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第19話 旅のはじまり

出発はいつも新しい気持ちから生まれる。

今回はどうだろう。

準備は十分だろうか。

しっかり依頼をこなせるだろうか。

皆無事に帰ってこれるだろうか。


不安半分、新しい世界への期待半分。いや期待が更にもう半分上乗せで、

結局、冒険が楽しみなんだ。


 昨日からそんなことを考えてそわそわと朝を迎えたソーンが

待ち合わせ場所の広場にたどりついた時にだした結論がこれだった。


 アイリさんと、クーマ、今回はアルフも参加だ。ミリアは教会での日々の役割があるからと、代わりにいつくかの薬瓶をもたせてくれた。ソーンの背中には、ギルド長が貸してくれた松明?棍棒?のようなものを担いでいる。

 アイリも同じく借りたブレストプレートとプレートメイルを部分的に組み合わせて、比較的動きやすい形で装備している。今は丁度、出発前の装備確認をしているところだ。

「あとは、小型盾スモールシールドがあれば良かったのだけど、こうやってあらためて見ると、今までは鎧頼みの大雑把なスタイルだったのかなって思っちゃうな」

 それにあわせて、近くに来たクーマが答える。

「うむ、やたらと重いしの、もう少し軽くなるように訓練もつづけて欲しいもんじゃ」

 それを聞いたアイリがまたクーマを追いかけ回しだした。

「だからそれはプレートメイルが重いからだっていったよね、ちゃんと訓練はつづけてますー!」

 少し遅れてきたアルフが、到着そうそうにアイリをみて言った。

「そうか、みた感じ、肉がついて重そうだぞ。胸と腰のあたりがとくに重そうだ、それだと速く動けないんじゃないか」

 アルフが自分の格好と見比べながら、自然とそう答えた。ちなみにアルフは布でできた白い胴着の上から皮製の黒いベストのような鎧をきているが、やはり背中部分は大きく空いている。腰から下はスカートのようなものを履いているが足の両側に大きくスリットがはいっていて、動き易そうだ、黒い前垂れのような皮鎧には、ソーンが見たことのない6本足の獣の姿が刺繍されている。背中にはギルド長に借りてきた槍を背負っていた。

 なかなかつかまらないクーマを追いかけるのをあきらめたのか、ちょっと立ち止まったアイリは、ようやく先ほどのアルフの言葉を思い出し、なんだか少し声を荒げて答える。

「そういうところは、訓練でもどうしようもないんです。剣を振るうには、力もいるんだから騎士だと皆こんなもんなんです」

 それを聞いたソーンがこれまた自然と答えた。

「そうなんですか、はじめてあった時は、今と比べると少し痩せられてたので、今がベストな状態なんですね」

 予期していなかった、ソーンからの指摘に、アイリは少し涙目になりながら、ぶつぶつと反論する。

「うぅ、ソーン君ひどい。いつも作ってくれてる、ご飯をしっかり食べてたらこうなるよね、もしかして確信犯?」

 ついには、じと目になってソーンを睨むアイリの気配を察してかどうかなのか、ソーンが宿の方向を指さして声をあげた。

「えーと。あっ!見て下さい依頼人さんの馬車も来たみたいですよ」



_____広場に到着した荷馬車から、今回の依頼人がおりてきたので、

紹介を兼ねての挨拶と今日の予定を確認した。


 荷馬車は南方にある隣町から来たそうだ、隣町といっても、馬車で数日かかるくらい遠い場所だが、この村近くで、棘があるところを無理矢理通ってきたそうだ。帰りはそれを見越しての護衛依頼ということだ。

 荷馬車から現れた旅慣れた感じの老夫婦の主人が握手を求めてきたので、皆に押し出される形でソーンが代表して握手した。続けて、主人が話だした。

「隣町で商いをしているロブルドだ。あまり良い報酬をだせなくて申し訳ないが、まずは依頼を受けてくれてありがとう。見ての通りのんびりと商売をしているんだが、今回のようなことがあると年のせいか不安でね。助かるよ」

 それを受けて、失礼がないか言葉を選びながらソーンが答える。

「えーと、こちらこそです。僕たちも村の周りで起こっていることは、心配ですし、何か村のためになることができたらとは思ってたので、あと、途中まで馬車にのせてもらえるので、こちらこそ助かってます」

 しゃべり終わったあと、きょろきょろとアイリとアルフの姿をみて、何か足りてないか確認する姿をみて主人がにこやかに答えた。

「いい心がけだ。君のような若者がいると村の将来は安心だな。ところでソーン君といったかな、君がそちらのチームのリーダーかい」

 それを聞いて、きょとんとした顔をみせるソーンを横目に、アルフが、にこにこしながら答える。

「そうだよ、チームのリーダーはソーンだよ。ボクが頑張った時は、頭をヨシヨシしてくれるんだよ」

 続けてアイリも答える。

「そうね。ピンチになると助けにきてくれる、頼れるリーダーね」

 クーマはというと、ソーンの首にふさふさした尻尾を巻き付けながら、頭の上にのっかってふんふんと首を縦にふって肯定している。

 ひとりソーンだけが、事態を良く飲み込めず、きょろきょろしている。

「仲の良いチームだ、じゃあリーダーさんよろしく頼むよ。まずは、棘を発見したところまで向かおうかね」

 お互い軽くお辞儀をしたところで、歩きだした。村をでるまでは、馬車から降りて馬をひいたが、ちょうど村の出口付近で、それぞれ決めていた場所に乗り込んだ。


 ゆっくりと馬車が動きだす。さっきからずっと、そわそわしたままのソーンを乗せて。そのソーンは頭の上のクーマに話しかける。

「えーと、やっぱり、リーダーって、このチームだったらアイリさんがなるんじゃないのかな。僕が一番、ふさわしく無いような気がするんだけど、ねぇ、クーマどう思う?」

 話しながらクーマを頭の上からおろして、目の前にかかげて、ふさふさした腹のあたりを両手で挟みながら、不安そうにソーンがたずねる。

 すると少し眠そうにしているクーマが片目をつぶりながら、答えた。

「ふぁぁ、そういうのは自然と決まるもんじゃないかの、皆がいいならそれでいいじゃろ。しかし、凛々しくリーダーっぽい指示をだすソーンとかミリアが見たら驚きそうじゃのぉ」

 最後の方は、むにゃむにゃと眠そうに、ぐったりとふさふさした毛皮を体ごとあずけてくるクーマを、ゆさゆさと揺らして起こそうとしながら、ソーンがつづけて話しかける。

「えー、それってやっぱり似合わないってことじゃないのかな。クーマ、ねぇ、起きて。もう、あぁーやっぱり冒険って不安がいっぱいだよ」

 ぎゅっと、クーマを抱きしめながら、ソーンの頭の中では、不安が渦巻いていたが、ふと、ミリアの顔が浮かんだ。

 こんなときに頼りになるいつも厳しい幼なじみが一緒に来てくれてたら安心なんだけどと、何故かその時は、そう強く思って納得した。


 そんなソーンの不安と期待に関係なく、馬車はのどかな道をゆっくりと進んでいく。


いつも読んで頂きありがとうございます。旅のはじまりですが、ここで終わりではなくて、まだまだ続く予定ですので、引き続き読ん頂けると嬉しいです。

追記:誤字脱字の修正を致しました。

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