思うよきっと」
そうかぁと首を傾げるアルフをなだめていると、ほどなくして、馬車についたので、それぞれの状況を伝えた。
「積み込みまで手伝ってもらってすまないね。報酬は上乗せしておくぞ、しかし、これがそうだとは思わなかったな」
ロブルドさんが言いながら、既に積み込んだ、茨の本体の塊に鉈をいれて一部を切り取った。
「うちの地元でもたまに出回ってくる動く球根の巨大な奴だな、まあ球根部分は鍋にでもいれて食べると美味しいから、これは食べてもらって、茨部分は薬になるらしいからついでに持って帰って商売するさ」
そう言って切り取った部分をソーンに手渡してくれた。
「ありがとうございます。僕たちも、旅の途中ですし、ロブルドさんが有効に使ってくれるなら丁度いいと思います。でも、これって食べれるんですね。言われてみると美味しそうな気が、、、あれっ?何だろう」
受け取った部分が少しごつごつするなと思って、よく見てみると、何やら黒紫色をした石のようなものが刺さっている、いや生えているのか。ソーンが、慎重に黒紫色の石をつかんで、ぐっと力をいれると、親指ほどのサイズの石が球根からはずれた。
「えーと、何だろう、綺麗な色をしてるけど」取れた石をロブルドさんに渡そうとしたが、構わないよと、既に十分収穫もあったので、それはソーン達の取り分だと返された。
じっと石をみていると、ようやく、馬車の幌の屋根からクーマが現れて、ふよふよと尻尾をゆらしてソーンの肩にのっかってきた。
「ふむ、終わったみたいじゃの、旅の再開か。ん、何じゃ?」
めずらしく声をあげて、クーマが興味を示してソーンの手の中にある石を覗きこんだ。不思議そうにソーンがたずねる。
「どうしたの、コレに興味があるの?」
その様子をみて、片づけをしていたアイリとアルフも近くにやってきた。ソーンが手をのばして、クーマによく見えるように顔に近づけると、突然クーマが、口を開けて、パクッと石をくわえた。あわててソーンが叫ぶ。
「あっ、食べ物じゃないよ、クーマ!ぺってして」
あわてるソーンを横目に、クーマが口から石をだし指ではさんで、ソーンにたずねた。
「ふむ、これをもらっても構わんかの、良い石じゃ」
食べるんじゃないんだと安心したソーンがアイリとアルフを見回すと、とくに興味は無いようなのでクーマにあげることにした。
「いいけど、間違って食べないようにね。石好きなの?」
ソーンが注意を伝える最中に、黒紫色の石をクーマが口元によせて、赤い舌でちろちろと舐めている。なんだか嬉しそうなクーマをみて、アルフがソーンに詰め寄ってきた。
「むう、石はいいけど、なんだかクーマが羨ましいぞ。ボクも何か欲しいな」
困ったソーンがとりあえずアルフの頭を撫でた。
「あっ、ごまかそうとしてるな、ソーン。、、、でも、いいなコレ」
そんな2人?匹の姿をみたアイリの、じぃーとソーンを見つめる視線に気づいたソーンがあわてて答えた。
「えーと、どうされましたアイリさん」
何でもないよと告げて、少し不機嫌そうに離れていくアイリの姿に困惑するソーンだったが、とりえず晩ご飯は鍋になることが確定したみたいだ。
いつも読んで頂きありがとうございます。続きも読んで頂けると嬉しいです。




