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「そうそう~ほら、やっぱり新選組といえば近藤!土方!沖田!っていうイメージが普通じゃん?
たまには史料にはほとんど書かれていない方に焦点をあてるのもいいよなあって思って!」
「なるほどね。亡くなった人はさすがにわかんないな」
私の言葉に美幸が目を光らせる。
あ、しまった。やらかした。
「では教えましょ~!
名前は新田革左衛門さん、奥沢栄助さん…」
池田屋事件でいったい何人の方が亡くなったのかは知らないけれど…どうしよう何十人もいたら。
永遠に終わらなくなっちゃう気がするんだけど!?
「あとは、安藤早太郎さんだよ!」
「え?」
「へ?なに?」
私の間抜けな声に美幸は首をかしげた。
今私は、亡くなった方が少ないことに驚いて声を出したのではない。
最後に出た名前に、無意識に反応したのだ。
もちろん、新選組に詳しくない私は三人全員の名前を知っているわけがなかった。
なのになぜ…安藤早太郎という名前だけに反応したんだろう?
「安藤…早太郎」
確認の為に名前を呼んでみる。
「安藤早太郎さんがどうかしたの?
…あ~名字が同じだからちょっと気になっちゃったとか!?」
「…かなあ?」
そう…かもしれない。
私の名字も安藤だし。そこに反応しちゃったのかも。
まあ、あんまり気にしなくていいかな。気にしすぎると美幸のスイッチが入って止まらなくなっちゃうもんね。
ミルクティーを一口飲んで落ち着く。
ふと美幸のところに置かれたミルクティーを見た。全然減っていない。
休む間もなくしゃべっているからだ。
楽しそうに生き生きと新選組を語る美幸を見て笑う。
なんてことない平凡な日々が、とても幸せに感じる。
今目の前にいる彼女と出会わなければ、こんな気持ちになることなんてなかったかもしれない。