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破棄聖鎧使いと音調使い  作者: 家具付
奥様(仮)と旦那様
24/28

9

そんな状況が一段落したあたりで、オーガストが立ち上がり、険しい顔で教員たちを見た。

「一体全体、どういう経緯で、入ったばかりの子供たちを戦場に? これは大変な問題だ」

「そ、それは」

教員たちが言い淀む。明らかに何かを隠す調子であり、チィは大変気に食わなかった。

それゆえに、子供たちを見て告げる。

「帰るよ」

「えっ!?」

彼女の大事な大事な子供たちに向けられた言葉は、他の人間にとってぎょっとする一言だったようだ。

仰天した顔で、信じられない相手を見る表情で、チィは見つめられる事になった。

その視線をものともせずに、彼女は言った。

「何に問題があるんだ? 弱い者いじめの人殺しの集団が?」

「な、何という事を言うんだ!」

教師の一人が激昂して叫ぶ。

チィはその教師に言葉を投げつけた。

「目の前の事実をよく見ればいい。こんな幼い子供たち。何にも知らないのに、血まみれの殺し合いの世界に送り込もうとする。自分たちは安全な場所でぬくぬくして。あんたがたに反論するだけのものがどこにある?」

それだけを言い、チィはオーガストを見た。

「お前もお前だ、約束を破ったんだ。それ相応の償いをしてもらおうか」

彼女の殺しかねない視線だが、オーガストは重々しく頷く。

その重々しさに、周囲はまた唖然とした。白の騎士団副団長が、小娘一人を重く重く見ているのだから。

「それに関しては、まずチィの話を聞かなければいけないだろう。何を求めているのか、何を欲するのか、どういう償いをすれば、納得してくれるのか」

「話が早い」

不敵に笑った彼女に、彼が笑う。

「それだけの信頼を、失う事になってしまったということが、つらいな」

「情に訴えないでくれないか? 一度は信用した相手だから、また信じたくなる」

彼女はそう言い、今度こそ子供たちを連れて学園を出た。

「帰っていいの?」

「いいのさ」

「ボスと一緒でいいの?」

「向こうがひどい事をしたんだから、連れ帰って何がいけないのか知りたいな」

子供たちは、そこでようやく笑った。

その足で屋敷に戻れば、青ざめた顔の召使たちが待っていた。

彼等も、子供たちの事を案じていたようだ。

「ああ、よかった、戦場に連れていかれなくって」

膝をつき、ほっと息を吐きだすような女性までいるため、チィは頷いておいた。

「間一髪ってところだった。旦那様が出てきたしな」

「では、旦那様は間に合ったのですね」

「良かった……」

「良くないさ、これからまたもめるか何かするだろうし」

「ボス、どういう見方をしたんだ?」

「オードリー、お前だったら逃がすか? 自分を圧倒的優位にする相手を、みすみす?」

「まあ……逃がす馬鹿はいないな」

「そういうわけさ。えらい人たちにこの子たちの重要性がばれている。うっかりしてれば連れいてかれる。それもこっちの意思なんて無関係に。そして望まない生き方を強いられるだろうな」

そこまで予測して、彼女は苦笑いをした。

「まったく、旦那様の奥様になっていて、これだけよかったのかもしれないな。旦那様を盾にできる」

それは彼女の望まないものだったし、心苦しい物だったかもしれない。

それでも彼女は、夫をある程度盾にすることを、決めていた。

「殺されるところだったんだから、ちょっとは守ってもらわないと、面目が丸つぶれだろうな、旦那様」

「ボス、信じてるのか信じてないのか、分からない言い方だな」

「気質は信じてるさ。それと肩書から発生する権力は。でもそれだけで守り切ってもらえると信じていないだけで」



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