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24話 悪魔

マリー達と合流するために人形兵隊部隊が進軍を続けている地点へ向けて念動魔術で飛んでいく。


その飛んでいく姿を森の影から見つめる者が一人、青い光を発しながら消えてゆく。


「全く、ヨルダルクの、俺達の苦労が全部水の泡じゃねぇか。やってくれたな」



「マリー!セレス!召子にフェン、待たせたな」


「レルゲン、お疲れ様!うまく行ったようで何よりだわ」


「あぁ、これから殲滅戦に入ろう。まず余った光の矢を人形生産の施設に打ち込んで


これ以上出てこないようにする。一旦全員回収するが構わないな?」


「ええ、構いません。フェン君は召子を抱えて天歩の加護でレルゲンについてくるでしょう」


フェンの上には既に召子が乗っており、いつでも行けると目でレルゲンに訴えかけている。


レルゲンが頷き、全員で光の矢の影響されない上空へ消えてゆく。


ディシアを除く全員がレルゲンの用意する光の矢を初めて目にし


超巨大な螺旋剣とも言える鉄の塊が高速回転を始めるのを見て、思わず冷や汗を流している。


更に貫通力をウルカのテンペストで補助すると周囲の雲が吸い上げられるようにレルゲン達へ集まってくる。


「これが最後の一撃だ。ヨルダルクの技術の推よ、永遠に眠るがいい」


右手を更に上空へ掲げる。

振り下ろされたと同時に、光の矢は音速を超えて研究施設に突っ込んでいく。


間違いなく研究施設を全て破壊して、数キロに及ぶクレーターが形成される。筈だった。


「魔力解放。反魔術、アル・レベス」


音速を超える光の矢の着弾位置へ正確に回り込み、片手で受け止める影が一人。


衝撃で数百メートルの小さなクレーターはできたが、威力が減衰されたことは明らかだった。


(今の一撃を、受け止められる奴がヨルダルクにいるのか…!)


レルゲン達がゆっくりと地上に降りてくるのを男がじっと見つめ


完全に形成されたクレーターへ降りたタイミングで男が声をかけてくる。


「コイツを打ち込んだのは君か?」


「そうだ」


「素晴らしい一撃だった。完全に相殺したつもりだったが施設がこの有様だ。もうここも放棄する他ないだろう」


「施設は全て潰させてもらった。ヨルダルクにもう未来はないぞ」


「らしいな。だが、お前の横にいる白髪の女は元はヨルダルクの要人だろう。


聞いたことはないか?悪魔という存在を」


瞬間、全員が戦慄する…

悪魔とは勇者が召喚されたら…否、魔王が復活した時に活動を再開する種族。


つまり、既に魔王はずっと前から復活していた…?


ここまでレルゲンが思考を巡らせていると、悪魔の話をし始めた男が魔力を解放しながら首を振る。


「いや、魔王様は未だお目覚めにはなっていない。覚醒まで秒読みなのは確かだが


それも全てヨルダルクの間抜けが勝手に勇者を召喚しやがったせいで完全覚醒までの時期がズレてな。


そこの聖剣を持っている女、お前が勇者なんだろうが、まるで分からんな。


どうして勇者よりも強い奴が自由に空を飛び、かつこんな地形を変える一撃を放てる?

お前は一体、何者だ?」


レルゲンはこれに正直に答える。


「純精霊と契約した、ただの人間だ」


「馬鹿な、たかだか精霊と契約したくらいでそこまで強くなれる人間が存在するなど、ありはしない」


「それこそ俺の知ったことか。お前は悪魔なんだろう?ならさっさと始めよう」


「そうだな。お喋りもこの辺りにして、今の"発展途上"の内にお前は潰させてもらう」


お互いに魔力を高め合い、戦闘が始まろうとした時、レルゲンと悪魔との間に割って入ったのは召子とフェンだった。


「女の勇者、何のつもりだ?」


悪魔の問いには答えず、背を向けてレルゲンを見る召子。


「レルゲンさん。ここは私にやらせて下さい」


「いくら朱雀で自信をつけたからといって、アイツと戦うのはまだ早いんじゃないか?」


レルゲンが見たところ、朱雀で更にレベルが上がっているとはいえ、恐らく召子とフェンのレベルは150程度だろう。


光の矢を受け止めたこの悪魔はレベルに換算すると300はあると予想できる。


単純計算で今の召子の倍はあるであろうこの悪魔を召子単騎では討ち取れないと考えたため、レルゲンは召子に待ったをかけたのだ。


悪魔の男が無言で、腕を伸ばし一本の棘を召子に向けて放つ。


「やぁあ!」


無言で放たれた一撃は、召子に真っ直ぐ進んでいくが


それをしっかりと目で追っていた召子は聖剣で正確に軌道上に走らせて弾いて見せる。


「…!」


避けるではなく弾いて見せたことに多少驚きつつも、悪魔は狙いをレルゲンから召子に移して行く。


「いいだろう。女、まずお前から消してやる」


悪魔の標的が自分から召子に移ったのを肌で感じたレルゲンは瞳を一度閉じ、召子の目を真っ直ぐに見つめ返す。


「分かった。あの悪魔は君に任せる」


召子が悪魔に向き直り、魔力ではない"何か"を発し始めると、悪魔は口角を上げて召子に言葉をかける。


「やはりお前は勇者だ、間違いない!その力、私に見せてみよ!」

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