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死神 Danse de la faucille  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第五幕 悪鬼 ~demandes modestes~
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能天気女のお願い

  俺は、先ほどの呪文のような物を書き記した紙について気になったので、

 犯人だと思うこいつに聞いてみようと思ったが、

 聞くより早く答えが返ってきた。


「 ああ、これの事ですね。

  紙そのものは私が能力で投影しているだけで実体はありませんわよ 」

 ジャニスはそう言うと、

 彼女の手のひらの上10センチの所で俺の見た紙が急に浮かび上がってきた。

  

「 ふ~んただの幻って事か?

  でも、そこに書いてあった、呪文ってどういう意味なんだい? 」

 普通なら驚く事だが、こいつのそれまでの行動が物理を超えた事象の連続だ。

 そんな事もあるんだろうなって感じで納得はしたので、

 先に話を進めたかった。


「 ああ、それはですねぇ、

  私たちの言語で”汝の開錠の儀、承った”って意味ですわね。

  現れる先の次元の人が、

  読み上げたり心で叫んだりすると楽にそちらの世界に行けますのよ」


「 ふ~ん、そうなのか…楽にって事は無くてもこれるって事か? 」


「 さ~、どうでしょう。そこは秘密ですわね 」 


 ジャニスは、首を傾げて凄く可愛くにっこり笑った。

 が、正直言うと大きな体の圧力で少し不気味にも感じた。


「 すいませんねぇ…体がでかいからら。い…一応気にはしてるんですよぉ 」

  まあ、背の高さは本人じゃどうしようもないから可哀想か…


「 んじゃ、なんでこんなバカ高いヒールなんか…脱げば少しは背も低く見えるだろ? 」

 

「 ああ、それはですねえ…ええっと、うん!好きなだけですわ。

  ほら、おし…脚も長く見えるじゃないですか 」


 何気にお尻って言いかけたなぁ、でっかいお尻を気にしてるんで、

 脚を長く見せて少しでも割合で小さく見える様にか…

 別にそんな事気にしなくていいじゃないか?

 俺としては、でっかいお尻も胸も好きな方だけどなぁ…

 貧弱よりよっぽどいいし、柔らかくて美味しそうだし。


「 え!ええ、ちょっと何考えてるんですかぁ! 」


 そう言うと、胸の前を両の手で閉じて、真っ赤な顔で俺を睨んできた。

 いちいち反応するの疲れません?


「 あのさ、俺の思ってることにいちいち反応してたら話が進まんだろうが。

  心が読めるなら、読めない様にすることも可能だろ?

  そうすりゃあお前も変な気持にならなくて済むしな 」


 大体、男なんて女に対してはこんなもんだろ?

 その能力があれば経験上、俺以外の男の考えていることも分かっているだろうに。


「 ああ、え~と…まあ、男の人は大体…そうですわね。

  言ってることはもっともですわね…そ…それじゃあ 」


 そう言うと、何やら小声で呪文を唱えて、俺の頭を2・3回優しくたたいた。


「 これで? 」

 あまりにも簡単だったんで思わず片眉を上げてジャニスに質問した。


「 ええ、聞こえませんわよ。」

 俺は、頭の中で鬼畜のような俺に責められて、激しく悶えるジャニスを想像した。

 俺は女性経験は豊富なんで、ジャニスの裸も乱れる所も大体は見当がつく…

 死神相手では現実では不可能だと思うが、

 思うだけなら罪にもならんし、試すにはちょうどいい。

  ほんの数秒待ったが、ジャニスに変化が無いのでどうやら聞こえないらしい。

 これで、ようやく話が進むだろう。


「 ああ、それじゃあ話を進めようか。

  さっきの紙に書いてあった現状を変えるとか、過去を忘れる事とか

  そんな事なんかできるのか?

  一応、死神って神様だからできるかもしれんけど 」


 の様なものって自分で言ってたから死神でいいだろう。

 でも死神って悪魔の親戚みたいなものだから

 きっつい条件あるだろうなぁ…この世で無料ただで誰も動きやしないからさ。  


「 ええ、それに書いてあった通り現状と過去は劇的に変える事は出来ますわよ。

  今回は、ちゃんと上司の許可をもらっているんで

  時間でも空間でも動かす能力が使えます。…範囲限定ですけど。

 

  殆ど、不可能な事はありませんが、

  太陽になりたいとか、地球になりたいって馬鹿なお願いは当然できません。

   昔、神様になりたいっていった馬鹿な人もいましたから

  念のために言っておきますわね。  

   もし願いの内容が可能かどうかの判断がつかないようでしたら、ご相談に乗りますわ。

  できる限りご希望に沿えるよう努力いたしますわ。   


  でも、それにはですねぇ…ちょっと条件がありまして…

  私が、ここに現れた原因でもありましてですね。

  私の仕事としてですね、お願いしないといけない事がありましてですね…うんん。

  か~…は~…ええっと、


   その~、大変申し訳にくいのですけれども、

  実は、ちょっと軽く死んでいただけませんか?

   何、ちっとも怖くありませんわよ、

  ちょっと意識が無くなる気絶の様なものと思えばいいんです。

  あ! でも、ちょっとというか、

  物凄~く痛いんですけども…いけません?嫌ですか? 」


 可愛い顔で恐ろしいことを言いやがる。

 馬鹿じゃないのか?嫌に決まっとるだろ!

 ああ、さっきまでほぼぼの楽しくって感じだったのに…何なんだよこの落差。

 人生変えるのに死んじまったら、次の生まれ変わりでって事だろ?

 別に死ねば運命変わるわな確かに。

  

「 いや、死ぬのはちょっと… 」


 間抜けな言いかただけど、ジャニスが人外であるのは間違いないらしいので、

 刺激する物言いは控えないといけない。

 死神には武器や俺の攻撃なんか、まったく通じないだろうし、

 怒らせたら、条件とか説明とか面倒な事せずに殺されることもありうる。

 俺が死ねば、ジャニスの希望は叶うわけだからな。

 

 でも、理由ぐらい聞いてもバチは当たらんだろう。


「 でも、何の理由があってだい? 」

 俺の中では、丁寧に刺激を起こさないように質問した。


「 貴方をこのまま生かし続けるとですねぇ、

  将来、死んでもらうと困る方を殺してしまうんですよ。

  本当なら、

  崖から落ちた時点で死ぬ運命でそんな風にはならない筈だったんですけど、

  どこで間違えたか骨を折るぐらいで生き残ってしまったものですから。

  それで、あわててですね私が今苦労してるんです 」


 なんか、非常に残念そうな顔をしているので、少しムカッとした。

 

「 あのさ、ここで死ぬのが運命だったって言うなら何で死ななかった?

  その上だな、どうして俺が本来、運命にない奴なんか殺すんだい?

  矛盾してないか? 」


  運命ってのは変わることが無い物事の結末っていう意味だろ?

 おかしいじゃないか。


「 え~一応、この世の運命っていうのは最初から決まっています。

  でもですね、運命は雨粒のようなものですわ

  何もなければ、水滴になって重力で落ちてくるだけで、

  落ちる先はほぼ決まっているでしょ?


  でもね、こう考えてください。


  気温が低ければ、雹や雪に、

  逆に高すぎれば、空中で蒸発してしまうし、

  強い風が吹くとどこかに流されるでしょ…それと同じよ。

  つまり、ちょっとしたことで変わるのが運命です 」


 なにか、おかしい…それは運命といわず計画と結果にしか過ぎない。

 運命とは動きがたい結末じゃないのか?

 

「 あのさ、ころころ運命って変わる訳じゃないだろ?

  もし変わるなら、あんたが殺される人間に干渉して運命を変えればいい。

  旅行に行くとかすればいいじゃないか…違うか?

  わざわざ俺が死ぬ理由がどこにあるんだ? 」


「 えっとぉ… 」


 ジャニスの大きな瞳が明らかに泳ぎだした。

 これは何かごまかす表情だ、俺は心は読めんがこれだけあからさまだと馬鹿でも分かる。


「 あの~、嘘ついていましたぁ!

  じ…事情は言えませんので黙って死んでいただけないでしょうか? 」


 困った顔で、ぺこりと頭を下げてきた。

 どうやらこの態度は本当らしい…しかし、ジャニスさんよぉ、嘘ってなんだよ。


「 はああ、人間の俺に速攻でばれる嘘つく死神って何なんだよ。

  しかも、謝るなんてどんだけ人がいいんだ。


  あのさ、自分から…少しは頭使えば簡単に誤魔化せるだろう?

  さっき上司がどうとか言ってただろ?

  例えばだな、詳細は知りません!業務命令です!と有無を言わさずでいい。

  あんたは死神なんだから 」


「 あ!そうですわね、勉強になりました 」

 思いついたように声を上げるジャニスに俺は頭を抱えた。

 このままだと埒が明かないし、どうしようか。

 でも死ぬのはちょっと勘弁してほしいから、

 結局は死んでくれって話で堂々巡りって感じになるだけだよなぁ。


「 ええっとですね。

  お腹が減っていると冷静にお話もできないでしょうから食事でもいかがですか? 」


 別に、満腹になっても死にたくはないがなぁ。

 しかし、ジャニスに聞きたいことはまだあるし考える時間だって欲しいところだ。

 

「 ああ、死ぬとかは別にして、

  腹は減りすぎるほど減っているので食事はありがたい。

  でもどうやって?森の中だぜ? 」

 

 ジャニスはにやりと笑って俺の方をちらっと見て右手を上げる。


「 アータサン、シャーキン、カエシーナ 」 

 

 そんな呪文のようなものを唱えて、右手を回すと、

 少し上の空間に煙が渦巻いてそこから何かが降りてきた。


 黒い見た事のない材質…木の様でもあり金属の様でもある、

 直径が3~4センチの棒状の物だ。

 ジャニスの右手にゆっくりと滑り込んで止まった…

 すると、凄まじい勢いで棒の上部で何かが渦巻いていく、

 そして、渦が止まったと同時に長大な刃が現れた。

 長さは2Mはある、よく絵画で見る死神の持つ鎌の様だった。


「 やっぱり、死神の鎌か… 」素直な感想を述べたが、ジャニスは少し顔をしかめた。


「 まあ、似ていますけど…これって舞踊の鎌っていう私たちの…

  まあ、今は説明してもしょうがありませんわ。 」


 そう言うと何か、凄まじい早口で呪文を唱え始めた。

 相当集中しているのか、さっきまでのお気楽なオーラは感じられなかった。

 暫くすると、周りに凄く重い霧がかかり始めてきた。

 それでもジャニスは、止まることも無く呪文を唱えている。

 霧はどんどん濃くなって全ての視界が無くなるほど霧に覆われると、

 なぜか、光源であった焚火も見えなくなった。

 ジャニスの呪文が終わり立ちあがって舞踊の鎌とやらを一振りすると、

 周りが白い霧のまま急に明るくなってきた。


 なんだか、真昼の霧のような感じになったかと思うと、

 今度は霧が晴れはじめる。

 さっきまで漆黒の闇だった空が、抜けるような青空になっていく、

 鬱蒼とした木々も消えて、

 見渡す限り、雲の絨毯のような場所になっていた。


 正直、信じられない奇跡だが…呆然とする以外ない。



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