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グロリオサ 1

 わたしは花。花乙女。


 地味で名もない花だけど、心の輝きはどんな花にも負けたりはしない。


 わたしは、ジョセフィーヌ・ラ・フランシェスカ。名前は華やかでゴージャスだけど、長いのでチャコでいいわ。


「……それ、毎回やらないとダメなの……?」


 なにやら心の中で繰り広げられる華麗なる紹介に突っ込みが入りましたが、気にしたら負け。地味な花は地味に打たれ強いのよ。


「ーーと言うことで、そろそろ冒険に出ようと思うのよね」


「なにがと言う訳か知らないけど、いいんじゃない。電気ネズミ狩るの飽きたし」


 あたしの流れについてきたのは相棒のカナコ。なにげに日本風の名前だけど、そこは気にしちゃアカンがな。たまたま偶然似ちゃっただけよ。うん。


「で、いつ出るの?」


「これから直ぐでいいんじゃね?」


「なんで疑問系なのよ?」


 大自然で生きてる精霊種が疑問系とか知ってる謎を求めるほど暇じゃないので軽く右から左に流してっと。まあ、聞いたのはカナコの用意はどうなのかを聞いたのよ。


「だったらそう言いなさいよ。あんたの説明はわかりにくいんだこらさ」


 そこは察してちょうだい。あたしもファンタジーの住人に上手く説明できないからさ。


「で、あんたは直ぐに出れるの?」


「いつでも出れるわよ。そんな荷物あるわけないんだし」


 まあ、あたしたち花人は水と光があれば生きていけるし、毎日野宿しているようなもの。思ったその時が出発か。


「出るのはいつでも構わないけど、どこに行くのよ?」


「あたしたちが行くところが目的地よ!」


「……つまり、行き当たりばったりってことなのね……」


 ため息をつくカナコさん。あなた最近、人間味が出てきたよね。もしかしてあなたも転生者ですか?


「そんなカナコさんにこんな言葉を贈りましょう。ドントウォーリビーハッピー、だよ☆」


 ニカッと笑ってみせた。


「さて。出発するなら皆に挨拶してこなくちゃね」


 サラリと流しちゃてくれる我が相棒。寂しいじゃない……。


 なんてめげる乙女じゃないのであたしも出発の挨拶にでかけた。


 わたしたちが拠点しているバンガロー(ゲームのアイテムです)は、花園から少し離れた大白樺の枝に括りつけている。


 前は石の下に穴を掘って暮らしていたのだけれど、カナコのバカが覚えたての爆発魔法を使って破壊してしまった。


 まあ、魔法の種を食べさせたあたしにも責任があるので強くは非難できないんだけどね。


 いやしかし、花人相手にゲームのアイテムが効くとは思わなかったわ~。ファンタジーってだけで互換性があるのかしらね?


 大白樺の枝から「ほい」と飛び降りる。


 軽い花人とは言え、さすがに二十メートルの高さから降りたら怪我を負う。


 あたしたちは花で精霊だけど人でもある。なので骨格はちゃんとあり、強い衝撃を受けたら骨が折れたりもする。斬られたら血(透明ですがね)も出るのよ。


 風のマントで軽やかに着地する。


「まずは園長のところかしらね」


 園長とはなにか腰砕けな響きだけど、花園の長なのだから仕方がない。多種多様な花人がいる中で族長って呼ぶのもなんか違うし。と言うか、あたしが勝手に園長と呼んでるだけなんですけどね。


 アリア・ハーンの花園は、野球場一つ分の広さがあり、世界樹の下に築かれている。


 まあ、世界樹と言っても若木で、そう高くもない。四十メートルあるかないかでしょう。年月はわからないわ。ここじゃ時間って概念もないからね。


「しかし、花園も変わったものよね」


 あたしが生まれた頃は、ここは花畑程度だったなに、道とか建物とかできていた。そこに暮らす花人たちの衣装も華やかで、メルヘンな世界に変わっていた。


「……あたしは今、歴史の転換期を見ている……」


 とか言ってみるも、なんの感動も生まれてこない。って言うか、ゲームを愛してきた者に取っては珍しくもないわ。それどころかクオリティーの低さに憤慨しそうよ。


「あら、チャコ。久しぶりね」


 と、さらにゲバーーではなく華やかになった薔薇属の幼馴染みのエリザネスが現れた。


「あんた、また派手になってるわね」


 ドレスを着た薔薇ってのもなんだけど、そのデザインはどこの異世界から持ってきたのよ?


「ふふ。綺麗でしょう。わたしが考えたのよ」


 どうやら異世界の知識を脳内召喚したようです。お前も転生者かっ!?


「そ、そう。いいんじゃない」


 美しく咲く(?)ことが花人の本能(?)。散るそのときまで咲き乱れてちょうだいな。


「ふふ。ありがとう。今度コンテストがあるから観に来てね~」


 と去って行くエリザベスさん。


「……コンテスト……?」


 ってなんのだよ! って言うか、誰だよ、花人にコンテストとか教えたヤツは? あ、いや、近くにいる転生者か。


「まったく、変な文明開化を咲かしてくれてんな。ここに来る転生者は」


 と言うか、今さらだけど、よく花園に来れるわね? ここ、不可思議パワーで外界から遮断されてるはずなんだけど。


 なんて言ってみるも花人の未来がどうなろうと知ったこっちゃないんだから好きに文明開化してください、だ。


「あ、園長。起きてる~?」


 どうでもいいこと考えてたら世界樹の下に到着。大きな岩に張り付くように咲く、緑色のラフレシアっぽいものに声をかけた。


 アリア・ハーンの花園の園長、アリウルム様は、園長二代目で、ここでは珍しい男型の花人だ。


 ラフレシアっぽいものが蠢き、丸い茎がトランスフォーム。渋いおじ様へとなった。


 ……何度見ても物理法則を無視してるわよね……。


 まあ、魔法法則で生きてる身。突っ込むだけ無駄なんだけどね。


「チャコか。どうした?」


 ちなみにだけど、わたしの名付け親はこの園長で、名は勘でつけているらしいわ。あ、ジョセフィーヌの方だからね。チャコは自分でつけたのよ。


 おほんと咳払いを一つして園長を見た。


「あたし冒険に出ます!」

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