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爆笑する永倉さんを、原田さんは叫びながら追いかけた。
そして二人は屋敷に入り、姿を消していったとさ。
ふう、私は助かったぜ。
「人を盾にするの、止めてもらえないっすかね?」
そう平助さんが呆れ気味に言う。
はっはっは!
実は私が原田さんに追いかけられなかった理由。
それは原田さんが開眼した瞬間、平助さんの後ろに隠れたからさ!
「行っちゃったっすね、あの二人」
「まあいいんじゃない?さ、猫さん続きやろ」
勝負する空気じゃなくなったから、こっそりと平助さんに竹刀返そうと思ったら…まだやるの!?
さっき着物のせいでこけそうになったの見てたよね?それでもやるの!?
「行くよーっそーれ!」
「そーれ!じゃなぁぁぁい!!」
にこにこ笑顔の沖田さんからは、何も読み取れない。
なんで私に突然勝負を挑むのか、なんで止めてくれないのか。
……そういえばさっき、原田さんに変なこと言ったよね?
“僕の猫にするんですから”
つまりそれって…。
「躾ぇぇぇぇ!?」
沖田さんの竹刀を避けて避けて避けては考え、辿り着いた結論が躾。
野良猫…猫は警戒心が強くて自由奔放で、中々人に懐かない。
もしも沖田さんが本当に私を猫だと思い込んでいるのなら、この意味のわからない勝負は躾。
自分は私よりも強いんだってことを示すつもりなんだ!
「誰かの下になんてつきたくなぃぃぃ!!!」
安藤結菜、反撃開始!女がなんだ、着物がなんだ!
動きにくいからめくっちゃうぞ!
着物をめくれば、平助さんが慌てて目を隠して私に注意してくる。
でもそんなの関係ねぇ!
と一昔流行った、水着一丁でいつも寒そうだなーと思っていた芸人さんの台詞が頭に浮かび…。
沖田さんに攻撃されまいと、とにかく竹刀をめちゃくちゃに振りまくる。
「もー猫さんは本当に懐いてくれないんだから、やだなあ」
めちゃくちゃに振るう私の竹刀を、沖田さんは簡単に避けてしまう。
おお…?何だかまた沖田さんの目がマジになってるぞ?
ブラック沖田再び降臨んん!?
竹刀を振るうのを止め、じりじりと沖田さんとの間を広げる。
だって私の目がおかしいのか、沖田さんから黒いオーラみたいなのが見えてるんだけどぉぉぉ!?
へっ平助さんは何処だ!
また平助さんに盾になってもらおう…って平助さぁぁぁん!?
なんで私から遠ざかってんの!?
「ほーらよそ見してたら当たるよー!」
「のぉぉぉぉう!?」
沖田さんの容赦ない一振りが私を襲うぅぅ!!
もう勝負とかそういう問題じゃなくね!?ただ私を玩具にしてるだけだよね!?
にこにこ笑顔がまた怖いんだけどぉぉぉ!!