拉致られた日
巴笑今日は朝からだるくて仕方がない。寝起きはいい方ではないけど今日はいつもに増してだるい。
「貧血じゃないかな?」
お母さんはそう言ったが貧血になったことが無いもんで私にはわからない。
「じゃ、いってきまーす。」
けだるさを持ちながらいつもの通学路をいつものように通って行く。
「おはよう〜。」
「あ、巴笑ちゃんおはよう!」
やはり真琴はかわいい。朝からこんなお花が咲いたような笑顔を見れるなんて幸せだ。
「昨日のあれ何だったんだろうね〜。」
「あれ?あ、あの試飲みたいなやつ?」
「そうそう!私あんなの発売されても苦くて絶対買わないな。」
「そうだった?甘く感じたんだけどなあ。」
「そうなの?みんな苦いって言ってたのに。巴笑ちゃん味覚おかしくなったのかな〜?」
今日もかましてくるなあ。かわいい顔してたまに痛い事を言ってくる。そこがまたかわいいのが癪だ。
「あれ、巴笑ちゃん今日はなんか顔色悪いよ?大丈夫なの?」
「別に大丈夫だよ。」
そう応えようとしたのもつかの間、急に全身に眠気とともに寒気がおよんだ。
─バタン
あれ、どうしたものか。体が動かない。声も出ない。そばで真琴が「巴笑ちゃん!?大丈夫!?」と慌てているのしか聞こえない。
体が重い。プールの後のような疲労感が体を襲う。
「おはようございます。高橋巴笑さん。目が覚めてよかったです。」
重い瞼を開けると見た事ある人物が平然と立っていた。
「だ、誰ですか!?」
「ははっ。そんな怖い顔をしないでくださいよ。申し遅れました。昨日訪問さしていただいたものです。佐々木明弘と言います。以後お見知りおきを。」
そう言って差し出されたのは名刺だった。そこには『世界防衛同盟教育課Ⅱ類』と書かれていた。
なんだこのマンガで出てきそうな同盟は。
「あなたたちは何なの。ってかここは何処!」
そう言いながら咄嗟に立ち上がると体に違和感を覚えた。
昨日は高く感じた佐々木とやらの身長が低い。彼のつむじが見えているほどだ。喉も風邪でもひいたときのようなジリジリとした痛みがある。
佐々木は巴笑を値踏みするような目で凝視し、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。
「うんうん。いいな〜その目!最高やわ。君のような気い強い子には期待がもてるな。」
な、な、なんなんだ。関西弁?ただ思うこと。それはこいつと絡むと面倒臭い。絶対面倒臭いと言うことだけだ。
「君には地球を守ってもらうために此処へ連れてきたんや。」
「世界を守る…?私が?はい?」
「細かい事は後や。そこに鏡あるからいっぺん自分の姿見てみ。」
こいつはさっきから人の言うことを聞く気がないのか。よくわからないが彼の言う通り鏡の前に立ってみる。
「だ、誰だ…!!」
そこには見た事ある綺麗な顔。絵に描いたような整った体。そう、ものすごくかっこいい男が鏡の中で立っていた。
「巴笑ちゃん大丈夫か?とりあえずこっちおいで。ちゃんと教えたるから。な?」
もう理由がわからない。彼は考える間も与えず「こっちこっち!」と手を引いていった。