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無事に卵はゲットできた。
あとはゆっくり買い物を…と思ったけれど、そんな時間はなかった。
弟と妹がおなかをすかせて待っているだろう。
私はパパッと買い物を済ませ、帰路についた。
――
「ただい」
「「遅い」」
家に入った途端、二つの声が綺麗に重なる。
腕を組んで私を見る弟、直哉。
腰に手を当て私を見る妹、結衣。
「誠にすいません」
不良と言われた安藤結菜も、弟と妹にはこんな扱いなのさ!
二人の目に若干傷つきつつ台所に向かうと‥あれれ、何故か結衣が浴衣を羽織っている。
「なに?コスプレ?」
「は?ばっかじゃないの?今日花火大会があるの!着付けやって~!!
待ち合わせに遅れちゃう!」
そっか、今日花火大会なんてあったんだ…。行くような恋人もいないしそういうイベントごとに疎い私。
帯を拾い、結衣の着付けを始める。
なるほどなぁ~それで結衣、可愛くメイクもしてお花の髪飾りをつけて……ん?
「ちなみに誰と行くの?」
「え!!?…か、彼氏だけど」
「え」
「え?」
はあああ!?あなたまだ中学一年生ですよね!?
今はもう中学生で彼氏が出来ちゃうんですか?姉にはいないのに妹にはいるってどういうことですか?
いやまあ結衣は私と違って可愛らしいし…そうか、いてもおかしくないよな。
ちなみに直哉は背が高く、髪の毛は茶髪で少し長め。普通にイケメン。
部活でバスケをやっているからモテる‥らしい。
どうして血の繋がった姉弟なのに、こうも似てないのだろうか。
「なんでぇぇぇぇ!!」
「もー!うるさい!」
あまりの悔しさに叫べば、結衣に怒られる。
「ごめんなさい。いやね?あまりにも直哉はイケメンだし結衣は可愛いで羨ましいなあって思って。なんで私だけぇぇぇ!!直哉の顔ぎっちょんぎっちょんにしてやるぅぅぅぅ!!!」
「なんで俺だけなんだよ!」
台所から直哉のツッコミが聞こえてくる。どうやら自主的に食材を冷蔵庫に入れてくれているようだった。
ふんだ!どうせ直哉だって彼女とかと夏祭り行くんでしょ!
半泣きになりながら帯を締め、慎重にリボンを作る。
結衣の着付けも何度やらされたことか。
「はい、できたよ」
「わーいありがとう!結菜姉って意外と器用なんだよね~。
じゃあいってきます!」
パタパタと可愛らしく小走りをして玄関に向かう結衣。
ああいう感じにすれば私もモテる…いやただ気持ち悪いだけかな。