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第17話 再びギルド長

「ソーン君が困っているようだから、それぐらいで勘弁してやってくれないかなアルフ君」


 さっきまで、椅子の上で、ぐったりとしていたとは思えないぐらいに、しっかりとした足取りで、ゆっくりとこちらに向かってきたギルド長が遠くから声をかけた。すると、名残惜しそうな形で、アルフはソーンから離れて、元の椅子のところに座ったが、黒い耳は伏せられて、遠慮がちに、ちらちらとソーンを見ている。

 その様子が気になってソーンがアルフに話しかけた。

「どうしたの、アルフ?さっきのテイムの件は、今度ゆっくり話をするので、ダメかな」  

 それを聞いたアルフが、小さくふるふると首を振ったあと、力なくつぶやいた。さっきまでぶんぶんと振られていた白と黒の尻尾も垂れている。

「今度、話しするのでいいよ、でもね、ソーンが困ってるんだったら、もういいんだ、、、」

 急に元気が無くなった理由に、気づいたソーンがあわてて答えた。

「誤解だよ。困っては無いよ、ちょっと驚いただけ。テイムのことも良く知らなかったし、今後ゆっくり時間があるときにアルフに色々教えてほしいな」

 それを聞いて安心したのか、アルフが大きくうなづいて、ソーンに小声で答えるのにあわせて白黒の尻尾が、ぶんぶんと大きく振られている。

「じゃあ、次のテイムはボクの番だからね。約束だぞ、ミリアとかに頼まれても、順番を守ってね」

「分かった、約束するよ。でもミリアとはテイムできないと思うなぁ、ときどきはビーストっぽいけど」

 こそこそと話をしてる間に元気になってきた、2人を、じーっと見ているミリアと、複雑そうな表情でその様子をみて、どう声をかけるか悩んでいるアイリを横目に、近づいてきたギルド長がつづけて話しだした。


「護衛任務の報酬の件が今日の本題のようだね。それについては、少し困ったことになっていてね。アルフ君、説明をお願いできるかな」


 それを受けて、すっと立ち上がった、アルフが制服のポケットから、小さい枝のようなものを取り出した、よく見ると枝の先端には黒い石がはめ込まれている。その枝を、皆が座っているテーブルの石の天板に、軽く数回打ちつけると、黒い石の天板が淡く光ったかと思うと、文字がうっすらと現れた。その動きにあわせてアルフが話しだした。


「ギルド長がボクが居ないときに勝手に契約を発効した件だったよね。内容が気になるから、グループを分けてたのに。よりによってソーンに契約させるとか、今度やったらボク許さないからね」

 キッっとギルド長を睨みつけて、グルルルと軽いうなり声と合間見える牙の噛み合わせをのぞかせるアルフをみて、テイムの件は慎重に進めようと思い直すソーンと、いつもの事であまり気にしていないのか、肩をすくめて、うなずくギルド長の反応にイライラしながらも、アルフはテーブルに映し出された文字を再度確認した後に説明をつづけた。

「この依頼がね、正式に発効も処理したはずなのに、ギルド本部の情報と一致しないんだ、簡単に言うと、無いことになっているんだ。発効前なら取り消しとかもあるんだろうけど、既に任務が遂行されてるんだったら、取り消しとかありえないし。それで護衛依頼が分かる範囲でどういった結果になったか、ソーン教えてくれるかな」

 そういえば、まだ詳細な結果をギルドに報告するのを忘れていたことを思い出して、ソーンは当時の状況を説明した。ただ、ソーン達が危なくなったところはうまく省略して、アルフがあまり心配しないように説明したが、案の定、アルフが声を荒げた。

「馬車が、アイリさんを囮にして、モンスターの巣を突破したって?助けにはいったソーンも気絶して、クーマがなんとか2人を助けられてよかったけど。ちょっとあんまりな依頼じゃないか。手数料が多いからって受領するんじゃなかった、ごめんねソーン」

 申し訳なさそうに、黒い耳を伏せて、頭を下げるアルフに、ぶんぶんと首をふってソーンがあわてて答えた。

「えーっと、違うよ、ちょっと無理がある依頼だってことは、気づいてたんだ、ただ報酬に目がくらんで、、、自業自得だよ。アルフは何も悪くないんだ」


 あわせて、アイリも自分の不甲斐なさを訴えるために、今度はアイリの視点で状況を説明したが、草刈りの途中で、ソーンが棘に絡まれていた件について話しになったときにアルフが割り込んできた。

「草刈り中に、棘に絡まれてって、それはちょっと、どうかな。ソーンってそんなに?ミリアどう思う」

「うーん、ソーンらしいけど、護衛任務で、その状況ってちょっとね」

 急に哀れむような目でみられだしたソーンをフォローしようとアイリが蜘蛛の件を話しだしたところで、今度はミリアが割り込んできた。

「助けにきたところは、格好いいけど、そのあと親玉の大蜘蛛の巣に案内しちゃうところがソーンっぽいよね。すぐ気絶するし。本当に助かったのが奇跡だわ」

 結論として、ソーンのヘタレっぷりが強調されたような形になってしまい、アイリが、ごめんねとソーンに目配せするが、少しがっくりと肩をおとしたソーンが、事実ですからと折れそうな心をなんとかつないでいた。


____ひと通り、説明を聞いたところでギルド長を話しだした。


「何にせよ、依頼は遂行され、馬車も目的地へ向かえたようですから、報酬は確実に請求できるはずです。ここには依頼書の原文もありますし、一度、ギルド本部に直接話をつける必要がありそうですね」

 そう言うと、懐から丸めた巻物スクロールを取り出して見せて、話をつづける。

「このところの空間の歪みの件と、急に増えだしたモンスターの件、色々と情報収集したいところでもありますし、本部の街へこの機会に行ってみてはどうかと考えていたところですが、どうですか?」

 すっとソーンをみつめるギルド長に、急に視線を振られたソーンが不思議そうな顔で聞き返す。

「どうでしょうか?えーっと、なんでしょうか」


 すると、ギルド長は、懐から更にもう1つの巻物スクロールを取り出して開いてみせた。

「ソーン君にお勧めの新しい、馬車の護衛任務です。これのついでに本部の街に行くというので、どうかなと、、、」

 ギルド長の話を終える間もなく、アルフが動いた。

 ギルド長の斜め前にいた、アルフが鋭く右足を踏み出すと同時に、右手を前方に突き出し、巻物でふさがった両手の下をかいくぐる形で、ギルド長の腹部を狙う。あわや炸裂という瞬間にギルド長は、すっと腰をひねってかわし、アルフの右手が空を切る。それを予見していたのが、前のめりの勢いを使って、アルフの左足が地を蹴ってギルド長のひねった腰をなぎ払う形で襲いかかる。それを難なく後ろに下がってかわしたギルド長が、何事もなかったかのように、にこにこと笑顔でさきほどの続きを話す。

「それで、今回は、本部に用事もあるので、アルフ君も同行してもらう予定です」

 一連の攻撃をあっさり避けられたアルフは、次は得意の鉤爪でと、普段はひっこめている爪をだして光らせていたところで、急に呼ばれる形となって、あわてて爪を戻して振り返る。なぜかソーンが呆然として動かないので、この隙にソーンの隣まで戻って、ソーンの腕と自分の腕を組んでから答えた。

「ソーンと一緒にでかけてもいいの?その依頼ってどんなのだっけ、危ないやつかな?ふふ、ソーンはボクが守ってやるからな」


 先ほどの殺気はどこへやったのか、依頼を進める前提でアルフが詳しい内容を話すようにうながしてきた。

いつも読んで頂きありがとうございます。続きも読んで頂けると嬉しいです。

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