グロリオサ 3
電気ネズミが多く生息する狩場に来ると、なぜか山大蜥蜴が沢山いた。
大蜥蜴と言っても花人から見た尺度であり、人から見たらイグアナサイズでしょう。
まあ、この近隣ではこの山大蜥蜴が一番大きいから間違ってはいないか。
「大繁殖期かしら?」
と、カナコがポツリと漏らした。
「なによ、その大繁殖期って?」
この世界のことを知るために園長からいろいろ聞いたけど、大繁殖期なんて出てこなかったわよ。誰から聞いたのよ?
「ジェニー様よ」
あ、ああ。翠水仙属のジェニーさんね。確かあの人も外から来た人だっけ。何十年放浪していたそうだから知ってても不思議じゃないか。
「山鬼や山豚と言った魔物は、何十年か何百年に一回、大繁殖を起こすんだってさ。で、大繁殖期が起こる前は山の生き物が安全な場所を求めて集まるんだってさ」
へ~。さすがファンタジーな世界。そんなことがあるんだ~。
それはおもしろいことを聞いた。そんな大イベントがあるなら参加せねばゲーマーの名が廃るわ。
「でも、その前に山大蜥蜴を狩らなくちゃね」
逃げて来たところ悪いけど、電気ネズミも山大蜥蜴も花人にとっては天敵。見逃す慈悲などある訳もないわ。
「カナコ。殺るわよ」
白銀の杖を構え、カナコに用意をするように促した。
「わかったわ」
背中に回していたCⅡナインを腕に構え、安全装置を解除した。
CⅡナインは、対モンスター用に開発された小銃で、G型炸裂弾を主装とするものだ。ゲームの中では巨大蟲を殺すために開発された設定よ。
まあ、花人サイズなのでどこまで山大蜥蜴に通用するかはわからないが、あたしがフォローすれば大丈夫でしょう。後衛は何度もしてるしね。
「チャコ。いつでもいいわよ」
「んじゃ、まず、あたしが山大蜥蜴の動きを鈍らせる。カナコは目の前の標的から順に確実に倒して行って。あと、フォローすけど、自分でも周りに気をつけなさいよね」
山大蜥蜴はそんなに俊敏な生き物ではないが、何事も油断は禁物。真剣にプレーしてこそゲーマーよ。
「マダイン!」
白銀の杖を天に向け、中級吹雪魔法を発動させた。
杖から吹き出される吹雪に世界が白銀色に染められる。寒っ!
「チャコ、寒いっ!」
忘れてた。花人にとって寒さは天敵。休眠状態を引き起こすものでした。火系はまずいと思って氷系にしたのが失敗だったわ。まあ、これなら多少、火系魔法を使っても山火事にはならんでしょう。
「カナコはそのまま行きなさい。動けば温かくなるわ」
花人も代謝機能はある。血てばない血が流れている。身も心にも熱はある。ならば、燃え上がらせなさい。その命を!
「カイン!」
指先から初級火魔法たる火の玉を山大蜥蜴へと放った。
野球のボールを投げるくらいのスピードで火の玉が飛び、寒さで動けないでいる山大蜥蜴へと直撃したーーその瞬間、大炎上した。
「へ?」
余りのことに茫然とするあたし。な、なにが起こってるの?
「アホチャコ、山を燃やす気か!」
いや、そんな気はサラサラありませんがな。ほんと、どう言うことよ……?
なにがなんだかんからないけど、もう一度初級火魔法カインを放ってみる。が、やはり大炎上。最初に銀世界にしてなければカナコの言う通り山を燃やしているところだ。
なんか、これはルカーインではない。カインだ、的な状況に似てるが、謎が解けるまでは封印した方がよさげのようね。ここは、土系魔法のストーンアローを使いましょう。
「ストーンアロー!」
怖いのでカナコを盾にして放ってみた。
二センチくらいのストーンアローが山大蜥蜴へと着弾。これと言った参事はなかった。
……指輪系魔法は、この身長にあった威力なのかしら……?
攻撃力一三〇の勇者の剣を使ってたからわからなかったけど、あたしの力はこの世界では通常より高い、ってこと、なの?
「チャコ、弾切れ! 交代して!」
もう切らしたの? やはり現実世界ではガンナーは不遇職ね。まあ、もうちょっと仲間がいたらマシになるんでしょうげどさ。
でもまあ、こう言う不利もまた楽しい、よ。ゲームをしている実感が出る。
残機なしの死んだら終わりの世界だけど、だからこそ楽しいんじゃない。
ゲームでは味わえないスリルと興奮。メッチャ楽しいわ!
「補給終わり。交代よ!」
「了解、相棒!」
一人のゲームも楽しい。けど、二人のゲームもまた楽しい。もっともっと楽しいゲームをあたしに寄こしなさい。全てをクリアして上げるから!
「さあ、ゲーマー戦士、チャコ様が蹂躙してあげるわ 。死にさらせ、ゴミ虫どもが!」
ヌハハハ! 超楽しいぃ~っ!
休みの日は書くモチベーションが上がらない。だらける。やはりストレスがないと集中できないな……。




