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18話 朱雀攻防戦 前編

赤い刀身が伸びてゆき、大出力の光線攻撃が朱雀を襲う。


咄嗟に朱雀が全身を翼で多い防御の体制を取ると、光線攻撃を正面から受けきってしまった。


「咄嗟にガードしてその程度のダメージか」


出力量的には以前の青い光線攻撃と同等レベルだが、受けた朱雀の翼の一部が焼ける程度のもので


レルゲンの表情が若干苦くなるが、朱雀は逆にこれほどまでの攻撃を人間が放てるものなのかと


驚いており、レルゲン達を”挑戦者”として認め、一言だけ言葉を放した。


「いいだろう」


圧の籠った静かな声が部屋全体を包み込む。

一時お互いににらみ合ったが、均衡を破ったのはセレスティアだった。


急激に高められた魔力は神杖へと流し込まれ、杖全体が白く発光する。


聖属性が追加された本来水属性の魔術であるウォーターシャーク・トルネイヴを朱雀に向かって繰り出す。


(火には反魔術の水属性での上位魔術が有効のはずですが、やはり単一の上位魔術では効きませんか!)


セレスティアの上位魔術は確かに朱雀に命中したが、

衝突と同時に水蒸気になってしまい、全く効果が無いように見えた。


(遠距離がダメなら私が!)


マリーがテンペストを神剣に纏わせて、全力の一撃を朱雀目掛けて振り下ろすが


今度は防御する体制を取ることもなく、朱雀はマリーの攻撃を正面から受ける。


絶対切断の加護で朱雀の羽を何枚か落とすくらいには斬ることが叶ったが


すぐに落とされた場所から新しい羽根が生え変わり、これも実質ダメージが入っていないように見える。


召子とフェンは戦闘に始めから参加せず戦況を見守っていたが


素人目にもレルゲン達の攻撃が朱雀に通用していないように感じられた。


(レルゲンさんたちの攻撃が効いていない…!

でも私のやフェン君のレベルだと足手まといになるだけだし、指示もまだない。


今はまだ我慢が必要、だよねフェン君)


一連の単体攻撃を試したレルゲン達だが、単体の攻撃では全くダメージにならないことを確認すると

レルゲンがウルカに協力を要請する。


「ウルカ、協力してくれ」


「いつでもいいよ!」


「「ブルーフレイム・アローズ!」」


セレスティアは火の魔物に火の魔術とは何を考えているのかさっぱり分からなかった。


しかし、展開されていく青い炎の弓矢が、ざっと確認できるだけでも百本はある。


この異常なまでの数の多さで相性差をひっくり返そうと考えたのだろうか?

セレスティアはそう考えたが実際には違った。


一斉に朱雀に向かっていく青い弓矢は朱雀の羽ばたいた風圧で方向をあらぬ場所へとけてゆき


地面に突き刺さったものもあれば空中に放り出されたものまで様々だ。


「我に火は効かぬぞ」


呆れているような声色で朱雀が二度目の口を開く。


「曲がれ」


レルゲンは空中に放り出された弓矢のみを念動魔術で操作し


軌道を修正した弓矢が朱雀の死角となる翼に命中する。


予想していなかった攻撃方法に朱雀は痛みよりも驚いたことで魔物の声を上げる。


このできた瞬間的な隙にレルゲンは駆け出していた。

朱雀との間の地面に突き刺さっている青い弓矢を白銀の剣で吸収しながら進み距離を詰めてゆく。


満タン状態になった白銀の剣が白く光り輝き、

念動魔術による熱源操作で触れたものを全て溶かし斬る剣が完成する。


「喰らえ」


距離を詰め切ったレルゲンが白銀の剣を縦に振り下ろすと


これを危険な一撃と判断したのか後ろに飛ぶように移動し、辛くもレルゲンの攻撃を躱す体制を取った。


「勘のいい奴だな」


しかし朱雀は完全に交わすことは叶わず、身体を支えている巨大な爪が二本斬り飛ばされた。


初めての回避行動に朱雀はかなりプライドを傷つけられ、内心は激昂中だった。


(我が人間のあの剣に命の危険を感じたのか…?この我が?)


朱雀の感情の高ぶりと同時に、一歩引いて戦況を見ていた召子が気づく。


「レルゲンさん!関係ないかもですが証明が少しずつ消えていっています」


周囲を見ると朱雀自体が火の粉を常に纏っているせいであまり変化に気づかなかったが


確かに証明がほぼ全て消えている。


「わかった!確認助かる!」


証明が消えていたのに明るく感じるほど巻き上げられた火の粉の量を見てレルゲンは引っ掛かる。


すると朱雀が更に火の粉を巻き上げるために翼を羽ばたかせ、証明が完全に消えた。


飛び上がったと同時に一本の鋭い羽根が地面に突き刺さったと同時に部屋全体が大爆発に包まれた。


轟音と共に敵の全滅を確信した朱雀は、

レルゲン達がいた場所から背を向けて最初に座っていた巨大な玉座に腰かけようとしたが


一つ、また一つと人影が表れ始める。


「どこへ行くんだ?」


レルゲンの声が部屋中に響く。


「なに」


全滅どころか一人も倒せていない事実に、朱雀は初めて表情を変えた。

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