プロローグ
~プロローグ~
「師匠! 師匠!」
僕はいつものように、師匠が住む古びたアパートに足を運び、無断で部屋に侵入した。
「なんだ! どうした? この野朗!?」
いつだって師匠の第一声は、ビックリマークとクエスチョンの混じった怒鳴り声。
「師匠に言われたとおり、小説を書いてみようと思ったのですが、何を書いて良いのか皆目検討が付きません。私は何を書いたら良いのでしょうか? 教えてください」
僕は頭を下げてお願いした。
「でめぇこの野朗! その頭の下げ方やめろ! バカにされてる気分だこの野朗! お前、その顎から顔を突き出して頭を下げる癖直せ! この野朗!」
「はぁ、すいません」
僕は再び頭を下げた。
「だから! てめぇこの野朗! その顎つかんで一本背負いしてやろうかこの野朗! 帰れ帰れこの野朗!」
そう言うと、師匠は僕のことを蹴飛ばして部屋の外へと追いやろうとした。
「し、師匠痛いですよ! やめてください」
僕は必死に抵抗したけれど、健闘むなしく部屋から閉め出された。
「し、師匠うぅ……」
僕はあきらめて帰ろうとした。そのとき、扉の向こうから師匠の声が聞こえた。
「人は恋するために生きている。書くなら、恋愛小説だバカ野朗この野朗!」
かくして、僕は恋愛小説を書き始めた。