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第15話 置き薬

 アイリが市場へ出かけるのを見送ってから、しばらくの間、もくもくと掃除を続けていたソーンが、玄関の入り口のカウンター上に置いてあるものに気づいたのは、ちょうど掃除が終わる頃だった。

「ミリアが置いていってくれたのかな」

 そう思ったのは、置かれていたものが、見知ったいくつかの色とりどりな瓶で、丁度使って在庫もなくなってきていたところだった。

 それらを手にとりながら、瓶の裏側をみると、十字に葉っぱがついた模様が刻まれており、思っていた通りの刻印がはいっていた。

 カチャカチャと瓶を鳴らしていると、窓際で日向ぼっこをしてふかふかになった毛皮をゆらしてこっちへやってきたクーマが興味深そうにのぞき込んできたので、ひとつづつ知っているところを説明してみた。

「これは、傷の回復用のやつだね、解毒薬はこれかな。ん、これは初めてみるやつだ。新しく作った?どんな効果なんだろう、さっきはこれを届けに来てくれたのかな、後でお礼を言わないとね」

 大事そうに、ひとつひとつ瓶を確認しながら、戸棚へしまってから、ソーンも支度をして市場へ買い出しに出かけることにした。

 ちなみに、必要なものが何かを忘れそうなので、クーマにも覚えてもらう意味で、口に出して確認していたところ、思わぬ注文もはいってきた。

 「とりあえず、食べ物が、アイリさんもいるから多めにと、食器とかは大丈夫かな、テーブルクロスが足りないからそれと、あと何がいるかな」

 ふんふんと聞いていたクーマが、さっそく注文してきた。

 「あれじゃ、赤いの、リンゴが足りておらんぞ、圧倒的リンゴ不足じゃ、それと、この前、風呂を沸かすのに使っておる油がないっていっておったじゃろ」

 それを聞いたソーンは、クーマの主食問題はなんとかするとして、後からでてきた油については、少し考えものだった。

 「リンゴは探してあったら買おうか、油か、、、あの黒い油はちょっと高価だから、今回は無理かもね」

 手持ちの資金が厳しい旨を、悲しそうな顔でクーマに伝えると、これまたしょんぼりした感じにしっぽを垂らして、ふよふよと漂ったあと、ソーンの頭の上に乗っかったクーマが、急にひらめいたように聞いてきた。

 「ほう、資金不足か、じゃあはやくギルドで報酬をもらわんとな、あれがあれば万事解決じゃろ」

 それがあったねと、ぱっと顔を明るくしたソーンが、クーマにうなずきながら、お互い忘れないうちに市場へ向かうことにした。


______市場につくと、一緒に買い物をして少しテンションがあがったアイリさん達を見つけたので合流することにした。それとソーンは忘れない内に、ミリアに薬の瓶のお礼を伝えることにした。

 「こっちだよミリア。あと、さっきは薬を届けに来てくれたんだね、ありがとう。あと見慣れない瓶があったけどあれって新しいのかな?」

 会ってそうそう名前を呼んでくるソーンをじーっと見たあと、ミリアは軽くうなづいて答えた。

 「思ったより早かったわね。そうそう、薬を届けにいったんだっけ」

 そう言いながら、ソーンを手招きしてミリアが近くにくるように呼んでいる。なんだろうと思いながら、隣まできたソーンにミリアが、そっと近づいて耳元で囁いた。

 「見慣れない瓶って、桃色のやつね。あれはちょっと特別なものだから、、、ソーン専用に作ったやつだから他の人にあげちゃだめだからね」

 今までに聞いたことないような話で不思議そうにソーンが聞き返す。

 「僕専用ってどうして?何の効果がある薬?」

 少し困った顔をした後、ミリアが小声でぼそぼそと答えた。

 「調合が特殊なの、回復効果を最大限高めた薬だから、本当に命が危ないってときに使ってね。そんなにいっぱい作れないから、、、貴方がいつも危なっかしくて、わざわざ作ったんだから大事に使ってよね」

 それを聞いたソーンが真剣な顔で答えた。

 「そうなんだ、ミリアは凄いね。分かった、大事に使うよ。この前の依頼みたいに危険なときには持っていくようにするよ、ありがとう」

 感謝の気持ちを込めて、ミリアに律儀にお辞儀をするソーンを、すこし離れたところから、見守っていたアイリがそろそろ話が済んだかなと、タイミングを見計らっていたのか話しかけてきた。

 

 「えーと、いいかな?予定通りギルドに寄ろうと思うんだけど」

それには皆、合意で、このままギルドに向かうことになった。


 ギルドに向かう道中、隣を歩いているミリアがいろいろと先日の護衛依頼の内容についてソーンに質問してきた。一応、アイリに先に聞いていたのか、ソーンのたどたどしい説明でも理解しているようだが、1つだけ、納得がいかないことがあるようだ。

 「そう、まあ、たまには変わった依頼を受けてみたいのも分かるけど、それが危なそうだったら、事前にあたしにも教えてほしかったなって、分かってるソーン?」

 いつの間にか、説教のようになってきて、ずっと、ハイ、ハイと、うなずきっぱなしのソーンを見かねて、アイリが話に割り込んできた。

 「まあ、冒険っていうのかな、そういうものに興味がある年頃とかあるじゃない?私もソーン君に助けてもらったし、急な依頼でなかなかタイミングがあわないときもあったりするしさ」

 すると今度は、ヒートアップしてきたミリアの矛先がアイリに向かうのは予想していたのかどうなのか。

 「アイリさんもです!本当に無茶して。クーマに助けられるとか、助かったのは奇跡ですよ。反省してください」

 ついには2人して、怒られだしたので、そーっと離れて様子をうかがおうとしたクーマの尻尾をがっしりとミリアが掴んだところで、丁度よく、ギルドに到着した。

いつも読んでいただきましてありがとうございます。続きも読んでいただけると嬉しいです。

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