3話 剣闘大会
数ヶ月後
私、最上召子は初めての中央王国まで辿り着いた。
自身が召喚されたヨルダルクと比べると、人の温かみが身近に感じられるいい街だなと、素人ながらにも思った。
しかし、どうやってレルゲンに近づこうか考えていると、この聖剣を使った良い方法がある事に気づく。
街の至る所に剣闘大会の開催を知らせる張り紙がされており、他の国からも挑戦者が集まってきているようだった。
張り紙をよく見ると参加資格が書いてある。
・Cランク以上の冒険者
・またはCランク以上相当実力を示せる場合
この際ギルドに登録しておけば
いざ自分だけで生活する必要が出てきた時に何とか出来るかもしれない。
帰りの事を考えると言うより、思考がこの世界で生きていく事に一瞬傾いたことにゲンなりしながらも、長い黒髪を耳に掛け直して中央ギルドへ向かった。
「ようこそ。中央ギルドへ」
張り紙を持って、ギルドの受付嬢へ渡す。
「あの、この大会に出たいのですが。私、まだギルドの登録をしたことがなくて」
後ろで昼間から酒を煽っている連中が
「やめとけよ、最後まで勝ち進んだらあの国家戦力のレルゲンと戦う事になっちまうぞ。
まぁ嬢ちゃんが行けるとは思えんがな。ガハハハ!!」
ギルドの受付嬢があまり気にしないように召子に話しかけ、ざっくりとした剣闘大会の内容を説明してくれた。
・魔力による身体強化はあり
・魔法・魔術は禁止
・武器が壊れた時は継続不可能の時に限りTKOが認められる。
・殺しは無し。それ以外の怪我なら問題無し
つまり、穏便に済ませるならこの聖剣を使って武器を壊せば、大会を勝ち上がるのは難しくないようにも思えた。
「ありがとうございます。Cランク以上と示せるのはこの剣でも大丈夫ですか?」
「ちょっと拝見させて頂きますね」
受付嬢が聖剣に直接触ろうとした時に、赤い電撃のようなものが出てきて、触るのを拒否したような反応をする。
「なるほど。これは確かに面白い性能の武器かもしれませんね。少々お待ち下さい」
受付嬢がその場を後にして、ギルド長室の方へ向かってゆく。
暫く待っていると、耳の長い若い青年と共に受付嬢が降りてきた。
「これが言っていた、魔剣と思われる代物かい?レイン君」
「はい。私が触ろうと手を近づけたらそれを拒否するような反応がありました」
「どれ…」
クーゲルが聖剣を触ろう手を伸ばすと、今回も赤い電撃のようなものが伸ばされた手を阻もうとする。
「なるほど、これは持ち主にしか触れることのできない特殊な魔剣なのは間違いないね。
ドライドに見せたら喜ぶんじゃないかな。
良いだろう。君を臨時でCランク以上の冒険者と認めることをボクが保証しよう。
ついでにギルドの登録もしていくかい?」
「お願いします」
別室に案内され、自分の背丈よりも五倍以上はあるであろう水晶に手を触れるだけで魔力と魔術適正が測れる物らしいが
実際に召子が触れるだけで変化は何も起こらず、魔力ゼロ、魔術適正無しという文言が出てきた。
それを見たレインが
「おかしいですね。いくら魔力や適正がなくとも、こんな表記は見たことがありません…」
気を取り直して今度は系統が分かる紙を渡されて、丸まった紙を握ると。
全てが灰色に変化した。
「灰色…ですか。しかも全て同じ系統ですね。魔力は無いのに系統だけ表示されるのもおかしな話ですが、
一応系統の色だけ記載させて頂きますね。以上で登録前にする事は終了となりますが
他に何かご不明点はございますか?」
「いえ、大丈夫です」
レインからギルドカードを貰い、その場を後にする召子。
そろそろヨルダルクから貰ってきた旅の軍資金も底が見え始めるくらいだ、安めの宿で安全な所に寝泊まりしたかった。
「すみません、やっぱり宿の紹介をして頂くことって出来ますか?」
ニコッとレインが笑い、値段と安全性を合わせた宿を紹介してくれる。
「何から何までありがとうございました」
「いえ、大会頑張ってレルゲンさんの所までたどり着いてくださいね!」
軽く会釈を返して、ギルドを後にする。
大会まで後、数日間。
中央には三段階目の魔物がよく出ると聞いていたので、大会までは聖剣を使えるレベルにまで馴染ませておこうと考えた。
魔物退治をしてからというものの、あっという間に日数が経ち、ついでに懐も魔石を換金することで潤う。
大会当日
剣闘大会の会場は熱気で包まれていた。
要人席には何人か座っており、中には騎士服を着ているものもいるため、この人がきっとレルゲンだろうと直感で分かる。
「本日お集まりの皆さん!大変長らくお待たせ致しました!
それではこれより中央王国主催の剣闘大会を開始いたします!
大会出場者も多くいらっしゃいますので、多少巻きでやらせて頂きますが、そこはご容赦を。
それでは第一試合、初めて下さい!」
ワァァァアアアア!
と一斉に歓声が沸き起こり、剣闘大会がスタートしたのだった。