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死神 Danse de la faucille  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第四幕 楽しかったですか?
22/124

最後の晩餐から小さな宴会へ


「 えっとですねぇ…食べていいですか?見てたらお腹すいちゃって。

  それに、脚が寒いんで当然、炬燵にも入りますけど…お酒も飲みたいなぁ… 」


  はああ?何言ってんだよこの女…見も知らん女になんで飯を分けないかん?

 っていうか、あんた、さっき安酒や言ったやないか?

 図々しいなぁー

 こんで可愛かったらおっちゃんも気分害さないだけど…でも、それは冗談として

 断るのは勇気がいる。


  だって、この威圧感、殆ど脅しじゃないの?

 俺はそんなに背が低い訳ではないけど、この女の大きさは規格外だった。

 ピンヒール履いて立っていると190は軽く超えていそうで今にも天井に手が届きそうだ。

 Gカップは確実の超絶のメーター級の胸を有している上半身は物凄い。

 肩幅も二の腕も全体のバランスだと細く感じるけど…間近に見ると凄いとしかいいようもない。

 90センチを超える股下のおかげで暴力的に大きなお尻も小さく見えるが、

 俺が少し視線を落してみる限り凄まじい迫力だ。

 女というより至近距離だと、ただひたすらデカイ壁の様な威圧感!


  あ~畜生!でも顔も美人だし、こんで160ぐらいに縮小するなら

 おっちゃんの好みのストライクなんだけどな…惜しい!


  しっかし服はいただけないほど地味だとは思った。

 ミニスカ丈のワンピースに白銀のパンツは別として、柄もない烏の様な真っ黒な服。

 背中には大きなフードが垂れ下がっている。

 ゲームかなんかに出る魔法使いのローブみたいであるともいえるが、

 みっちり体にフィットしていてるので、お尻から生足のラインが大変…

 胸元もはち切れそうなので、逆に地味の方が正解!っていう衣装だった。


  はあ…ま、ひょっとしたらまだ酒の影響で夢の中かもしれないとも思った。

 何も無い天井から女が振って来るなんてありえないからな。

 あ、でも夢ならもっと…いや、夢は調整できなかったな。


 「 あーいいですよ、俺もう腹いっぱいなんで好きなように食べてください… 」

 見も知らない女だけど、夢だと思えば不思議に警戒感も無くなった。


 まあ、今日は死ぬにはよくない日だということだ…と思おう。

 それに、夢から覚めたらそんときに考えりゃいいか…多少は金もあるから

 もっといい方法で死ぬ事も出来るかもしれないし。

 俺はそう言いながら、ニヤついているだろう顔で彼女を手招きした。

「 やったー、こたつ、こたつ…お酒お酒 」 

 女は狭い炬燵に器用に巨体を滑りこませると、軽く身震いした。

 本当の寒かったようだ。


「 で、あんた誰?」

 俺も炬燵に入ってその女と向かい合わせとなった。


 女の大きな足が邪魔で脚は伸ばせないので胡坐だ。

 しかし、女は巨体で胡坐は掻けないのか膝を横に曲げて脚を入れている。

 狭い炬燵の中では折りたたんでも俺の脚に彼女の柔らかい足が時々触って来て気持ちいい。

 勿論、彼女自身の体温で暖まりが強くなった炬燵は本当に気持ち良かった。


 ただ、彼女を女性として見るには

 向かい合う女の座高が、妙な気持など瞬間に醒めさせてくれるけどね。


 「 ジャニスですわ… 」


 うううん、名前聞かされてもなー…あんたの正体とか目的とかやろ普通。

 かなわんなぁ…質問変えるか…

 ジャニスはそう言いながら、安物のブランデーグラスにワインを入れ始めた。

 まだかなりあったワインがドボドボと音を立てて注がれていく。

 最後に表面張力を起こすまで注ぐと、ギュッと口をつけて吸い上げていく…

 あんたさっき下品がどうとか言ってなかった?

 しかし凄い酒飲みだって思う…俺なら一気に酔いが回りそうな飲み方だ。


 「 いや、名前じゃなくてさ、

  ここに何しに来たか、どういう人かってことですよ… 」

 その質問にジャニスは完ぺきに無視して俺の晩餐の品評をし出す。


 「 へー、結構美味しいわねこのクラブの揚げもの。

   この安酒ワインも年は若いけど…まあ、カルベネでミディアムなので赤だけど

  甘くてクラブに合うわ。

  お刺身には、当然白か…変化球でキャンティの赤でもいいかなぁ? 」


  ってそれ海老やん!ほおお、バリバリ食べて

 おお、一気にワイングラスを…吸い上げきって大きく深呼吸をする。

 すげえな、このねえちゃん。軽く300cc一気飲みかい!

 飲みながら炬燵の上の残りの白と小粋なキャンティ種の赤を見比べている…


「 すいません、さっきの質問ですけど答えてもらえませんかねぇ。」

 酒が入って彼女がちょっと落ち着いたようなので、

 すかさずさっきの質問をする。


「 そ…そうですねー

 それを言っちゃうと、帰る羽目になるし…聞いても大して面白くないですよ。

 それより、もうちょっと遊んでてもいいでしょう。 」

 何か眉を寄せて、切なさそうに頼むんで、ついこちらも答えてしまう。

 そうは言いながら、

 手元を見ないで残っていた新品のボトルのマキシキャップを開け出す。

 これは…答える気ないなって思った。


「 いやあ、あんたが別にそれでいいなら構いませんよ。

  炬燵に入った方が暖かいんで…出来れば暫く居て欲しい位ですからね。

  俺は別に用事ないし…遊んでてもかまいませんよ。」

 まあ、どうせ夢なんだし、眼の前の美人の顔で頼まれちゃあ、

 死に損ねて空しい時間を過ごす俺には断る理由が無い。

 もっと言えば、いのちに未練が無い俺に彼女の素性など大して意味は無いのだから。


「 しかし、飲み食いはいいとして、何して遊ぶつもりなんです? 」

 と豊満な胸の間が、少し赤くなってきたジャニスさんに質問する…


「 そうねええ、まずは身の上話とか? 」

 いきなりの前提条件のちゃぶ台返しに俺は目を白黒させる。


「 いや…それ言ったら、あなたが何者かとか分かるんじゃないですか? 」


「 そう?関係無いレベルでなら問題ないんじゃにです事?

 そうですねぇ…例えば、高校時代の思い出とか面白い話でもかまいませんわよ。」


 おい!いきなりなんで、そんなニッチなところに行くんだよ!

 大体…あんた高校って、天井から落ちて来る人が高校って何?ってかあんた外人…


「 私はですねえ…高校は岐阜の公立高校に通ってましたの。

  寒かったですわねぇ…山だらけ、川だらけ、畑だらけの超弩田舎って感じのですね。」


「 はああ?岐阜って何!日本人なのぉ? さっき炬燵初めてみたって言わなかった? 」


「 だってこんな小さな炬燵は初めて見たって言ったでしょ。

  田舎の炬燵って基本でかいのですわよ。6人がけってのも結構あるぐらいですし…

  向かい合わせで脚が当たるなんて狭いの初めてって意味ですのよ。」


「 ま、おひとり様用だからねええ。」

  ぴったり90センチ四方の炬燵って言うのは田舎に無いのかなぁ?


「 日本人かどうかって聞かれると微妙って答えですかね…国籍はありますけど。」


「 え?日本って二重国籍って基本駄目なんじゃないのぉ?

  朝鮮・中国系の一部を除いてさぁ…でも、そうは見えないんだけど。」


「 ははは、そういう意味じゃありません。日本国籍しか持っていませんよ。」

 俺は、そう言って少し寂しそうな顔をしたので話題を切り替えた。


「 んじゃあ、高校は制服でした? 」


「 ええ、今どき珍しいセーラー服でしたわねぇ…私は体が大きいから特注でしたけど。」

 高校生か…だとしたら女性だから今と身長は変わらないよねぇ多分。


 俺は、金髪碧眼、その上美人でグラマラスのセーラー服姿をイメージした。

 想像力が貧困だったせいか、出来の悪いAVの様な滑稽な印象で浮かんでしまった。


「 岐阜って…どこですか?山奥だと下呂とか土岐とかありますけど… 」


「 もうちょい奥ですわね…基本進学校でしたわよ。

  偏差値も62ありましたから、大学は寒い所は飽きたんで●重大学でしたけども。」


「 ふ~ん、国立出てるんだ。」

 ま、びっくりするほどレベルが高い訳ではないけれど、

 勉強しなきゃあいけない大学だよなぁ…港が近くて…って、あそこも大概田舎だけど

 少なくとも温暖で過ごしやすいイメージはあるな…


「 しかし… 」

 俺は、大学のキャンパスを反則の様な巨体で胸を揺らして歩くジャニスを想像して

 さっきと同じような貧困な印象が浮かんでくる。

 でも、この巨体さん…馬鹿じゃないんだ。

 遺憾なぁ…胸や尻がでかいと馬鹿だって日本人は刷り込まれてるから仕方無いけど。


「 俺は、高校は愛知…大学は●●屋大学ってとこ。」


「 ふ~ん、中部では一番ですわねぇ…でも、意外と近いですわね話して見ると。

  んじゃあ、休みは名駅に栄でってとこですわねえ…羨ましいですわ。」


「 そう?でも、俺は基本実家からの通学だったから嵌めは外せなかったけどなぁ。」


「 私は下宿でしたわ。一応、マンション借りてました。

  田舎なんで食事なんかは困りませんでしたけど遊ぶところは無かったですわね…

  でも、週末は友達がたくさん来て楽しかった思い出がありますわ。」


「 友達って、女の子? 」


「 いえいえ、どっちもです…まあ、遊びって言うより私の料理食べにくるって感じですか。

  男の子にとっては生命線らしく、出入り禁止になったら金が持たないって

  そんな感じですから、変なことは一切ありませんでした。 」


 ほおお、羨ましい話だなぁ…ま、出入り禁止で堪えるのは他の意味もありそうだがね。

 それに、手なんか出したら…


 そう思ってジャニスの体をまじまじと見る。


「 な…なんですかぁ? 」


「 いやいや、何でも無いよ…それよりさ、ジャニスさん…焼酎って飲める?」

 ジャニスが本気でもなって相手でもしたら、

 若いだけの大学生なんて直ぐに干からびてしまうのにって思ったことはおくびにも出さなかった。

 たまにくる御同輩の借金取りが、知り合いから

 貰った田舎の酒蔵の焼酎を下戸だからと理由で俺にくれたものがあったのを思い出したのだ。


  なんでも銘品らしく、飲むのがもったいないと未開封のままで

 ずっと、楽しみに仕舞っていたのだがすっかり忘れていた…

 しかし、今日は巨体だが美人さんと一緒だ。

 それに、青春時代も思い出なんて一番の肴で酒もきっと、うまくなるだろう。


「 焼酎ですか? 」


「 ああ、●●蔵って言ってだな…あ。確かにそうだった。」


「 ええ、逸品じゃないですかぁ…飲みます飲みます! 」

 と言いながら、彼女のワイングラスにはもう白のロッソ・ディ・ノートリが注がれていた。

 ワイングラスに口紅の痕が無いから、また同じように吸い上げたんだろう…

 どんだけ飲むんだこの巨体。


 …そうだ!おれも醒めたから、もうチョイ飲むか…

「 ああ、焼酎は本当はお湯割りが一番いいんだ…ちょっと待っててね。」

 俺は、律義に払い続けた水道代とガス代が

 無駄にならなかったことを感謝してお湯を沸かした。


 大きな湯飲みにお湯割りを入れ、ジャニスとさし向けに飲み始める。

 ジャニスはそれでも、ワインと交互に飲んで話を続け出す。


「 へえ、高校も大学も日本って言うなら彼氏ってのも日本人じゃあ… 」


「 う~ん、彼氏いって言うのはいませんね…随分前から。

  高校の時は吹奏楽で忙しかったし、大学は友達付き合いが多かったんで…

  親密な付き合いって言うのは…中学生ぐらい? 」


「 いやいや、中学生で親密な付き合いって…はああ? 」


「 無論、キスだけですわよ…私が膝曲げてやっとですけどね…

  しゃがみ過ぎて後ろに倒れはしましたけど。 」


 って…あんたまさか処女?お年はいくつなんだろう…でも、25前後だろうなあ。

 もったいないって言うか可哀そうだなその体で。


  それから、俺とジャニスは同じ中部出身って言うので盛り上がる。

 愛知、岐阜、三重なんてお互いに庭先みたいなもんだ…

 温泉、スキーに郡上八幡の踊りと岐阜にみんな行くし、

 普段の遊び場は着飾って名古屋に、空港は中部国際の愛知、

 正月にはお伊勢さんに、遊園地なら長島スパーランドに鈴鹿の三重に行く。


 共通な話が多く盛り上がりどころも共感が出来た。

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