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1話 最上召子

第三部、開始します!

よろしくお願いします

紫の光を抜けると、なにやら文様のようなものが描かれた石でできた床の上に立っていた。


ここに転移する前に覆面の男が言っていたことを思い出す。


「まず貴女は周りから現在の<ステータス>を参照し、

その情報を公開するように言われるでしょう。


しかし、本来それは貴女が”女神”に与えられた恩恵です。勇者であること以外は話してはいけませんよ」


時は白く明るい部屋に戻り、覆面の男が言っていた通りに周りにいる海外によくいる

神官装束のような者達に確認を取られる。


「お待ちしておりました。寵愛の信徒よ。

早速ですが貴女が女神に何を賜ったのか、確認させて頂ければと思います。

プロパティと唱えてください」


「<プロパティ>」


「何が書いてありますか?」


「レベル1と勇者。とだけ書いてあります」


「やはり勇者のスキルをお持ちでしたか!しかし、他にも何か書いておりませんか?」


「いいえ。他には何も」


尋問を受けているような気分になり、咄嗟に覆面の男が言っていた通りに答えてしまう。


話しかけてきた神官の男性は、少し疑念を含んだ視線を向けてきたが、すぐに笑顔になり


「ようこそお越しくださいました。魔王を打ち倒す勇者様よ。


さあ、いきなりでお疲れでしょう。

今日はゆっくりとお休みになり、明日この国の現状と貴女の使命についてお話させて頂きます」


使命とは、勇者とは…?何かやらなくてはいけないのだろうか。


そんなことよりも早く元の居場所に帰りたいと考えるのだった。


このよくわからない土地に来て日を跨いでしまった。

家族は、友達は私を心配してくれているだろうか?などと考えていると


自分に用意された部屋を軽く叩く音が聞こえ、世話役の女性が声をかけてくる。


「おはようございます。入ってもよろしいでしょうか?」


「どうぞ」


「失礼します。突然この知らない世界に来て大変かと存じますが、昨日は眠れましたでしょうか?」


「いえ、あまり眠れませんでした」


「そうですか…早く慣れるといいですね。シーツの交換に参りましたので、失礼いたします」


淡白なやり取りだが、会話は基本許可されていないのだろう。


自身を危険に晒してまで気遣ってくれているこの世話係さんは、きっといい人だと考えた。


シーツの交換が終わり、世話係の女性が部屋を後にする。


程なくして再度、昨日の神官装束を着た男性の声が聞こえる。


「勇者様。おはようございます。

本日は現在の状況についてお話させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」


「わかりました。今向かいます」


寝巻から召喚時に来ていた学校の制服に身を包み、部屋を後にする。


聞かされた状況としては要約すると

・この国を”裏切った”ディシア・オルテンシアという人物が、中央王国というところに寝返り、国の重要機密を漏らすかもしれない


・ディシアが中央最強の騎士、レルゲンを洗脳して意のままに操ることで、今度はこのヨルダルク国を壊滅させようとしている


・魔王が復活して、私がこの世界に呼ばれた。


・魔王騒ぎになる前にディシアを正義の名のもとに暗殺し、来る魔王軍襲来の準備をする必要がある


聞いたのはこの四つ。

特に裏切り者の暗殺と魔王の討伐が私に女神が与えた試練だというのだ。


魔王と呼ばれるものは空想上の本で見たことがあるので知っていたが


暗殺は本当に使命なのか?と多少疑問に思ったが、それよりもこれから人殺しに加担する方がもっと嫌だった。


そんな私の表情を案じてか神官と名乗る人物は、手を握って


「勇者様にしかできない。勇者様だけの政なのです。勇気をもって困難に立ち向かって下さい」


と念押しされ、その日は暗殺依頼を断ることができずに部屋に戻ってきてしまった。


「私のばか!なんで断れなかったのよ!」


枕に顔を埋めて足をばたばたさせながら自己嫌悪する。


(暗殺か…どうして私がやらなきゃいけないんだろう。


そうだ!殺したことにして暗殺なんかしなければいいんだ!)


彼女は楽観的な所があったが、その後のことはあまり考えずに人殺しなんて

やってられるかと決意を固めるのだった。


しかし、そうなるとこの国の神官とやらも信じられなくなってくる。


唯一信じられるのは、最初に自分と言葉を交わした見た目だけは怪しい男のみ。


「あの人、今何やっているんだろう?」


虚空を見つめて考えていると、なんだか眠くなってくる。


昨日あまり眠れなかった影響なのか睡魔には勝てず、ベッドに横になり意識が簡単に薄れていった。


更に次の日、早速ディシア暗殺のために武器を渡される。


(重…)


何とか持ち上げて見せると周りから驚きの声が聞こえてくる。


確かに重いけど、こんなか弱い自分に持てて何を驚いているのだろうと疑問に思う。


「流石は勇者様。伝説の聖剣をお持ちになられた!やはり伝説は誠でしたか!」


「いや、結構重いですよこれ。ちょっと持ってみてくださいよ」


「いえいえ。この聖剣は勇者様と女神がお認めにならないと扱うことはおろか、”手で持つことすらできない”んですよ!」


「そうですか。では、私はこの国の裏切り者のディシア…でしたっけ?を殺してくればいいんですね」


「はい。勇者様にしかできない使命を、どうか果たしてきてください」


軽く頷き、私、最上召子はこの国を旅立つのであった。

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