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36話 誘拐事件と魔物工場

王国に帰還し、見事テクトの足止めに成功した件を女王に報告する。


「これで軍備を更に整える事が出来ます。三人共、よく頑張りましたね」


三人共、女王に礼を返して私室を後にする。

それから数日間は深域での修行を兼ね、ハクロウも連れて行ったのだが


高難度ダンジョンでの経験もあり、マリーとセレスティアはほぼレルゲンの指示なしで連携が取れるようにまでなっていた。


ハクロウは二人の成長に驚いており、一層やる気に満ちた表情をする。


「少し見ない間に随分と変わったなぁ嬢ちゃん達。俺も負けていられないね」


新しい左腕も、マリーと二人で深域修行をしたおかげもあってほぼ自分の意思で動かせるようになっていた。


帰ってからレルゲンはカノンとディシアの研究者コンビに呼び出され


ぜひ実践して欲しい事があると半ば強引に引っ張り出される。


(魔力糸がどうとか言っていたが、この緊急時に役に立つ便利道具でも出来たのだろうか?)


分からないながらも、健気に腕を引っ張る二名のお願いに答えるしか無さそうだ。


しかし、そこでお願いされたのは魔力糸を手術にまで応用制御できるレルゲンだからこそ可能な一手だった。

それを見たレルゲンは


「なるほど、面白い!」


研究者二人が出した成果に大きく頷くのだった。


それからまた数日はマリーやセレスティア、ハクロウは深域での実戦修行。


レルゲンは研究者二人の提案した作戦の魔力糸制御の練習に当てていると、小さな地震が王国を揺らしている。


普段は全く地震のない王国なだけに、今回の小さな揺れですら軽くパニックになり、皆建物の外に出てくる。


「何事だ?」


「お母さん怖い…」


「大丈夫だよ」


と老人は新聞を読むのをやめ、小さな子供連れの母親は自分の子供の頭を軽く撫でた。


地震が感じられるようになってからは、ずっと遠方のところにモンストルム・ファブリカの姿が確認できるようになっていた。


後三日ほどでここまで到着するであろう距離に

来た段階で、ドライドからの納品物が届いた。


三本の新しい武装は、レルゲンの使用する武器以外は大切に宝物庫へ収納される。


新しい白銀の剣は、以前のものよりも増幅鉱石の色が濃くなっており


使用された剣を槌で打ったものよりも頑丈に作られており、ドライドの技術の推が詰め込まれていることが一目でわかる代物だった。


この剣を見たレルゲンは

(これなら行けるかもしれない…!)


と強く思い、テクトの襲来を正面から待つことにする。


しかし程なくして、ある事件が発生する。

昏睡状態で未だ目を醒さないミリィが、何者かに誘拐されてしまう。


ミリィに関しての警護は、テクトがミリィを使って何かしらの策を用意している可能性を考えて


護りを厳重にしていたのだが、護っていた影部隊が全て斬殺されており


殺されてしまった中にはレルゲンを初めて女王に報告した影の一員も入っていた。


レルゲンはその凄惨な現場を見た瞬間に、一瞬怒りによる赤い魔力が噴き上がるが直ぐに消し


現場を片付けていた影の一部がレルゲンに一通の手紙を渡してくる。


中を読むと


「やあ、レルゲンくん。この前はどうも、出し抜かれたままでは面白くないため


君の大事な仲間の一人を預かることにしたよ。実行犯はもうわかっているはずだ。


返して欲しくば、私を、この七段階目のモンストルム・ファブリカを打ち取って見せよ」


あまりに無理難題を突きつけてくるテクトに対して、良心が残っていないのか問いただしたくなるが


ミリィに対する意識が薄れ始めた時に実行してくるあたり、ミリィにはやはり"何か"がある事はまた間違いなかった。


徐々に足音と地響きが大きくなり、王国民がパニックに陥っていたが、予め避難の準備が進められていたため少しの混乱だけで済む事が出来た。


王国からハッキリとモンストルム・ファブリカが見て取れる位置まで侵攻され、テクトが高らかに宣言する顔は、歪んだ笑顔で満ちていた。


「さぁ、王国諸君。どちらかが倒れるまで存分にやり合おうじゃないか」


空中から見ていたレルゲンは、前に見たモンストルム・ファブリカには無かった変化に気づいた。


赤く大きな石のような物が中心に嵌め込まれており、石の中心には見知った仲間が取り込まれていた。


「ミリィ!」


黒龍の剣に二段階目の全魔力解放を乗せた一撃がモンストルム・ファブリカを襲うが、全くと言っていいほど効いている手応えがない。



それもそのはず、ミリィを取り込んでからというもの、全く外壁部分に傷すらついていないのだ。


この事実にはレルゲンも多少面食らったが、他に何か弱点が無いか、戦いながら探していくしか無い。


思考を切り替えて、白銀の剣でどう立ち回るか考えを巡らせる。


するとテクトが得意げに


「もうその攻撃は効かんぞ!レルゲン・シュトーゲン!

何度やっても無駄、何をやっても無駄と言えるだろう!実に素晴らしい!!


このまま押し潰してやってもいいが、更なる絶望を与えよう」


レルゲンの魔力感知が、地脈の流れの変化に気づく。


大量に魔力が吸い上げられてモンストルム・ファブリカの入り口が開くと、中から大量の魔物が歩を進めてきたのだった。


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