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33話 突然の幕引き

このままではまた押されると感じたレルゲンは、

魔力糸を繋いでセレスティアに念話を入れる。


(セレス、攻め方を変える。協力してくれ)


セレスティアは頷き、即座に魔術で性質変化させた大小様々な氷の塊を生成する。


それをレルゲンが念動魔術で操作し、次々とカイニルに向けて高速で飛ばしてゆく。


剣で叩き落とせるサイズのみ剣を振るい、その他の大きい氷は涼しい顔をしながら


最小の動きで回避したカイニルは、術師であるセレスティアに向かおうとしたが


自身の影よりも何倍も大きい影が地面を覆っている事に気づく。


即座に上を見上げると、超巨大な氷がカイニル目掛けて既に落下を始めていた。


(こっちが本命ってわけね)


この圧死攻撃を後ろに跳んで回避するが、地面に落下し、少しの地鳴りがしたと共に再び距離を詰める氷の塊。


(これは間違いなく念動魔術による追撃…!)


迫り来る氷の塊を一度は受け止めようと足に力を込めて地面を抉ったが


どんどんとカイニルの抉った地面が線を引く様に後退させられてゆく。


あと一歩のところでカイニルを轢くまで追い詰めたが

天歩の加護で上空に逃れたことで氷が行き場を失い、粉々に崩れてゆく。


レルゲン達のコンビネーションは止まらない。

天歩の加護で上空に逃れたカイニルは、目を細めてレルゲンが次の一手の対処をしようと身構える。


セレスティアが風の上位魔術のテンペストを無詠唱で発動し、同時に同じテンペストをレルゲンが持つ黒龍の剣に纏わせる。


纏った風の上位魔術で空中にいるカイニルへ斬りかかり、一合打ち合う度にカイニルの薄皮が切れて軽く血が飛んでゆく。


しかし、負った側からどんどん回復してゆき、これでは意味がない。それでもレルゲンは斬り込みをやめない。


「それ以上やっても無駄よ。私には自然治癒の加護があるの」


「やはり加護か。加護の複数持ちだとは思っていたさ」


「じゃあこれも無駄な事って分かるわよね?」


「どうかな、左腕を見てみな」


打ち込みの追加攻撃で切れた所だろう。しかし、治るのに時間がかかり、完全修復まであと少しと言った所だ。


「自然治癒の加護は光のリジェネライト・ヒールが常時かかっている様なもの。であれば連続で深い傷を与え続ければ良いだけのことさ」


「やるわね…!」


完全に近接攻撃である黒龍の剣から繰り出される風の追加に意識が向いた中で


カイニルが一度距離を取ろうとするが、レルゲンもここは引かずにどんどんと突っ込んでゆく。


「オオォォォ!!」


「……!!」


気合いが込められて、更に自身の魔力からも黒龍の剣に付与した一撃の速度が上がってゆく。


激しい剣戟の応酬が続いていき、二刀によるフェイントを織り交ぜた動きにカイニルは変更したが、咄嗟に出来た隙を帯同していた鉄剣で防いでいく。


「厄介な戦い方ね…!でも素敵だわ」


「相変わらずのイカれようだな」


お互いに少し悪い笑みを浮かべながら更に一段階速度を上げて剣戟の応酬が続き。剣と剣の衝突音が響いてゆく。


このやりとりになってからはセレスティアは邪魔をしない様に静観し、レルゲンを見守っている。


(勝ってください!貴方ならやれるはずです…!)


その思いがレルゲンに届いたかは定かではないが、剣戟が止まり鍔迫り合いの状態になった時に


黒龍の剣に纏わせていたテンペストを解除し、解除した分の風の上位魔術を無防備状態のカイニルに当てることに成功する。


全身を風の刃で切り裂かれたカイニルは、血が滴る手の甲を見てニヤリと笑い、口に持っていって舐めると傷が既に消えている。


そして、カイニルが攻守を逆転させようと「秘剣…」と呟いた。


また神仙__雪中花が来ると思い、レルゲンは剣の軌道上に帯同していた剣で防御の体制を取るが、今度は違った。


「二の舞_______」


とレルゲンに近づいた瞬間にどこからかテクトの声が響いた。


「折角のデート中に申し訳ないが、そこまでにしてもらおう」


「どこから見ているか知らんが、余計な口を出すなよテクト」


カイニルがテクトに抗議を上げるが、テクトは尚も続ける。


「準備が全て終わったんだ。だから君達の素晴らしい戦いも、これで全て無意味になるということさ」


「何が無意味だ。姿も見せない奴が戦場を語るな」


レルゲンもカイニルとの戦いを続ける意思が十分にあり


カイニルもレルゲンと同じ気持ちだと思っていたが、そうではないようで


「あーあ、白けたわ。レルゲン・シュトーゲン。楽しかった___またお互いに生きていたら遊びましょう」


とだけ残して、カイニルは天歩の加護でその場を後にした。


カイニルが去った後に、程なくして大きな地震が発生する。


揺れを感じ取ったセレスティアがダンジョンからの距離から考えても大きすぎる揺れに怯えていた。


「こんなにダンジョンから距離が離れているのに…!この大きさは…!」


「一体ダンジョンで何が起きているんだ?」


不安そうなセレスティアの肩を抱いて落ち着けていると、テクトが高らかに宣言する。


「お待たせしたね。この私の最高傑作。”七段階目”の魔物の登場だ!実に素晴らしい力だよレルゲン・シュトーゲン!


早く見たければヨルダルクのダンジョンへ来るがいい」


「七段階目だと?!セレス、知っているか?」


「いいえ、見たことも聞いたこともありません」


首を振って否定するが、その表情は暗く


「そんな、ありえない…」


と溢すだけでセレスティアは思考が止まってしまっているようだ。


「ともかく、ヨルダルクのダンジョンへ急ごう」


レルゲンはセレスティアに念動魔術を掛けてヨルダルクのダンジョンへと速度を上げて飛んでいくのだった。

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