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「もしもさ、もしもだけど‥」
私は直哉に話しかけるというより、自分自身に話しかけるように言い始める。
「タイムスリップが出来るとしたらさ」
隣を歩く直哉が、不思議そうに私を見る。不思議そうというか、呆れ顔というか‥。
だけど、私は構わず続ける。
「私、安藤早太郎に会ってみたい」
興味と少しの好奇心。
それは叶うはずのない欲を生み出した。
直哉は盛大にため息を吐いた。
「はあ?アホか。姉貴‥いくら彼氏出来ないからって、現実逃避は止めてくれよ」
「げっ!?現実逃避してるのかな私‥‥」
「お、もう花火上がってんじゃん。もう八時なのか」
私の事を無視して、直哉は空を見上げた。
そんな直哉につられて、私も空を見上げる。
まだ始まったばかりなので、小さな色とりどりの花火が上がっている。
歩いていた人たちも立ち止まって見上げていた。
「…は~~綺麗…」
ボソッと呟くと、ヒュルル‥と一つ花火が上がる。
次はどんな花火だろう?と期待していると、パッと闇に光が――‥。
ん?あれ?なんか眩しすぎるような気がするんだけど。まだメインの花火にしては、時間的に早いはず‥。
ていうか、一面真っ暗だったのに真っ白なんだけど!?
賑やかだった空気も、花火に感動する声も、何もかも聞こえない。
そうだ!直哉、直哉は?
辺りを見回しても、隣にいたはずの直哉の姿はどこにもない。
というか、人の姿がない…眩しすぎて見えなくなった?
目を開いているのが辛く、私は固く閉じて光が収まるのを待つことにした。