染まる赤
始まったのはいいが・・・どやって動かすの?
このゲームにはコントローラーがない。テレビ画面にはチュートリアルが始まったらしい。
『魂を吹き込んでください・・・たましいを・・』
さっきから耳元のヘッドホンから鬱陶しいくらい訳わからんことを乾いた機械音が聞こえる。
「魂を吹き込むって・・・どうやって・・?」
そのポツリと呟いた声をマイクが拾ったのか、言葉が変わった。
『攻略本、P1023をひらいてください』
言ってなかったが今はリクライニングシートに座っている。これは、小さい頃に誕生日に買ってもらったものだ。その頃は大きかったイスだったけど、今はいい感じにすっぽりとはまっている。
固くもなく、どちらかといえば柔らかい背もたれは僕の背中に吸い付いたように離れない。
そんな感触がとても好きだった。・・・・前振りが長かったかな・・
現在、攻略本は床に置いてある。
わかってもらえぬだろうか。気持ちが良い場所から動きたくないこの気持ち・・・
腕を伸ばしても床には届かないし・・・はぁ、どうしよう。・・・あっ!おしっこ!
用を済ましてから床に落ちてる攻略本を拾う。そしてまた同じようにしてイスに座って、ヘッドホンが言う『P1023』を開いた。
見開きには、『魂注入』と書いてあり。僕は、ぱあっと流して読んだ。
要約はこうだ。
アバターには魂が必要だ。魂がなければ動かないしゲームも始まらない。魂の入れ方はヘッドホンのマイクに向かって一番大切な物事、人などを叫ぶのだそうだ。
まあ、僕は普通に考えて・・・ゲー――――――お、お母さんだろう。
僕は画面に映る、死んだ魚のように光の無い濁った真紅の目を見やり言った。
「んじゃ・・ええ、【お母さん】」
・・・シーンと反応なし。やっぱゲー・・いやいやいや!ぼくはそんな親不孝ものじゃない!
それから僕は何度も「お母さん」「おかん!」「ママ!!」「おふくろ!!!」などと叫んでみたが反応なし。しいて言えばお母さんが五月蝿いと部屋に入ってきたぐらいだ。
ここで言っておこうお母さんは、二十歳の頃僕を生んだので今は30代前半だ。それと決して僕はマザコンじゃないんだからね!
「・・・やっぱりゲームかー好きなものと大切な物は違うと思ったんだけど・・・」
僕はおほん!とわざとらしく咳払いをした。
「【ゲーム】」
そう言った刹那、画面に映る、真っ白の空間に居る、真紅の目に光が満ち燃えるような火色に変わった。
真紅は目をぱちくりと瞬きし、すぅーと息を吸い。吐いた。
「初めまして。マスター」
その声は、設定道理、高くもなくかと言って低くもない透き通るような、アルトボイスだった。
僕はどうしていいか分からず、とりあえず・・・
「・・・え、あの!・・その・・・あっとぅ」
パニクった。コミュ力のなさが悔やまれる!
真紅は、そこに僕がいるかのように、目の前に向かって首をかしげた。
「どうしましたマスター?」
「ま、ますた?・・・」
「はい!マスターです。あなたはボックに魂をくれました。
あの暗い部屋からボックを出してくれました。それに言われたんです。
あなたは神で恩人だと。一生付いて行けと。」
真紅は本当に神を見るような目で笑っていた。顔は作り物の様に整っている。
てか、アバターだから作り物か。
「だ、誰に言われたの」
「マキタって人です」
マキタ、マキタ・・・し、師匠!?
いつもいつも、師匠って言ってるから、すぐ、気づかなかったけどマキタって師匠の名前だったよな・・・?
「・・・そのマキタって人は、ほかに何か言ってなかった?」
真紅はゆっくりと白い地面に正座してゆくりと話し始めた。
下手な文章ですみません