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10話 純精霊 ウルカ

レルゲンが次に目を覚ましたのは、召子の聖剣騒ぎがあったその日の夜。


レルゲンの横で寝ていたマリーの隣に、更に知らない少女がレルゲンの隣で寝ていたからである。


「レルゲン、起きて」


「どうした?」


「横にいる子、誰?」


「セレスじゃないのか?…うわ、本当に誰だ」


軽く驚いた声を上げると


「うるさいなぁ…」


と眠い声を出しながら謎の少女が目を覚ます。


「あれ?もう朝?"ようやく逢えたね"、旦那様」


「はい?レルゲンは私の旦那様よ。貴女誰よ?」


「誰って、レルゲンに身も心も捧げている純精霊のウルカよ。


人間族なのに純精霊に傅かないなんて珍しいね。


私達を見られるだけで本当は豊穣が約束されるとか、無病息災になれるとかお有難く崇拝されるのに…

あっ、もしかして知らない?それなら仕方ないか」


薄い赤色のウルカと名乗る純精霊は説明が終わった後はレルゲンに再び抱きつき、眠ろうとする。


「無邪気さはあるが多分間違いない。俺に語りかけてきてたのはこのウルカだ。

明日また詳しく聞いてみよう」


「分かった…」


若干まだ不満げなマリーを他所に、ウルカは直ぐに寝てしまっていた。


次の日に夜明けと共に目を覚ますと、ウルカがレルゲンの身体に馬乗り状態で「おはよう!」


と元気よく挨拶するので、ウルカを抱えて挨拶しながらマリーとは反対側に座らせる。


「おはよう、ウルカ」


「名前!ようやく呼んでくれたね!ずっとずっと待っていたのよ!」


ベッドの上で跳ねるが、体重が極端に軽いのか跳ねた事によるベッドの軋み音がほぼしていない。持ち上げた時にもまるで綿でも入っているかの様に軽かった。


「ねぇ!もっと呼んで!貴方が生まれてから名前を呼んでもらうまでずっと待っていたの!」


「あぁ、これから何回でも呼ぶよ。時にウルカ。聞きたい事があるんだがいいか?」


「なに?何でも答えてあげる」


マリーを急遽起こし、一緒に話を聞くようにベッドに腰掛ける。


「ウルカはどうして今、俺の中から出てこられたんだ?」


「それはね、聖剣が近くにあったからよ。ディシアから聖剣の事については聞いていたよね?


私は大昔にある人族に聖剣を渡した精霊の内の一柱だったの。


すごいでしょ?


だけど魔王が倒されてから私達精霊も休眠状態に入った。


でもまた魔王復活の兆しと共に聖剣が効力を取り戻し、私達精霊も徐々に目覚め始めたって訳よ」


「つまり、魔王が近々復活するのか?」


「精霊の時間感覚で言えばもう直ぐに復活してもおかしくはないけど、多少の誤差が生まれてる。


何でかは私達も分からないけど、もっとずっと前、何千年も前かな…?


始めに魔王が誕生し、世界の均衡が大きく崩れて、それを元に戻そうと"世界自ら"の修復行動によって勇者が召喚されたわ。


その勇者に聖剣を渡したのが私達精霊族。


だけど今回は"先に"勇者が召喚されて、力を完全に取り戻す前の魔王として復活しようとしてる」


マリーが前向きな方向へ話を持って行く。


「もしかしてだけど、結構希望があるんじゃないの?」


「そう!マリーの言う通り、早いほど魔王の力は不完全のまま倒す事が出来るし、被害も少なくて済む。


でもそれでもやっぱり大変には変わりないかな。


一番最近の魔王復活に伴って召喚されたのは"四人いた"もの。


いくらレルゲンとあの召喚されたショウコが強かったとしても、勇者の倍は強くないと太刀打ち出来ないわ。


だけど安心して!私も出来るだけレルゲンをここまで強くするのに力を無償でバンバン貸しまくってたんだから


今度はちゃんと私と永遠の契約をして、更に上の領域に足を踏み込んでもらえば、ちゃんと勇者二人分くらいにはなれるはずよ」


「それ、俺が耐えられる力なのか?」


「大丈夫!死なないタイミングで不自然なマインドダウンが何度かあったでしょ?


あれ、私が魔力貸すの止めてマインドダウンにして最大限の契約が出来るように仕込んでいたから」


レルゲンが呆れたように笑い


「究極の結果論だな。俺が死んだら君の苦労も無駄に終わっていただろ」


「それはまた"最終手段"があったから大丈夫よ」


「最終手段?」


「それは教えられないわ、"今は"ね。契約に間違いなく邪魔な情報になるから」


「それならいい。マリー」


「何?」


「所々胡散臭いけど、かなり俺を助けてくれていたのは確かだ。


ナイトを倒せたのは間違いなくこのウルカのお陰と言っていい。俺はこの子を信じるけど、マリーはどうだ?」


「貴方の異常な強さが精霊の加護によるものだったなら納得できるし、理解も出来る。でも…」


「「でも?」」


「旦那様呼びだけは許さないわ」


「突っかかるところそこかよ」


とレルゲンがマリーに突っ込むが


「これ、結構大事なところよ?」


とマリーも引く気は無いようだ。

ウルカがはぁ、と軽くため息をついて


「じゃあ旦那様は止めて、レル君にしてあげる」


「いいじゃない。レル君___可愛らしくて」


「俺があんまり良くないが…」


「じゃあレル君、これからはもっとずっと一緒に居られるね?この姿でいいよね?」


「駄目だ。せめてこの前みたいに小さくなってくれないとレル君呼びは許可しない」


「細かい事言わないでよもう!でもレル君呼びはしたいから我慢するわ」


そう言って肩にちょこんと乗る大きさまで小さくなり


「これでレル君ね」


と念押ししたウルカは笑顔で溢れており


その日中にウルカをみんなや女王様に紹介しに行くと、意外な反応を見せたのはダクストベリク女王だった。


「ウルカ様、我が王国の騎士の中にいらっしゃったのですね。新しい勇者のみならず、結果的に我が娘達までお護りして下さったと…


深い感謝の意をお受け取り下さい」


女王が小さなウルカに頭を下げると、ウルカはマリーに向かって


「本当はこの反応が普通なのよ?」


と一言釘を刺したが


「そ。私は私よ」


とウルカの言葉は華麗にスルーするのだった。


初めて純精霊のウルカを見た研究所組のカノンとディシアは、興味を抑えられなかった。


度重なる質問攻めに遭うウルカは


「こうなると分かっていたからここにはあまり来たくなかったのよ…」


と小言を漏らしていた。

最終的には全員がウルカを向い入れ、レルゲンの更なる戦力の増強に繋がるのだった。

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