- 7 -
「あ、ミスコン始まるんだ」
勢いよく立ち上がると、わざと声をはしゃがせて中庭をのぞく。上から見ると、テントの内側に出待ちをしている人たちが見えた。みんな、それぞれに着飾っている。へー、男子からなんだ。
ミスコンは、ミス鷹ノ森とミスター鷹ノ森、二つの意味を持つ。
「うちのクラス、法ちゃんと小野君だっけ? いるかな」
「いるいる。あそこ。まだ出番じゃないみたいだけど」
隣に立って同じように覗き込んだ宮本に、こっそりと視線を移す。その顔はいつもの宮本に戻っていた。ほっとする。
何を、言おうとしたの?
まだ、聞きたくない。まだ、こうして隣にいたい。真剣な宮本の顔が、なんだか今は、怖い。
あ、まずい。泣きそう。
「さーて、後輩たちに活をいれにいきますか」
なるべく明るく言って、階段へと向かう。後ろからついてくる宮本の気配がした。
「ん。行くか」
☆
「わあ、みちる、きれいい」
そうして、文化祭最終日。
日が落ちた中庭は、ライトアップされて人が集まり始めていた。これから、生徒会主催のダンスパーティーがあるのだ。ドレスアップあり、仮装ありで、いろんな曲で好きに踊りまくる。有志の参加だけど、生徒のほとんどが参加する、文化祭最大のイベントだ。
私たちのいる女子更衣室も、すでに支度を終えた者、これから支度する者、入り乱れて混雑していた。私たちは、最後の文化祭でもあるし、今年はめっちゃドレスアップすることした。
「ねえ、ほんとに私、大丈夫かなあ」
私も着替えたはいいけど、ひらひらしたスカートに足元が心もとない。
「だいじょおぶよお。みちる、足きれいだから、すっごい似あうう。やっぱり間違ってなかったわあああ」
由加里の目がハートになってる。あー、こうなった由加里は止められないわ。
私が着てるのは、真紅のシフォンミニスカート。ホルタ―ネックで、後ろで大きく結び目を作ってある。由加里はピンクのバルーンドレス。チューブトップが胸の大きい由加里によく似合っている。
「さ、そこ座ってえ。仕上げよ」
そういって由加里は、バニティーボックスをあけた。それでも、一応抵抗はしてみる。
「いいよお。化粧なんて。似合わないって、絶対」
「何言ってるのお。ばっちりきれいにしてあげるからねえ」
ふっふっふとほくそ笑む由加里に、あきらめて用意された椅子にすわる。
「支度、終わった?」
人込みをかき分けて、すでに着替え終わっていた莉奈が私たちのところへやってくる。
莉奈は、濃い青のロングドレス。背中に長めのフリルがついていて、動くたびにふわふわするのがかわいい。そのドレスに合わせて、真っ青なロングのウィッグをつけている。莉奈も由加里にメイクアップされて、息をのむような美人に仕上がっていた。
ちなみに私はショートヘアだけど、メイクする前に由加里に赤いメッシュを入れられていた。莉奈の発案で、3人とも、ドレスに合わせた色に髪を染めているのだ。