41話 ここは、どこ?
念動魔術【第二部】にお付き合い頂きありがとうございました!
現在、第三部を執筆中ですので、よければブックマークをして頂き、既にしていらっしゃる方はそのままでお願いします。
今後とも念動魔術をよろしくお願いします。
薄暗い光の中で、お互いに顔の見えないようにされた覆面を被った人物が、四人だけ円卓を囲み座っていた。
「彼女は今も中央にいるのか?」
「だから言ったであろう。あの若さでこの評議会には早すぎる。必ず何か裏があると」
「然り、即刻ディシア・オルテンシアをヨルダルク最高意思決定機関から除名として、即刻処刑するべきだ」
ここで、今回の経緯から考えればやむを得ない選択ではないかと違を唱える者もいた。
「しかし、彼女は多くの情報を既に握っています。処刑が仮に失敗した場合。全ての国家機密が露呈する可能性もあるのでは…?」
「問題ない。既に"あの手"を打つ準備が出来ている」
「なんと!伝説が既に蘇るのか!」
最高意思決定機関の内のまとめ役の男性が、大きく頷き、違を唱えていた人物も「おぉ…!」
と溢して押し黙る。
「それならばディシア・オルテンシアが仮に国家機密を話したとしても、間違いなく中央王国ごと壊滅されることができよう!」
全員が納得した「あの手」を実行するべく、全員が円卓から席を後にするのだった。
私が目を覚ましたのは、爽やかな草原の、他には何も無い平坦な土地だった。
「ここは…どこ?」
確か学校で友達と別れ、家に帰ろうと真っ直ぐに道を歩いていたはずだったのに
辺りが一瞬眩しいと感じた時には既にこの平原。
「そうだ!携帯!」
急いで鞄から携帯を出してここがどこなのか確認するが、表示された画面は圏外を示しており
どこのSNSを開いても新しい更新は止まったまま。
一時間近く辺りを彷徨っただろうか。行く当てもないのだが、じっとしていられない不安感に駆り立てられて、他に人がいないか探し回る。
しかし、人は疎か周りに生き物すらいない。
暫く歩いて疲れたので、何も無い平原に座って休んでいると、近くで紫色の光が降り注ぎ、少しの土煙が上がるのが見て取れた。
すぐに誰かいるのか、この際人じゃなくてもいいと思いながらも、紫に輝いていた場所を目指すと、顔に覆面をつけたよく分からない人が立っていた。
私に気づいてからこちらに近づいてきて、跪き首を垂れる。
「初めまして。召喚されし勇者よ」
「勇者…?」
「はい、突然の召喚に応じて頂きありがとうございます」
「いえ、応じていませんし、どこか分からないので知っているならうちに返して下さい。お願いします」
覆面の男は少し困ったような雰囲気を出して、一言謝罪する。
「申し訳ございません。片道分の魔力しか用意できませんでしたので、元の場所には帰る事が出来ません」
「えっ…」
帰れないって、どういうこと?どのくらい?それとも、ずっと…?
更に不安な気持ちで押し潰されそうになり涙が溢れ出る。
それを見た覆面の男が懐から手巾を取り出して女性の涙を拭った。
「貴女が元の世界に帰るためには、膨大な魔力が必要です。それこそ"世界を書き換えられる程の"。
なので、絶対に帰れない訳ではありません。どうか希望を捨てないで下さい」
「いつか帰れるのですか?」
「貴女の頑張り次第ですが、きっと」
涙が止まり、他に誰もいない状況を作ったのは後になって分かったが、私を協力させるための演出だったに違いない。
顔を上げて、この男が言う膨大な魔力を手に入れるために奮起してしまった私は
どんどんと事態をややこしくしてしまうのだが…
しかし、今の私には頼る人がこのよく分からない覆面の人しかいなかった。
私は紫の光に包まれ、覆面の男と共に平原から一瞬で消えてしまう。