22話 炎剣・朱雀
各々が準備に奔走しているとあっという間に一週間が経過し
ドライドから新しい武器とフェン用の髪飾りが届いた。
中にはドライドからの手紙が入っており、召子が読んでいく。
「レルゲンの旦那には注文通り朱雀の素材を活かした片手直剣を。
銘は炎剣・朱雀だ。持ってみれば分かるが黒龍の剣ほどの重量はないが
伝承の魔物だけあって重い仕上がりになっている魔剣だぜ。
特徴は他にも、斬りつけた対象をしばらくの間焼く効果が乗っていて
斬った後に回復しようとするやつに有効だ。
狼のフェンには髪飾りを_大きさが分からなかったから首輪などの大きさに縛りが入らないものにしたぜ。
効果は朱雀の加護。複合型の加護だな。
要するに、天歩の加護と耐熱の加護だ。
この加護の説明はいらないと思うから省くぜ。
また、必要になったらいつでも頼ってくれ。じゃあな」
炎剣・朱雀は刀身から唾、柄に至るまで朱色の朱雀の素材をふんだんに使用した武器となっており
刀を振るうと刀身が温められ、熱を帯びる。
魔力なしでこの熱さになるという事は
ブルーフレイムを付与したときと
白銀の剣と組み合わせた時には一体どこまでの熱を帯びるのかが楽しみになる一振りだ。
フェンの髪飾りの加護には、カイニルも元々持っていた天歩の加護で空中の機動力が確保され
耐熱の加護も、熱の軽減が期待できる。
いい仕事をしてくれたドライドに感謝を込めて次回挨拶をしに行くとして
思考をディシアとカノンが作成してくれた主要施設の地図を見つめながら最終確認を行う。
「どこか一つを攻撃すれば、他の攻撃手段をすぐに実行してくることは間違いないだろう」
全員が頷き、続きを促す。
「その中でも一撃で殲滅する必要があるのが、
・改造昆虫
・疫病兵器
・光の矢
の三つだ」
ほぼ全部だが、ここを同時に破壊する必要がある。
特に改造昆虫と疫病兵器は自爆覚悟で展開されれば王国のみならず
周辺国にも波及しかねない最悪のシナリオが待っている。
「光の矢は俺の念動魔術で軌道を変更して研究施設に突っ込ませることもできるから、これは時間的な猶予が他の二つよりかは少しだけある。
ディシアの計算によれば俺の飛行速度の方が速いことが分かったからだ」
マリーがレルゲンの用意したものを見上げて
「一撃粉砕用に用意したのがそれってわけね」
「そうだ、急ごしらえだが、ディシアの光の矢を聞いたときに閃いたものだ。
他に手がないか何とか考えたが、やはりこれが最善の手になってしまった」
一度咳ばらいをいれ、更にレルゲンがみんなに頼む。
「俺からみんなにやってほしいのは一つ。
人形兵隊部隊の足止めだ。これは予想だが、魔剣の簡易製造の確立が既にされていて
人形一体一体に全て魔剣を持たせている可能性が高い。
まともに撃ち合えば間違いなくこちらが先にマインドダウンを起こしてしまう。
だから後ろに引きながら一定の距離を取りつつ対処してほしい。
俺が到着次第、殲滅戦に移ろう。今の説明で聞き取れなかった人は
ディシアとカノンが作った作戦資料を確認してくれ。作戦実行は明日の朝。
今日はみんなゆっくりと英気を養って備えてほしい。以上だ」
全体の打ち合わせが終了し、各個人が連携の確認を話し合っている。