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四つ目の選択

これは、短編で発表した奴をまったく手を加えずに再掲しました。

 「ピーンチ」僕は、そう声を上げるしかなかった。

 なんせ、僕の眼の前には飢えて、涎を滴らせて

 今にも、襲いかからんとするような獣が並んでいるからだ。

 何に飢えてるかって?女に決まってるじゃん。

 うええ、吐き気がする。

  

 なぜこのような状態になったかというと…

 それは、

 僕が、用事で2時間目の最中に早退して、

 帰宅しようと、この場所の近くを通りかかった時だ。

 

 人気のない…というかロープで立ち入り禁止の状況になっている

 今は取り壊しを待っている旧校舎があるんだが、

 その校舎裏から下品な笑い声がしたので、 何事かと思った。


 それ、将来こじらせると致命的!とみんなに指摘される好奇心が災いして、

 よせばいいのに、校舎の陰から覗き込んだんだが…

 それと同時に、馬鹿な金髪の男と鉢合わせてしまったのだ。


 そこでは、

 校内でも、評判の良くない輩が好色な目で、鼻息も荒く、

 月間のエロ漫画を回し読む集会だった。

 ま~たく情けない…

 いまどき無修正で、動画が手に入る世の中で…何がかなしゅーて

 エロ漫画?

 

 んで、この馬鹿共のクラス委員長である僕が

 周りの状況も読まんと、正義感から注意したのであるが…


「んなの、委員長が相手してくれりゃ…いつでもやめたるわ!」


 の金髪の馬鹿の一言で、一気に僕は追い込まれたのだ。

 

 でも、16歳の身空で、こーんな馬鹿どもにぼくの処女なんか

 くれてあげる義理も義務もない。

 なんで、敢然と拒否する!!当たり前だけどさ…


 だけど…無理やりだねこの雰囲気さー、

 泣いて頼めば、許してくれるかなぁーと淡い考えが浮かんだが、

 眼の前のメンバーを見渡すと、ムリ!って答えしか返ってこない。

 話が通じる知性が、一片もあるとは思えん馬鹿面だからだ…

 

 真っ赤な髪のオールバック…目が卑猥

 凄い痩せてるのに脂ぎってる男…滝の様な汗がキモイ

 太ってまゆ毛の濃いスキンヘッド…口角が上がっている吐き気がする。

 んで、極めつけはこの金髪…だらだら涎流しながら啜る。勘弁して!!


「と、言うことで諦めてくれるかな?

 大人しく言うこと聞いて、ちょっと目をつぶれば…

 後は、俺らの中から好きな奴と付き合うことになっても

 邪魔しないからさぁ…へへへ」


 あ…あほか!そんな展開、世界が滅びるまで無いわ!

 毎日毎日、授業さぼってこーんな所でエロ漫画ばっか見て

 頭ん中に蛆でも湧いてるんじゃないか?


 大体さー、学校来て授業も出んと校舎裏でエロ本鑑賞会って

 家でやれよ、家で!


「あんたらさー、校舎裏ってフツー隠れ煙草が定番じゃないのか?」


 すると、金髪が真っ青な顔で

「委員長さー、タバコって体に悪いじゃんか?停学もんじゃん?」


 頭が痛くなってきた。


「ぼくを襲ったりしたら、停学どころか退学じゃん!」


「はあ?こんだけの人数にヤラレてさ…警察沙汰にできる?

 親告罪だよな…婦女暴行ってさ。

 それに、俺たちのテクにかかったらイチコロ…」


 ブチン!と、僕の頭から音がしたみたいだった。

 馬鹿の金髪の頭の中身が、エロ本で占領されているらしい。

 1体1でもない輪姦で…しかも私、未成年やぞ!確実に退学・年少いきじゃん!


 それにテク?笑ってしまいますわ…そんなんがエロ本観賞会なんか

 するわきゃないだろ!

  

 手のひらを開いたり閉じたりして近寄って来る金髪の、

 ニタニタ笑ったままの顔面に、私の右足がめり込んだ。


「し…白」と馬鹿な言葉を残して、金髪はズルッと地面に落ちた。

 ご丁寧に、僕のパンツを指さしたままで!

 でも、

 この人数を馬鹿正直に相手しても無理なんで、

 踵を返して、全速力で離脱!!

 と思ったら、いきなり転んでしまった…脚が笑っていたんだろうね。

 ぱっと、

 赤い髪のオールバックが僕に飛び乗ってきた。


「馬鹿じゃん!委員長…可愛がるのが念入りになるだけやぞ…」


 と、ぼくの両手を抑えつけているオールバックがほざいた。

 だーて、大人しくやられたっていやな思いするだけじゃん…

 うまくすればさ、逃げられると思った訳よ…


 しかし、嫌だなぁ…

 こんなことでしか、女をどうにかできない連中なんかに

 やられたら、飽きるまで性奴隷じゃんか!

 

「いや…、ぼく…処女・・・」

 僕は、言ってはならない事を言ってしまった。


 こんな言葉なんて、この馬鹿たちを余計興奮させるだけだ…

 で…でも怖いんだよ!


「奇遇だな委員長、俺らも…その…初めてで…さ」


 童貞かいなー! それになんで顔赤らめて純情そうにするんや!

 手を離せ手を!! 必死に体を動かしたけど、


 気の強さで校内一の僕でも、腕力は非力な女の子だし、背丈も156しかないから

 エロで頭がピンク色の力だけはある、色ぼけ男子高校生に敵う訳ない!


 しかも、馬鹿達は、確実に逃げれなくするため

 一致協力しやがった…


 僕の手は、頭の上の方から、痩せて脂ぎった男に抑え込まれて、

 僕の脚は、鼻血にまみれた金髪とスキンヘッドの馬鹿たちに力いっぱい抑えられた…

「んじゃぁ、ぐへへへ…」

 身も凍る、下品な笑い声をあげながら、 

 赤毛の馬鹿の手が、僕のスカートの中に…げええ!


(ん?)

 急に、周りの動きが遅くなった。

 というか時間がゆっくり流れているみたいに感じられた。

 パニックになると、時間がゆっくり流れる事もあるって聞いたことあるけど…

 本当にゆっくり…

 僕の、顔の少し上で水滴が、固まって止まってしまった…

 その発生源だと思う、

 涎を垂らしている赤毛の馬鹿の額に何か文字が…光ってる。

 ”あなたの、危機的状況を何とかしてあげましょう、

  さあ、声を出して叫んでください…”

 なんでもいいや! 半ばやけになって、その文字を叫んだ!

「アータデン、シャーコオ、ヘンガーナ!」

 大声を上げた時に気がついた。

 あーた電車来-へんが―な…なんやそれ!

 

「は―何?」

 赤毛の馬鹿が不思議そうに僕に聞いてくる。

 いきなり、時間が普通に動き出した。

 落ちてきた涎を間一髪で、避けた僕は絶望した…なんも…


 ダダダダン ウウーウ ダダダン ウウウー ダダダダーーーン オオオオー

 その時いきなり、聞いたことのある演歌のイントロが大音量で聞こえてきた。

 どこにもスピーカなど無いのに、直ぐ近くで音がする。

 僕と、僕を抑えつけている馬鹿たちが周りをあわてて見回す。

 そう言えば、この曲って…

「え?石…」

 最後まで言う事が出来なかった…

 

「きゃん!」物凄く可愛い悲鳴が上の方から聞こえたと思ったら、

 突然、なにも無い空間から、物凄い質量の何かが急に降ってきた。

「ぐぎゃー」

 右足を抑えつけていたスキンヘッドの豚が悲鳴を上げた。

 音に驚き上を見上げていたのだろう、

 ひっくり返って、万歳していた。

 下がコンクリなら即死という勢いだったが、柔らかい芝生なので

 気を失っただけだろう。


 スキンヘッドの胸の上には、ものすごい巨体の女の人が座っていた。

 スキンヘッドの口元には、女の人の脚の付け根が…

「きゃ!」

 その巨体に似合わない可愛い悲鳴を上げてスキンヘッドからどいた。

 スキンヘッドの顔は、凄く幸せそうな表情を浮かべていた。


「はああ?」

 金髪の男が、立ちあがった女の人を見て反射的に立ちあがったのだが…

 あまりにも大きな身長差だった。

 金髪も175ぐらいで背は低くないけど…2周りぐらい大きい

 凄いピンヒールが、巨体の重みで芝生に刺さっていくけど…

 軽く190は超えている…ヒールを脱いでも180半ばぐらいあるだろう。


 んで、巨体の人も金髪…ナチュラル・プラチナ・ブロンドってやつ?

 染めた金髪が斑の馬鹿の醜悪な顔に比べると、まさに美女と野獣…勿論、馬鹿が野獣

 巨体の人は…北欧の美人さんのように見える。

 透き通る真っ白い肌、湖よりも青い瞳、薔薇のような唇。

 か…顔は体に比例してでっかいけど…

 

 馬鹿の方の斑金髪は、その身長や、美貌よりも目の前の

 暴力的に馬鹿でかいメートル越えの胸にくぎ付けとなった。


「きゃ!何見てんの!」


 ブヲーンンと、風を切る様な音を纏った、

 スナップの利いた平手が、斑金髪を襲うと、

 横に空中で一回転して、3mばかりむこうに張り飛ばされ、

 旧校舎の壁にぶつかって、

「ふぎゃ!」って、声を上げて地面に落ちた。


 女の人は、少し開いてる胸元を押さえながら、


「まったく、さかりのつき始めた子供はこれだから嫌ですわ。」


 一瞬で、二人の仲間を沈められた赤髪の男は、茫然としたが、

 この期に及んでも、僕のお腹に座っていやがる。


「どいてよ~、重いよ~、気持ち悪いよ~」

 自由になった脚を思いっきりバタつかせると、

 僕のささやかな(悲)胸から右手を離すと

 自分の頭の上まで引き上げて、僕の頬を…叩けなかった。


 引き上げた勢いのまま、後方に倒れたからである。

 ぐえええ、重~い。

 その時、僕の手を抑えつけていた手も緩んだ。


「く…来るな!」


 僕の頭の方でなんか男が話しているけど、

 お腹から下半身にかけて、万歳して仰向けになってる馬鹿のせいで見えない。

 ほんの一瞬だけくぐもった声と共に、地面に崩れ去る様な音がした。


「おやおや、若いのに心臓弱いですわね…お二人とも。

 ちょっと、血を止めたぐらいで…楽ですわね、後で…と」


 巨体な女の人が、僕を見降ろしてきた。


「これ、どかしますわよ…いいですか」


「頼みますよ~、グスッ気持ち悪いんですよ~、うう怖いんですよ~」


 僕は、どうやら泣いていたらしい、声が涙でかすれている。

 恐怖から一瞬で解放されたからだと思う。


 女の人は、僕の上に乗っかってる赤髪の馬鹿を気持ち悪そうに

 猫でも掴みあげるように、顎に手をやって僕から吊り上げてくれた。

 その隙に、僕は横にゴロゴロ転がって脱出した。

 ジョボボ…ジワ~

 全身の緊張が解けたんだろう…安堵して…洩らしちゃいました。

 うう、お尻の方まであったかい…グスッ。


「パンツの替えあります?」


 親切に声をかけてくれた恩人は、まだ、高々と馬鹿を吊り上げていた。

 ネックハンキングツリー?プロレス好きの僕は咄嗟にそう思ったけど、


 馬鹿はどう見ても70キロは超えているのに、巨体とはいえか…片手でって…

 んで、ポイっと横に放り投げた…2m以上飛んだけど…


「いえ、無いです。」


 普通、持ってません!

「困りましたね、私の替えのパンツじゃ大きいし…」

 いや、あんた。そんなの持ってるの?

 でも…

 はああ、無理無理!1mをはるかに超えるでしょ!あなたのお尻!


「我慢してくださいね…ちょっとの間だから…」


 ちょっとの?どういう意味?


「そ…それより、あんた誰?」


 当然の質問を、冷静に言い放つ。ちょっと落ち着いたかな?


「ジャニスですわ。」


 うええ、名前聞いても…そういう意味じゃないんだけどさ。


「しかし、悲惨な事になりましたわねぇ、楓さん大丈夫でした?」


 ええ?なんで僕の…ってか納得するわ…こんな奇跡の連続じゃ


「パ…パンツが濡れたのと、無い胸揉まれてひりひりしたのと

 地面に擦りつけられて背中が泥まみれな事を除けば大したことは…」


 大したことあるわ!輪姦されそうになったんや…未遂やけど。


「んと、残念ですが…輪姦は免れましたけど…命が尽きます…もうちょっとで…」

 えっと…何?頭おかしいの?


「だから、もうすぐその体から出て行ってもらいます。」


「出ていくって?何ですか?」


 あまりの言葉に、僕は立ちあがってジャニスさんを見上げる…く…首が痛い…


「文字通りですわ…、本来ならここに転がってる色馬鹿共に

 まともに輪姦されて…こいつらがあなたを解放した後で…

 あなたは、ショックと写真で脅されて奴隷宣言してしまった自分の

 将来を悲観して、電車に飛び込んで八つ裂きに…」


 うえええ、何言ってんのこいつ!大丈夫かいな。


「ジャニスさん…あなた頭大丈夫?」


「全然、それとも私が出てきてからの事…一つでも説明できます?」


 えっと、何も無い空間から尻もちついて一人倒して…

 かあああ!何言ってんの僕…そんな非現実的な…


「私は、その非現実の世界から来ましたのよ…残念ですが」


「ジャニスさん…あなたって?し…しに」


 馬鹿な単語が頭に浮かんだ。まさかね


「死神ですわよ…厳密には違いますけどね…そうだ」


 ジャニスさんは、転がっている4人を重ね餅にしてその上に上った。

 言葉にすると一言だけど、

 その間、3分間黙々と息も切らさず、作業を進めるジャニスさんが怖かった。

 んで、その上に乗って…何も無い空間に手を差し入れた。

 肘から先が急に消えたので…異空間?って馬鹿な発想が浮かんだ。


「えっと、異空間じゃ無く別次元ね…と…これこれ」


 なんか弄っていたらしい動作が急に止まって、何かを引きずり出してきた。


 ずるずると形が見えてきた…2mを超える(ジャニスさんの身長と比較して)

 長い鉄の様な輝く棒の先に…長大な大きな鎌の刃が鈍く光っている。


「し…死神の鎌…ですよね…よく絵かなんかにある…」


「ん~惜しいですわ、正式には舞踊の鎌って言いますのよ…私の次元では」

 次々にありえない事を見せられたら…納得するしかないか…


「でも、確実に死ぬことが分かっているなら…なんで助けたの?」


「うう、それは言えませんわ…

 只ですね、あなたのその容姿というか肉体がが大事なんですわ。

 あなたの魂が抜けだした肉体がね…

 ただし、どうしてもいやって言うなら…無かったことにして

 時間を巻き戻します。この色馬鹿達に好きにされたいならね…」

 んな訳あるか!

 どっちにしろ死ぬんならさ~嫌な思いなんかしたい訳ないじゃない…


「ただ、私も上司も鬼ではありませんので、選択肢をいくつか…」

 いやぁ、言ってる事自体鬼だから…って上司って何?

 そ…そうだ。どうせ死ぬならどんな人に魂をもっていかれるのか知りたい。


「ジャニスさん、それ、後で聞きますから、先に私の質問を聞いてくださいますか?」


 ジャニスさんは、肯定の代わりに、優しげに笑みを浮かべている。

 魂をもっていかなきゃさー、天使みたいに綺麗な人なんだけど…ああ

「身長は?」

「え!こ…186センチですわ。それって」

「ぼ…ボディサイズは?」

「なんで?」

「いいから答えて!」

「バスト104センチ ウエスト…67センチ ヒ…ヒップは103センチで…」

「嘘ですね…ヒップはそうね110はありそうだわ」

「うう、最近食べ物が…って関係無いでしょ!」

「体重は秘密!!ぜええーたーい言わないわ!」

「70キロでしょ…もうちょとあるかな…んで、足は26」

 ジャニスさんが、目を丸くして固まった…マジか…


「…えっと、もういいでしょ?」

「彼氏は?」「い…いまはいませんわ」

「だから、なんで私の事なんか…」「魂もってく人の事気にしちゃダメ?」

「…分かりました。でも、あと一回だけですよ。」

「出てくる時…多分あの呪文みたいなのが次元間を開ける合図で~

 あの、変な音楽は多分…ジャニスさんの趣味で~」

「あーそうですね…よくわかりますね…」

「漫画や、アニメなんかが好きなんで…予想ですよ。でもなんで尻もち?」

「…」 「ジャニスさん、約束!」

「あ…あれは、いつも小さめに開けてお尻が嵌まるんで…思いっきり大きくしたら

 するっと下に落ちちゃって…」

「うわー、ドジですねー。」

 顔を真っ赤にして、僕の方をジャニスさんが見降ろした。

 …いいよ、もう、選択肢ってのを聞こうかな…


「選択肢ってのはなんですか…」僕は腹をくくった。

 ジャニスさんが、一歩大きく後ろに下がって膝をついた。

 低身長の僕に合わせる為だろう。

「3つあります。

 一つ目は、先ほど言った時間巻き戻しで輪姦されて自殺する選択

 二つ目は、私が肉体と魂を同時回収してしまう選択

      いやな思いはしませんが…死んでしまいます。

      始末は…そうですね失踪ってことになりますか…

 三つ目は、等価交換方式でそこで重ね餅になっている男たちの魂を

      2人抜いて、あなたの好きな体を空けさせてですね

      あなたがそこに入るという選択

      …二人は死にますが…まあいいでしょう。(いいんかい!)

      んで、何も無かった様にあなたの存在はここからは消えます。

      原因不明の失踪ですね。

 さあ、どれでしょう?」

 うわーー、なーわどれも。


「あの~、4番目ありません?」無いと思うけどさ…

「なーです」

 いやあんた…なんで外人なのに…見た目だけか…方言丸出しやね。


「選択時間は3分です。それ以上かけても悩むだけですからね…」

 鬼の様な…まあ似たようなもんか…でも、考えないと…


「一つ目は完全却下だな…何が悲しゅうて…

 死ぬ前に処女を無くせるメリットしかないじゃないの…最悪の形で…


 二つ目は意外と普通かなぁ…清らかな体で…ただ死ぬ。

 でもさ、僕を手篭めにしようとした連中がのほほんと生きてさー不公平

 っていうか、まるっきり死ぬだけの自分…損じゃん!!


 三つ目は復讐も果たせて、私も生き残る…一見いいように見えるけどさー

 そう思って、涎を口元に溢れさせている四人に目をやる。

 ひえええ、あんな馬鹿な奴らの体に…頭はエロ魔人だし…でも…」


 私は無い頭を振り回し続ける…誰がどう考えても三つ目か…

「き…決めました。三つ目ですね…」

 ジャニスさんのカウントダウンを待たないで決めれた…でも…

 ちょっと条件付けようか…大体なんかありそうだしね…


「んで、三番目の等価交換って…なんで二人?

 それと、なんか条件付けれます?僕…こんな野獣嫌だし…」 

 等価交換…なんとかの錬金術師か?二人…納得いかんな~

「えっとですね、この4人短命なんですよ…どんなに条件良くても

 全員、今から20年以上は生きられないんで…自業自得ですけどね

 そこの、金髪の子は薬による肺癌…煙草は一生吸いませんけどね…

 赤い髪の子は、酒の飲みすぎで肝硬変…

 禿げの子は、肉の食いすぎで糖尿、痛風、高血圧…

 そこのやせた子は、女性にこっぴどく騙されて、

 いけない会社のお金を拝借して、渡したはいいけど失踪されて

 山に…言わなくてもいいでしょ…でも、条件は…上司と相談しないと…」


 僕は、重ね餅になっている連中を眺める。

 僕を襲おうとして、ズボンのベルトが全員取れているところで

 ジャニスさんのウルトラ怪力で引き摺られたもんで…

 プリンとした汚いお尻が半分以上丸見えだ…更にその話を聞くと

 みじめだな…としか言えない。

 でも、ジャニスさんが来なけりゃ…僕が慰みもんで…電車でコマ切れ…

 ふ…ふざけんな~。ええい!鬼にでもなったるわ!!


「えっとですね、第四の提案をします…いい?」

「はあ?だーから、三個までって…」

 僕は、にやりと笑った。

 んで、調子に乗ってカッコつけようと思ったけど…

 濡れたパンツからのしずくが、僕の靴まで降りてきたんで諦めて普通に話す。


「さっき、等価交換っていってたじゃないですか…四人分なら…」

「あなた…こ…怖いですね。でも、上司が…」

 その時、大きな鎌から腹に響く金属製の音が…

「あっ、珍しい…この音は、上司からですわ」

 電話かい!

「え?いいんですか?はい、はい、そうですね…やけになられても…はい、はい、」

 ジャニスさんは、右手の鎌を持ってしきりにその鎌にお辞儀をしてる…

 中年のサラリーマン?かいな…

「ふ~、何とか聞いてくれるそうですわよ…但し…」

「分かってますよ…、この体は諦めますよ…でも、おしっこついてますけど…」

「ああ、それなら帰ってあなた自体を丸洗いすればいいですから…」

 洗濯もんみたいに言うな!!


「んで、等価交換で欲しい物ってなんですの?」

「んとですね…今回の事で醜い男は本当に嫌気がさしたんで…

 んで、また女の子がいいです…あと、できれば美人で可愛い…

 身長160センチは欲しいな…

 ジャニスさん程じゃなくていいから、ピッチピッチボインボインみたいな…

 あ!死神と取引するんで…嵌められたらいやなんで

 日本人ですよ!!他の国の人はいや!

 後は、誓約書ですね…80まで生きて幸せに暮らせる保証を…」


 ジャニスさんが舌打ちを聞こえないぐらい小さくした。


「よくもまー、こんな短時間にモリモリ入れ込みますね~

 大体。こんなゴブリンみたいな連中から…美人って…」


 そうは言ったものの…他に手が無いのか、ジャニスさんはため息をついた。

 僕は知っている。

 この手のため息は、”やってられるか!!”って時のだろうな…


「それじゃあ、まーたく信用の無い私たち死神…じゃないけどの能力で

 先に、あなたが入る体を作ります。

 っと、その前にエネルギー補充ですわ!!」


 ジャニスさんは、重ね餅になっている男たちの傍に近寄っていく。


「て…天使?」 一人が目を覚ましそうだ…

 ずうわーねん!!むちむちボインボインの死神さんだよ…


「んんーん、ゴブリンも驚く下品顔…知性のかけらも無い頭…お…美味しそう」


 いや、あんた食べるんかい!

 ジャニスさんは、鎌を4回頭の上で振った。

 呟いていて男の首も落ち、全体から白く輝く煙が立ち上がった。

 その煙は…すべてジャニスさんの体に入って行った。


「かあああ!お…おいしいい。超馬鹿の悪人の魂って本当においしい!」

 うわっ、怖っ。

 食事?が終わったようなので、くるっとスキップしそうなほど上機嫌で

 ジャニスさんが戻ってきた。


「えっと、本当に食べたの?」


「まさかー、私の体内で一時保管よ!あとで、業務報告書と一緒に提出ね…」


 そ…それにしては、上機嫌じゃ…


「食べれないけど、味や満腹感があるのよ…不思議だけどね。

 食事は、普通にとるわよ。

 昨日ご飯は、サバの味噌煮と餃子かな…ああ、後で食べたドーナッツも…」

 うえええ、食い合わせ最悪…でも、人間と同じとこあるんだ…


「それじゃあ、おなかもいっぱい力もいっぱい!やりますか!」

 そう言うと、何やら呪文を唱えだした…


 アータカイ、シャーイカ、ナートク、ビーニナ、ル、ドナーイ、…

 イントネーションが、ジャパニーズイングリッシュやね、

 重ね餅の男たちから、光の筋が流れてきて、

 なにも無い空間に、ゆっくりと何かが固まっていく。

 その間、男たちの体が、崩れながら徐々に小さくなっていく…奇跡だね…


「はーはー、できましたわ」


 ジャニスさんの声があたりに響いた。その間わずか3分… ラーメンか!

 重ね餅は…既にどこにも存在していない…

 ただ、ジャニスさんの前に…凄い美人が…いい…これなら我慢する!

 美貌は正直、ジャニスさんより劣るけど…十分

 製作者が、自分より美しいものなんか作る訳ないもん!女だし…

 んで、体の方も…

 ピッチピッチボインボイン…スタイルいいわ。

 真っ裸だけどね…すやすや寝息立てて横になってる。


「こ…これでいいですわね…。」

 いや、ここは慎重に…相手は死神…もどきらしいけど。

「えっと、最後の質問いいですか?腹くくったんで…逃げませんから」

「そ…そう?ほんとに時間ありませんから…最後ですわよ…」

「馬鹿たちは全員失踪で…僕はどういう扱いになります?」

「何も…、今までと変わりありませんよ?」

「ええと…」

 いや、そうじゃなくてさ…

「いやー、ははは、最後でしたわね…。もう時間が無いんで行きますわ…

 今日は、上司があなたの体を連れてくるならってことで帰りは

 この鎌が能力使って、帰らせてもらえるんですわ…んでぇ…

 ご褒美に、長めの有休と一時金…

 久しぶりに、ゆっくり温泉にでも入りますか…

 それじゃあ、ありがとうございました…体を入れ替えますよ。

 目が覚めたら…終わりですから…

 あー、そうだ…誓約書ですがぁー紙で残すわけにもいかないんで、

 あなたの、意識に埋め込みましたわ!

 更に、一つ言いますが…人を嵌めるのは悪魔ですよ!!

 死神じゃありません!!

 それじゃあこれで…本当にサヨナラです!!

 アータデン、シャー…」


 チョイ、起きたら服どーすんの?

 僕の意識は、そんな馬鹿な一言を最後に無くなった。




「えっ、何?」

 僕は、旧校舎の裏から聞こえる下品な笑い声を気にして

 今は、取り壊しの為に張ってあるロープをかいくぐり、

 校舎の角を曲がって、顔をのぞかせた…

 

 そこには誰もいない…ってかいる訳がない…。

 たまたま、用事で授業を抜けただけで…

 こんな時間に、校舎裏でたむろする輩など、うちの学校にはいない。


 おっかしいな~確かに聞こえたんだけど…

 僕は、夢でも見ていたんだろうか?

「まー、いいや。早く家に帰らないと…」

 そう思って、踵を返して帰ろうとしたところ

 ベッチャっと、なんかふんずけた。

「なに?パンツ…」

 手にとって見たら濡れていた。

 地面で濡れたかなと思って顔を近づけたらアンモニア臭が…

「きへえええ、も…漏らしたパンツじゃん!」

 僕は思いっきり、そのパンツをほうり捨てた。


「げええ、バッチい…」

 しょうがない…手でも洗うか…

 

 

 ジャー、ゴボゴボ

 僕は、汚れた手の汚れをを近くのトイレで洗い流した。

 ふと、鏡を見る…

「んん~ん、相変わらずいい女!!

 ピッチピッチボインボインで、どんな男もイチコロよ!!」

 と、馬鹿な独り言を鏡に向かって僕は親指を立ててウインクする。

 

 親からもらった、この美貌!スタイル!

 80までは、幸せに生きていけるわ…あれ?なんで…

 普通なら死ぬまででしょ?思うの勝手だし…


 まーいいか!


 満面の笑みを浮かべて、僕はトイレを後にした。


 

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