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「‥‥‥‥え?」
しばらくして、恐る恐る固く閉じられた瞼を開けると、私は自分の目を疑った。
たくさんあった屋台は一つもなく、代わりにあるのは古びた‥というより時代劇でよくあるような建物。
数え切れないほどのたくさんの人がいたはずなのに、一人もいやしない。
直哉も‥‥いない。
「えっえっ何このプレイィィィ!?放置プレイ!?私だけ残してみんな先に帰ったのか!?え、さっきの一瞬で!!?」
私の頭はパニックを起こす!
空を見てもただ星がキラキラと輝いているだけで、花火なんて上がってない。
ていうかここどこ!!
全然知らないところなんだけど。…いや、私の記憶がおかしくなったのかな?
誰もいない。光もない。月明かりと星で、少し周りが見えるだけ。
ま、まじでどうなってるの…?
「誰だ、そこにいるのは」
後ろから天の声聞こえたぁぁぁぁぁあ!!
よかった、ちゃんと人いたんだ。
私は泣きそうになりながら振り返ると、見えたのはゆらゆらと宙を舞う二つの明かり。
あれはもしや‥俗に言う
ひ と だ ま ! ?
「ぎっぎぃやぁぁぁぁぁぁ!!幽霊ぃぃぃ!?悪霊退散悪霊退散悪霊退散成仏しろやぁぁきぃえええい!!」
別に幽霊は怖くない。ホラー映画だって好き。
でも‥でも今のこの状況においては、恐すぎるんだよぉぉ!!!
手を合わせ成仏してくれと必死に願うが、ひとだまは消えるどころか近づいてくる。
え、終了?私の人生これにて終了ってか?
昔喧嘩で負かした奴らの生き霊ってやつが迎えにきたの?
「いやぁぁぁぁ!来ないで助けてぇぇぇ!!」
「叫ばないでよ。近所迷惑だから」
「ひとだま殺すぅぅぅ!‥‥って、あれ?」
誰かに肩を叩かれ上を見上げれば、そこにはひとだまを連れた人間がいた。
よく見るとそれはひとだまではなく、提灯だった。
その明かりのおかげで、私の肩を叩いた人の姿を確認できた。
‥‥‥‥が、
「着物、侍‥?おっ落ち武者の幽霊ぃぃぃ!?南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏‥‥‥ひぃい!?」
ギラリと怪しく光るのは‥落ち武者の刀ぁぁぁ!?
その刀は私に向けられていて、もう気絶寸前。
目を開けば意味のわからない場所にいて、やっと人に出会えたと思ったら落ち武者の幽霊で‥。
「刀を向けるな。そいつはどう見ても女だろう」
「わかってます。でも人を幽霊扱いしたから思わず」
あらもう一人いらっしゃるのね。もう驚きすぎて、何にも驚かないよ‥。
刀を向けた幽霊を落ち武者Aとしよう。
で、止めに入ってくれた幽霊を落ち武者Bとしよう。