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13話 召子から見た景色

深域を出発した四人と精霊はまず初めに安全地帯の水龍が守護している湖に向かうことに。


召子とウルカが軽く挨拶を済ませ、流石に水龍も純精霊は初めて見たようで驚きを隠せなかったが、


召子なりに驚いており


「ドラゴンだ、本当にいたんだ…」


と言葉があまり出てこない様子。


水龍は異世界人の召子を見たときは更に驚いており、


驚き疲れてしまった水龍は好きにこの安全地帯を使ってくれてよいとだけ残して早々に湖の底に戻っていってしまった。


それを見て笑ったレルゲンを見てウルカが


「私たちをダシにして水龍をからかいたかっただけでしょ?」


と核心をあっさりついてきたので、レルゲンは慌ててその場を後にし


「さぁ、深域探索いくぞー」


とスルーして足早に樹海の奥へと歩を進めた。

三人は黙ってついてくるが、表情はどこか明るい。


「ちょっと!レル君無視はよくないわ!待ちなさい!こらー!」


しばらく歩みを進めていっても今回は何も魔力感知に引っかからない。


こうなってはここに来た意味がないため、少し開けたところまで移動し


レルゲンが魔力解放を行って周囲の魔力濃度を更に高めて魔物をおびき出そうという作戦を取ることに。


ここでウルカがいつもよりゆっくりやってねというので、徐々に魔力を高めてゆく。


しかし魔力を上げてもあげても更に際限なく上昇していく魔力量を肌で感じながら周りを見ると


マリーとセレスティアが若干怯え始めるところまで来てしまったので、慌てて魔力解放をやめる。


「やっぱりレル君。私が言うのもなんだけど強くなりすぎちゃったかも」


「まだ半分くらいの解放だったが、二段階目の全魔力解放と同じくらいだったぞ」


「「今ので半分!?!?」」


マリーとセレスティアが驚きのあまり声が重なる。


自身の成長速度にまだ身体が慣れ切っていないためか、まだ解放に粗さが残ってはいたが十分すぎる成果と言えた。


本来の目的だった魔物の誘因は、一体だけだが成功する。


すぐに思考を切り替えて目の前に出現した二本の角を有する、黒い鹿のような魔物を全員が見つめる。


魔物側もこちら側の存在に気づき戦闘まであと数秒といったところだろう。


マリーがまず最初に気づく。


「あれってなんかユニコーンに似ていない?」


レルゲンもマリーに言われて思い出し、体型や魔力の質が若干似ていることに気づいた。


セレスティアが知っているようで


「あれはバイコーンですね。五段階目です」


「セレス、本当に魔物の種類に詳しいよな」


「子供の頃によく魔物書を読み漁っていましたから、こうなることを見越して」


満点を上げたい。この王女、優秀すぎると感心していると、マリーも「気づいたの私なんですけどー」と

抗議の声を上げている。


レルゲンが仕切り直し


「予定通り頼んだ!おそらく戦闘を見せる魔物の中で召子には丁度いいはずだ」


「わかったわ」


「承知しました。さ、召子様は私と一緒にこちらへ」


セレスティアに連れられ召子が後方へ移動し、レルゲンはどちらのフォローも入れやすいように遊撃として。


マリーは前衛の壁役として前に突っ込む。

距離を詰められたバイコーンは前掻きをして突進の構えを取りマリーを迎撃する仕草を取る。


(ユニコーンの時もそうだったけど、彼らは耳が良かったはず)


「やぁぁぁああああ!!!」


あえて自身に標的が向くようにマリーが大きな声を出しながらバイコーンに突っ込んでいくと


急な大きな音に一瞬驚いたバイコーンは興奮し、真っすぐマリーに向かって突進していく。


鋭利な二本の角をマリーに突き刺そうとするが、マリーが神剣を平行に構え突進を正面から受け止める。


勢いに乗ったバイコーンはマリーを数メートル押し込んで、ようやく停止した。


「身体の割に結構重たいわね!レルゲン!!」


「任せろ」


持ってきた白銀の剣でバイコーンの真横から初撃を与えることに成功し


怯んだバイコーンは一旦レルゲン達から距離を取る。


「グオオォォォォォ!!」


バイコーンが重厚感のある呻き声をあげ、二本の角に魔力を集中する。

いち早く気づいたレルゲンがみんなに注意を飛ばす。


「遠距離攻撃が来るぞ!」


充足しきった二本の角が振り下ろされると、何かしらの遠距離攻撃が来ると思い身構えたが何も起こらない。


(さっきの傷が思ったより深く入ったことで不発したのか?)


だが、レルゲンの予想は外れることになる。


その場の変化に最初に気づいたのは戦闘中の三人ではなく、戦闘を一歩引いて見ていた召子だった。


「セレスティアさん、上…」


「上ですか?」


見上げたセレスティアは即座に次の光景が予感できた。

召子を抱えて地面に飛び込むことで回避を試みる。


バチン!という音と共に、セレスティア達が居た場所に雷撃のような跡が残されていた。


(あぶなかった…)


冷や汗を拭うセレスティアに召子が


「大丈夫ですか?」と声をかけてくる。

セレスティアは「ええ」と短く返し、バイコーンのずる賢さを痛感していた。


レルゲンは念動魔術による電撃軌道の変更を試そうとしたが、すぐに難しいと考え直す。


電撃の軌道先が分かったとしても、発射されてから着弾するまでの間隔が短すぎる。


音速程度ならば軌道の変更を可能にする自信があったが、光速となると話が変わってくるのだ。


(作戦を転換する必要があるな)


レルゲンがマリーを呼び、頭の上をトントンと叩くとそれだけで意思が通じたのか、マリーが大きく頷く。


再びマリーが気合を込めながらバイコーンの突進を誘うと


今度は正直にマリーに向かって突進をしていくバイコーン。


再びマリーが神剣を平行にして完全に受けきると、

今度は絶対切断の加護を利用した回し斬りによって身体と大きな神剣をコマのように回転させ


二本の角を簡単に切断することに成功する。


これで突進の殺傷力も電撃攻撃も封じられたバイコーンは、ただの速いだけの馬に等しくなる。


ここで畳みかけようとレルゲンが青いファイアボールを生成し


白銀の剣に吸収させると疑似的に対象を溶かし斬る剣となり、バイコーンはレルゲンの一撃で魔石へと還っていった。


戦闘が終了した後にレルゲン達が召子とセレスティアの下へ集まる。


「お疲れ様」


「ちょっとあぶなかったわね」


「ああ、セレスと召子は怪我とかしていないか?」


「はい。問題ありません」


「セレスさんが護って下さったので大丈夫でした」


ここで召子は魔力やスキル以外にもレルゲン達とは決定的にかけ離れている要素に気づいた。


(あの強そうな魔物だって恐らく戦うのは初めてなはず…

なのに戦闘に慣れているのか予知に近い回避や、有効な攻撃手段とか


初めから知っていたみたい。

これが圧倒的な経験の差だ)


召子が自身のプロパティを確認すると、まったく戦闘に参加していないのにも関わらず


レベルが二十三まで上昇し、スキルも増えていることに驚きを隠せないでいた。


これにはレルゲンが少し悪い笑みを浮かべ


「よし、この調子でガンガン召子のレベルを上げていこう。


恐らくだが戦闘に一度でも参加すれば上昇率も上がるはずだぞ」


「経験を横取りするみたいなことしてすみません」


召子が謝るとマリーが「そんなの良いのよ」と言い、と召子を気遣うかと思いきや


「後からあなたにも助けてもらうようになるんだから」


とニコニコと屈託のない笑顔で言うものなので、召子は気を引き締め直すのだった。

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