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第105話 入口から

 コツン、コツンと歩く度に靴底が階段を踏みしめる固い音があたりに響く


真っ暗な階段を降りていく人影の後ろ側から声が聞こえた。


「ネェ、ソーンは大丈夫なの?ボク夜目が利く方なのにココって、何だかずっと真っ暗だゾ」


灰色の外套の裾を離すまいと掴んだアルフが不安そうに呟くと、意外そうに声が返ってくる。


「えーと、確かに真っ暗だけど、足元はしっかりとした階段だし、いつもそんなに歩かなくても出口に辿り着くから、もう少しの辛抱だよ」


 そう優しく答えると、姿は見えないが、黒い艶やかな耳をすっかり倒してソーンの外套を頼りにしているアルフに、ソーンが手を伸ばした。


「手を繋いで行こうか、わわわっ。そんなに強く引いたら転んじゃうよアルフ」


そんなやりとりをしながらも、階段を着々と下っていくと、遂に出口らしき灯りが見えてきた。



「やっと、出口が見えてきたゾ。どこに繋がって…まあ予想通りなら遺跡の中だろうけケド…」


 階段が終わり、遠くにある松明の灯りなのか薄っすらと開けた暗闇の中の出口を、今度はソーンを引きずるようにして早足で進むアルフが、声を詰まらせた。



「どうしたのアルフ、…んッ。これは凄いね」



 出口の先には想像通りに遺跡の内部なのか大きく開けた石造りの部屋が広がっていた。


驚いたのは、その広間に整然と並べられていた物の数だ。



「なんだろうね。凄くいっぱい並んでいるけど、コレって…」



 結構な広さの中に、金属の光沢が灯りを反射するようにして、何百体もの全身鎧フルプレートアーマーが手に斧槍ハルバードやら大剣やらを構えて、等間隔で並んでいる。


良く見ると、広間はまだ奥にも別の部屋があるようで、そちらにも黒い陰った鎧のようなものが見えるので、同じような部屋がいくつもあるようだ。


「遺跡は修繕作業中って聞いたけど、ここらは別に壊れてはなさそうだね。入口の方に何かあったのかな」


そう呑気に呟きながら、何気ない仕草で、近くの鎧の手甲にソーンが手を伸ばした。


「あッ、ダメだソーン、こういうのには触っちゃ!」


 声を荒げて止めようとしたが、えっ?ていう顔をしたソーンの頭上で、けたたましい警戒音が鳴り響いた。




___遺跡前の兵士達のテント付近が急に慌ただしくなってきたのを、少し離れた場所で観察していたマイが、困ったように息を吐く。


「きっと、何か関係があるんでしょうね。あの険悪そうな雰囲気の中、訊ねていくのも悪手でしょうし、流石に2人を置いて帰ったとなるとアイリが怒りそうだしなぁ、どうしようかなぁ」

 

 そうブツブツと愚痴りながらも、冷静に柱を陰に遺跡から距離をとっていく。


丁度、ソーン達がゆらめく影の入り口に消えていったあたりを横切った際に、突然声がした。


「わッ!そんなに急ぐと危ないよアルフ」


 マイが慌てて声がした方を向くと、何やら黒い空間の裂け目から転がるように、ソーンとアルフが飛び出してきた。


「ヨシッ、急いでここを離れるゾ、マイも大体分かるだろうが詳しくは後でダ」


 やっぱりという顔をしたマイがうなづくと、再び消えていくゆらめく入口を不思議そうに眺めているソーンに、それも後でと合図をして皆で走り出した。



___遺跡の柱を死角にして、慎重に進んだあと、元来た道に出てからは、しばらく全力で走ったために、肩で息をしながら座り込んだ。


「それなりに離れたところまでこれたし、一旦休憩しましょう。馬車まで戻るにはまだまだ距離があるし」


 流石に鍛えているのかまだまだ疲れを見せない先頭を走っていたアルフがその訴えを聞いて、道から少しだけ森にはいって、隠れられそうな空き地を見つけて誘導する。


それなりのサイズの岩が立ち並ぶ裏側に回ったところで、腰をおとした。


「さて、詳しい話ってやつをそろそろ聞いてもいいかしら」


 マイが息を整えながらそう訊ねると、少しだけ息を切らしたソーンが腰の水筒から一口飲んだあと話はじめた。




「なるほど、遺跡の中は、そんなことになっているのね。それで鎧の奴ってもしかして、以前に野営地で襲ってきたのと同じだったりするの?」


「どうかな、見た目がまったく同じって感じじゃなかったから、全身鎧ってところは似てるけどね」


「なんだか、厄介そうな話ね、情報ギルドのお勧めも鵜呑みには出来ないってことかしらね。その内、捜索の範囲が広がってくるとしたら追いつかれるのも時間の問題か、どう切り抜けるか案とかあるかしら」


「入口の兵士ぐらいだったら、ぶっ倒してやるゾ、失礼なヤツラだったから遠慮なくダ」


「それは最終手段にしよう。ちょっと原因もあることだし指名手配とかされても…でも捕まって色々聞かれるのも面倒だね」



 そんな話をしていると、遠くから馬車をひく数匹の馬が近づいてくる音がしてきた。


「なんダ、もう来たのカ、でも方向が逆からだナ。一旦隠れるゾ、こっちダ」


 降ろしていた荷物を背負って、なるべく目立たないように岩陰に隠れる。


そうこうしている内に、木々の隙間から結構大き目の馬車が近づいてくるのが遠目に見える。


そろそろ道を挟んで横切っていくかなと思ったところで馬車が急停止した。



「んっ!どうしタ、休憩するような場所じゃないゾ…」


 岩陰に隠れているために道の方からもこちらからも何も見えないが、馬から誰かが降りてくる音が聞こえる。



 すると、仰々しく腰の剣を引き抜くような金属音があたりに響くと同時に声が届いた。


「そこに隠れている賊はやましいことが無ければ姿を見せるといい、ただし武器を捨ててゆっくりとだ」


いつも読んでくださりありがとうございます。続きも読んでいただけると嬉しいです。


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