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スパーンッと勢いよく障子が開くと、見覚えのある顔が一つ。
それからもう二つの顔は、多分沖田さんが言っていた島田って人と平助って人だ。
「目覚めの気分はどうだ?」
一番に土方さんが私の前に座り、私をじっと見る。
鬼の副長と呼ばれ恐れられていたということを知っていた私は、畏怖した。
なんせ刀を所持しているから。
でも助けられたのも事実。
緊張しながらも、私は口を開いた。
「目覚めはよくないですけど、ありがとうございまぁぁぁ!?」
ありがとうございましたと言い終える前に、土方さんの手が私の頭をわしゃわしゃ!
目の前にはとんでもない笑顔な土方さんんん!?
「素直じゃねえな!あんだけ寝てたんだからいいに決まってんだろ?
ああ野良猫だから警戒してんだなあ」
だっ誰ぇぇぇぇぇぇ!?
私の目の前にいるこの人は一体誰なんだぁぁ!?
しかも猫?私猫に化けてんの?
‥いやいや、しっかり人間の姿をしている。
「ちょっと土方さん。土方さんのせいで固まってますよ?」
「ああ?こうやって頭撫でてりゃそのうち警戒しなくなるんだよ」
「ちょっ野良猫じゃねぇぇぇ!!」
髪がボサボサになりすぎて前が見えなくなり、ついに私はツッコミを入れてしまった。
「ほら、警戒心なくなっただろ?」
なんたるポジティブシンキング!
土方さんはけらけら笑って、私の頭から手を離す。
他の三人は苦笑している。
そりゃあこんな土方さんには誰だって引くだろう。本当に鬼の副長なんて呼ばれていたんだろうかと疑問に感じる。
「それにしても不思議な格好してますよね。女子がそんなに露出していては、危ないですよ」
体が大きく、がっしりした体格の人が言う。
‥そんなに露出しているつもりはない。でも、この時代からしたらそう思われるんだ。
って、この人は誰だろう?島田?平助?
「忘れていた。島田、八木さんにこいつの着物頼んでおいたから、貰ってきてくれ」
「あ、そうなんですか。わかりました」
がっしりした体格は島田さんか。
じゃあもう一人、沖田さんと同い年くらいに見えるのが平助さんか。
少しつりあがっている目が、何となく悪戯が好きそうな感じに見える。
「平助、安藤はどこにいる?」
「へ?知らないっすよー。朝餉以降見てないっすから」
ん?あ、安藤…?
安藤というのはもしかしてもしかしなくても…安藤早太郎?
「あっ私見ましたよ。佐々木さんに連れられてどこかへ行きました」
穏やかというか…今とてものほほんとした雰囲気に感じられる。
たくさん聞きたいことはあるけれど、油断しちゃいけない。
殺される可能性だってきっとある。