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灯の在り処。  作者: 咲留
目を閉じたらあら不思議!
9/19

9

「落ち武‥じゃなくて、あのー今って何年ですかね?」



今は平成。だから平成と答えるのが当たり前。

なのに落ち武者Bは、首を傾げて言った。



「文久三年」


「‥‥‥はい?」


「だから、文久三年だ」


「‥‥‥‥‥はひ?」


「だから、文久三って何泣いてるんだ!?」



文久三年って‥いつですか。

夢なら早く覚めてくれぇぇぇ!!!


まさか、本当に江戸時代にタイムスリップしてきた?

あの時、私が安藤早太郎に会いたいって思ったから?



「全っ然理解できなぶっ!?」



私が構わず泣き叫ぼうとすれば、グシャッと何かが顔に当てられた。

それに触れてみれば、ハンカチではなく‥懐紙?

平成の時代でハンカチ代わりに懐紙持つ人なんていないと思う。


ということは‥本当に?



「‥土方さん、とりあえず話は屯所で聞きましょう」


「拉致があかねえからな。女、殺したりはしねえから、とりあえず立て」



立て?

立つって一体どうやるんだっけ?

立ってみようとするけど、どうやら腰が抜けたようで立てない。



「腰が抜けて立てない‥」



知らない地に一人。

落ち武者AとBを幽霊と思い込み、時代は平成でないとわかり。

今だに信じられないけど、どうやらタイムスリップしたみたいで。


そりゃ腰も抜けるわ!!



「よし、おぶってやれ」


「‥‥俺ですか?」


「他に誰がいる」



落ち武者Bに言われ、落ち武者Aが背中を向けて私の前にしゃがみ込む。

最早行き場はここしかないと思った私は、落ち武者Aに体を預けることにした。

小さな舌打ちが聞こえたけど気のせいだよね幻聴だよね!!



「いきなり土方さんが付き合えなんて言うからついて来てみてば‥なんですかこれ」


「いいじゃねえか、野良猫でも拾ったと思えば」



落ち武者Bこと土方という人は、私を猫扱いしやがった。

でも猫‥可愛いからいっか。


…あれ?

落ち武者Bは土方?浅葱色の羽織、新選組‥って

つまり 土 方 歳 三 ! ?


おお‥見たことがあるような顔だと思ったら、貴方様が土方歳三様でしたか。

落ち武者Bとか言ってごめんなさぃぃぃい!!


じゃあ、今私をおぶってくれている口の悪い落ち武者Aは?


まず近藤勇って可能性はない。

話し方的に、土方歳三よりも立場が下なんだと思う。

年齢も、見た感じ土方歳三よりは低い。


色々考えるべき事はあるのだろうけど…。


目を閉じて見えたのは、直哉の顔と結衣の顔と美幸の顔。

それから、いつでもどんな私でも見捨てずに受け入れてくれた…おばあちゃん。


直哉と結衣は、どうしているだろう。

私がいなくなって、大騒ぎしているかな?


美幸。きっと美幸なら、この状況喜んだかもしれないね。

でも、いざ来てみると恐怖と不安に押し潰されそうだよ。


おばあちゃん、おばあちゃん――…。

これは夢だよって、言って。

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