お別れはアッサリと
『今から移転出来る世界は、剣と魔法のある世界だ
いきなりの事で適応できるかはお前にかかっているが…
こちらのミスもあるし、いくらか特典はつけておこう』
「お…ぉぅ…って何も確認しないのかよ!」
『すまないが、送れる世界は1つしかないのだ
能力は向こうに行ってみないと分からぬしな
だから、弱くても何とかなるように特典はつけておくよ』
「うわぁ…弱かったらどうしよう…」
『それは、運次第だな…それでは送るぞ』
「ちょ、ちょっと待った!」
『ん?何だ?』
「あのさ、元の世界の僕はどういう扱いになるのさ?」
『あぁ…釣り上げてしまった以上、死亡扱いだな』
「あのさ…それって、変えられない?」
『と、言うと?』
「僕の存在を始めから無かった事に出来ない?」
『出来なくはないが、何故だ?』
普通は自分の存在が消えてしまうのは、嫌な事だ
どんな形であれ、覚えていて欲しいと思うのが人である
「僕自身は元気で生きてるのに、家族が…友達が泣いて悲しむのは嫌なんだ
僕は元気に違う世界で生きるんだ…だから、誰にも泣いて欲しくない」
『なるほど…分かった
本来なら、そんな事はしないが…今回はこちらのミスだからな』
「んじゃあ、早く送って」
『なんだ、もう聞く事は無いのか?』
「聞くよりも、行ってやってみた方が早いからな」
『なるほど、それは一理ある
では、俺との通話機能を付けておこう…困った時に呼べ』
「うん、わかったー」
『では、送るぞ…
向こうについたら、まずステータスと唱えて、自分のステータスを確認するんだ
まずは自分の事を知っておかないとダメだからな』
「OK」
祐樹は、そう言い残すと、白い世界から消え去った
そして、後に残った自称神も、程なくして姿を消し
真っ白い空間は、誰もいない、いつもの静けさを取り戻した