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「こっここここ近藤いいい勇ぃぃぃぃ…さん!?」
何だか若い感じがするけれど、間違いなく写真で見たことがある近藤勇だ。
顎が外れそうなくらいに口を開き、恐らく…いや、確実に近藤勇であろう人を見る。
「なんだ?私の名を知っているのか?」
しまったぁぁぁぁ!!
黙っとけばいいのに…あまりの衝撃で思わず声に出しちゃった!
ウルトラスーパー怪しい女だよね!私!
あわあわしながら土方さんの方を見ると、私の頭をポンポンと撫でてから代弁してくれた。
「俺がこの野良猫にあんたの名前を教えてやったんだ」
神様仏様土方歳三様ぁぁぁ!!
本当なら土方さんだって不思議に思っているはずなのに、フォローいれてくれたよぉぉぉ!!!
って…やっぱり土方さん、何か知ってるよね?ね?
怪しいから斬ってやるー
きゃーやめてぇー
的な展開になってもおかしくないはずなのに!
「そうかい。歳は仕事が速いな。まあ座りなさい」
「しっ失礼します……」
土方さんの言葉は簡単に信じるようで、近藤さんは私を疑わなかった。
強い信頼関係があるんだなあ。きっと。
私は近藤さんの前に座り、私の隣に土方さんが胡座をかいた。
「歳には猫と呼ばれているようだが、君は猫という名前なのか?」
「いえ!私は安藤結菜と申します!猫っていうのは何故か土方さんがそう呼ぶんです」
ふう…危ない危ない。
猫って名前のまま定着されたら困るからね!
「字はどう書くんだ?」
「えっと‥結ぶに菜っぱの菜で、結菜です」
「ほう。可愛らしい名前だな」
近藤さんが柔らかく笑うと、胸がほかほかする。
自分の名前を褒められたら、誰だって嬉しいものだ。
新選組の一番上の立場の人がこんなに温かい人ってことは、やっぱり新選組はただの人斬り集団とは違う…のかな?
もしも私が携帯を持っていたら、美幸に写メ送ってあげたい。
美幸は近藤勇が大好きだから。
本当に後悔している。
携帯や財布を入れた鞄は、光が強くて驚いていた時に落としてしまった。
だから今の私は何も持っていないのだ。
携帯…平成っ子、携帯依存症に近い私が、携帯なしで生活できるのか!?
は!もうそんなことはどうでもいい!
信じ難いけどこの時代に来ちゃった今、携帯という存在を頭の中から抹消しよう。
「あのっ!安藤早ぐべぇぇぇ!?」
女として終わってるような悲鳴をあげながら、私は額を畳に打ち付けた。
突然後ろから誰かが飛び付いてきたんだけどぉぉ!?