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「あ、いた。そろそろ終わる時間だろ。一緒に輪投げいかない?」
……迎えに来てくれたの?
ちょっとだけ、頬が緩む。
「ちょっと待ってて。着替えてくる」
カーテンで仕切られた更衣室に入ると、急いでメイド服を脱ぎにかかる。
あせっているせいか、なかなか着替えが進まない。
「きゃっ……!」
そうこうしているうちに、スカートをひっかけて派手に転んでしまった。
あーあ……
座り込んだまま、ため息をつく。ちょっと、落ち着いたかも。
……なんか、今、宮本の顔見たくないなー。聞いてみようか。彼女とつきあうのか。でも、軽く「うん」って言われたら……私、平気でいられるかな。
「お待たせ」
更衣室をでると、宮本と莉奈が何か話していた。私に気付いて、宮本が振り向く。
「お疲れ。なんかすごい音したけど」
「ほほほ。じゃ、行ってくるね、莉奈」
「ん。こっち終わったら、拓巳と行くね」
ひらひらと手を振る莉奈に手を振りかえして、宮本と教室を出る。
一般公開1日目とあって、学生以外の人の姿も多い。私たちは、人の波をよけながら部室へと向かう。
「倉本ってさ、転校してきた時より、ずいぶんとっつきやすくなったよな」
「何をいまさら。莉奈と、何の話してたの?」
「ん?」
ちらりと私の顔を見て、含み笑いをする。むっ。
「内緒」
「なによ。やらしいっ」
「おま、やらしいって……」
苦笑いしていた宮本が、急にぎょっとした顔になった。と、思ったら、不意に腕をつかまれてものすごい勢いで横にあった階段を駆け上がりだす。
「な、なに?」
「いいからっ」
訳が分からないながら、引っ張られるままについていく。そのまま階段をのぼりきって、屋上に出た。
屋上は一般公開のスペースじゃないし何もイベントをやってないから、誰もいなかった。
「な、なんだったの……」
さすがに、4階分の階段を一気はしんどかった……
「ごめん。ちょっと」
同じ距離を走っても、宮本の方は息もろくに切らしてない。体力の差を感じて、なんかちょっと悔しくなる。ううむ、部をやめてからほとんど走ってないからな。
行儀悪くぺたりと座り込むと、大きく息をついた。はー。
校舎内にかかっているBGMはJpop。あ、この歌知ってる。
10月にしては日差しが暑い日。風が気持ちいい。
「なあ、高瀬」
「んー?」
向こうを向いて立つ宮本の顔は見えない。
「あのさ……俺さ」
「何よ」
そのまま黙ってしまった宮本の背中をじっとみつめる。嫌な感じに、胸が騒ぐ。
何を、言おうとしてるの?
振り向いた宮本の表情に、どきりとした。
見たこともない、真剣な顔。
ううん、どこかで見たような……
ああ。
グラウンドで、一番高いバーを飛び越える時の顔だ。
「俺は……」
「さー!! 今年もやってまいりました! 鷹高恒例、ミスコンの始まりです!」
その時、スピーカーから大音量のMCが聞こえた。すぐ下の中庭で、ミスコンが始まったんだ。