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死神 Danse de la faucille  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第八幕  乱気流 ~Le Prince du monde~
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反撃


 「 いいですか? 」


 スマホの男は眼下の女性の背中側から手を脇に下に通して、若い男に目配せする。


「 …まあ、いいか。」


 何かを躊躇していたが、大きくため息をつくと、 

 若い男は女性と正対して馬鹿でかい胸の方から遠慮しながら抱きついた。


「 確り、捕まってくれよ! 」

 真っ赤な顔で叫ぶ男に女の大蛇の様に長い手が絡みつく。


 支える物が無くなって、一瞬女の体が下がったが、

 二人とも必死になって足を踏ん張って堪える。


「 せ~の~ 」


 大きな掛け声とともに女性を引き揚げにかかった。


 男たちと女性の体を比べると、女性の体は普通と比べてかなり大きいようだ…

 当然体重もそれなりに重いだろう。

 二人の男は真っ赤な顔で力いっぱい引き揚げているようだ。


 女性は、申し訳ないのと、

 前後を男に抱きつかれて恥ずかしいのか顔をそむけている。

 しかし、抱きつかれている若い男の方は、それどころではない。

 凶暴に大きな胸に顔が埋まっているし、

 長い腕で縋りつかれているから、呼吸さえもしずらそうに見えた。


 私の目から見ると…男たちはありったけの力で

 その場で踏ん張っているように見える。

 よく考えて欲しい…いくら男二人だからと言って

 大きな女性を引き揚げるのは至難の業だ。

 よこしまな感情など起こるはずも無いように感じられた。


 必死に奮戦すること実に30秒…


「 ぎぎぎ… 」「くくく… 」

 と声を振り絞り、瞬発力の働く限界に近い時間が過ぎようとしていた時。


 スポン!って音が聞こえそうな勢いで、

 女性のお尻が、嵌った穴から抜け上がった。

 その勢いで、女性の全身が若い男に覆いかぶさるようなり、

 若い男が仰向けになったところに

 大きなお尻がどんと乗っかって男の口から軽い悲鳴が飛び出した。

 その体制でもあまりの巨体に男たちが驚いていると、


「 た…助かりました。

  あのまま嵌ったままかと思って泣きたくなっていたところでしたわ。

  あ…すいません、あのぉ…お二人ともそろそろ離してもらえません? 」


 真っ赤な顔でその身を捩り揺らす女性…

 その言葉を女性がしゃべり出す頃、先ほどの穴は完全に塞がっていた。


 男たちは、その言葉に呆然としていた意識を戻し手を離すと、

 女は恥ずかしそうに男のお腹から降りた。


  そこでやっと精根尽き果てたように、床にお尻を下ろして

 短い間だったけど、

 全力を振り絞ったのか滝のように汗が噴き出し、苦しそうに息をしだす。

 その間、傷んだ腰を摩るのも忘れなかった。


 女は、何度も凄い勢いでお辞儀をし、男たちはそれにこたえて軽く手を振った。



 この不思議な外人さんは気になるが後で聞くとして、


 少なくとも今は現状の確認が優先かと思う。


「 皆さん、この近くに集まりませんか?

  どれだけの人がここで意識があるか分かりますし、ちょうど空いている席もありますし

  今後の事もあるので話し合いもしたいんですが…


  それに、この不思議な女性が何か知ってるかもしれませんし興味ありませんか? 」


 客室の中で私の声が響き渡るが返事は…ぼそぼそと聞こえるだけだった。


 前の席から中年のおじさんが足を引きずりながら向かってくる。

 更に

 20をいくらか過ぎた派手目の女の人が、頭を押さえながら出てきた。


 それに先ほど巨体の女を引き上げた、

 先ほどの若い男と、スマホを握り締めていた男…


 泉ちゃんと私…集まった乗客は、私たちを入れても全部でたったの6人だった。


 一応、更に声をかけては近くを見て回ったが他に動ける人はいなかった。


 エコノミーとビジネスの隔たりは隔壁仕様だったので、

 鍵のない私たちには開くことが出来ないのでそれ以上の捜索は出来なかったが…

 とりあえずここには死んだ人はいなかったのがせめてもの救いだった。


 キャビンアテンダントやパーサーなどは、

 見つかりはしたが、

 乗務員用の丈夫な座席に張り付いたまま気絶していた。


 自分達のおかれている状況を確認したうえで、

 今度は、問題の床から救出した巨体の女に目を向ける。


 この女は、忙しく動き回っていた私達を見ながら、

 やることもなく、退屈そうにあくびをしていた。

 その証拠に、今、目じりにうっすらと涙をためて、

 口をむにゃむにゃ動かしていた。


 ちょっとムカついたけど、

 とりあえず、私が尋問してみることにした。


「 やっとお話が出来ますね。ところで、あなた、何者ですか? 」


「 ジャニスですわ。 」


 いやぁ…名前を聞いた訳ないでしょ…ふつうこの場合…。

 頭痛くなってきた。

 まあいい、それよりもこの状況って何なのか承知なのだろうか?


「 えっと、それじゃあジャニスさん?でいいですよね。

  これって、あなたが関与しているんですか? 」


 

「 ええ、他に誰が出来るんです? 

  貴方自身、そう思っているんじゃないですか? 」


 何を当たり前な事を聞くの?というちょっと失礼な態度に、

 若干、カチンと来たが怒ってもしょうがないし、

 黙られても敵わないので、心のこもらない笑みを浮かべながら

 低姿勢で、聞く事にする。

 


「 そ…そうですよねえ。

  それじゃあ、今のこの状況って説明できます? 」


「 機体が水平状態で、空中に浮かんでいますわね 」


 そんなの分かってるわ!うう、話が進まないじゃん…でも冷静に冷静に


「 だから…どうしてって聞いているんですけど… 」


 なんとも、要領を得ない会話だと思うが、

 床から這い出てくる人間なんかに質問したことが無いのだから仕方が無いと思う。


 

「 ふぁあ、ああ…御免なさいね、皆さんの今この状況でしたわね?

  簡単ですわ、私が、時間を止めてから飛行機の体勢を水平にして、

  気絶させた方達は、必要も無いから時間を凍結させて、

  貴方達の周りの時間だけ動かしているんです。 」


 緊張感も何も無く、あっさりと、しゃべってくれたが、

 到底信じがたい、頭がおかしくなるような話だ。


「 えっと、それ、正気で言っています?  」



「 あらぁ、それじゃあ、他にどんな方法で

  あんな高速で海に突っ込んでいるのを止めれますの? 」

 いきなり核心部分をついてきた。


「 そ…それは、私たちが知らない力…神様? 」


 私の口から思いもかけない言葉が飛び出した。

 そんなもの…生まれてこの方、信じた事も無い。



「 へええ、神様なんか、さっきまでまるで信じていない人の

  セリフじゃあ有りませんわ、それにそれだと私が神様ってことですか?


  まあ、その言葉で言われると何も進まないですわね。

  それに勿論、科学的でもないですわね。


  私たちが使う能力ってのは、

  基本、空間と時間に干渉して行うものですけど、奇跡でもなんでもないですわ

  ちゃんと、論理化し数値化までされていますのよ。


  貴方達では、初歩の相対性物理で挫折気味ですけども… 」


 そう言って口元に笑みが漏れている…

 なんか、常識ないな~って上から目線が妙に腹に立つ!


 大体、いくら知識があって頭がいいからって、

 胸のでかい美人って馬鹿って相場が決まっている!( 個人的見解 )

 よーし、少し反撃してやれ!


「 はいはい、そんな高等な頭を持つあなたが、

  出てくる穴の大きさ間違えてお尻が嵌って、動けなくなるんですか?

  面白いですねぇ。 」


 皮肉たっぷりに、

 今ジャニスがしたように、見下げる様な視線で言ってやった。


 元気のなかった泉ちゃんが、思わず笑い声を小さく上げた。



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