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32話 再戦

合図を受けてレルゲンが降りて来る。

初めから黒龍の剣に魔力は込められており、伸びた光の刀身は既に念動魔術により剣に全て集約されている。


「後は任せてくれ」


「すまねぇが頼んだ」


後ろに下がっていくのを確認してから黒龍の剣が振るわれ、ラグーン・ドラゴンの首が一瞬にして切り飛ばされる。


余りにも速過ぎる決着に他の冒険者達も、レルゲンのデタラメな魔力量に圧倒されていた。


「六段階目を一撃かよ…!」


一度力を見せつけてからは、冒険者達のフォローに入るのも簡単だった。


複数のボスを相手取る時はレルゲンを積極的に頼り、レルゲンもこれに応え、

徐々に連携が取れ始めた時に、セレスティアがレルゲンに伝える。


「レルゲン!この前のベヒモスと同等クラスの魔物が来ます!恐らくは特別な六段階目かと!」


しかしレルゲンはセレスティアの合図には手で相槌を打ち、視線は前に向けられたまま。


セレスティアが疑問に思い、レルゲンの見ている方向を見ると、そこには特別な六段階目の魔物ではなく、見知った顔が現れていた。


「よぉ、レルゲン・シュトーゲン。

元気にしてたか?っても数日しか経ってないけど。


いいね、随分とまた魔力が漲っている。

マインドダウンからは無事に脱出したようだね」


「お陰さんでな、お前はそろそろ出て来ると思っていたよ。カイニル・マクマニル」


「嬉しいこと言ってくれるね。若い男の子からのラブコールには応えてあげるのが"歳上の努め"。さぁ、この前の続きをしようじゃないか」


ディシアはこのカイニル・マクマニルという人物を完全に思い出した。


(この女、間違いない。元ヨルダルクで死んだ事になっている諜報機関の一人…!つまりテクトを脱獄させたのも!)


ここでカイニルがディシアを見て「おや?」と溢す。


「そこにいるのはヨルダルクの神童ちゃんじゃない?どうしてこんな危ない所にいるんだい?」


「それはあなた方が戦争を引き起こすからに他ならないでしょう。


元諜報機関のカイニル・マクマニル。どうしてそんなに"若々しい"のか分かりませんが、元気そうですね」


「元気も元気!そして思い出してくれてありがとう。私の過去を知っている人はそう多くないけれど、神童ちゃんなら知っているはずだよねえ」


「思い出したくありませんでした」


「酷いなぁ、悲しくなってつい、殺してしまいたくなりそう」


ピリッと周囲の雰囲気が変わる。

そろそろお喋りは終わりに、カイニルも我慢の限界が近い。


レルゲンは瞬間的に上昇し、セレスティアとディシアを連れて飛び上がる。


「場所を変える、あんたも空を飛べるんだろ?」


「これは天歩の加護ってやつでね。簡単に言うと空を歩ける加護だね」


レルゲンが下の冒険者たちに向かって大声で指示を出す。


「撤退戦だ!特別な六段階目が来る以上、無理して足止めする必要はない!この女は俺が食い止める!」


レルゲンが指示を出した瞬間に下にいた冒険者達の戦線が一気に下がり、魔術師達が前衛が下がる時間を作る。


暫く飛んで行き、カイニルは抜群の膂力でレルゲンの飛翔速度に簡単について来る。


(余裕でついて来るな)


後ろを跳んでいたカイニルの姿が一瞬にして消え、レルゲンの進行方向に現れる。


「ここまで飛んでくればもういいでしょう?」


徐々に高度が落ちてゆき、平原に降り立つ。


「ここなら邪魔は入らないわ。神童ちゃんは戦えないだろうけど、そっちの青髪ちゃんは前にもいたね。二対一で結構!そっちの方が燃えるわ」


「そうか。随分と余裕だが、こちらも魔物が王国に到達されると困るんでね。最初から全力で行かせてもらう」


「そうしな、すぐに死にたくなければね!」


二人が駆け出し、セレスティアが無詠唱で持っているバフを纏めてレルゲンにかける。


一刀と二刀が衝突し、少しの間鍔迫り合いが続く。


「新しい腕の調子は良さそうだな」


「ええ、治るのに数日かかったけど、いい感じよ」


「そりゃよかったな」


ガキィインンと大きく火花が散ってお互いに距離ができる。


距離が出来た瞬間にセレスティアが四十本近いマルチ・フロストジャベリンを全て同時に射出し、カイニルに襲いかかる。


しかしこれをカイニルは避ける事なく「秘剣…」と呟き


「神仙__雪中花」


不可視に近い必殺の六連撃が一斉に襲いかかったセレスティアの得意技を全て叩き落とす。


「なっ…!」


全力の連続射出を叩き落とされたセレスティアは驚きの余り、一歩後ずさる。


出来た隙とも言えないセレスティアの心の揺らぎに吸い寄せられる様にカイニルが肉薄しようとするが、


レルゲンが帯同させていた鉄剣がカイニルに二本襲いかかり、カイニルは後ろに跳んで再び距離を取り回避する。


「手数が多いね。前回とは別人の様な戦い方をしているがどっちが本当の君なんだい?」


「さてな、どっちだと思う?」


第一段階、全魔力解放


赤い魔力がオーラとなって噴き出るが、全て身体能力と帯同させた剣に付加して薄く赤い膜の様な光が全身を包む。


「今度は赤ね、でもこの前の青の方がゾクゾクするわ」


(やはり、究極の感覚派だな。野生の獣並か)


「いくぞ」


レルゲンが斬り込みを入れるが、これをいなすように全て受け切るカイニル。


しかしカイニルがカウンターを入れようとすると帯同させた剣が自動で反応しているかの様にレルゲンの隙を消してゆく。


まるで複数のレルゲンが相手にいる様な感覚になるカイニルがやりづらいと一旦距離を取ろうとするが、


セレスティアがカイニルの足場を氷で固めて逃げられなくする。


固められた氷は、カイニルが足に気合いを込めた事ですぐに割られてしまうが、


レルゲンが更に一歩間合いをつめた事で、後ろに飛ぶまでの距離感すら消える。


初めて戦った時は魔力によるゴリ押しの戦法だったレルゲンが、


魔力を"最低限"乗せて繰り出す連続攻撃にカイニルは腕や足に小さな切り傷が生まれてゆく。


しかし、この切り傷は忽ち自動回復作用で治ってゆき、カイニルのボルテージがその分上がってゆく。


(まるで速度の乗り切ったマリーの連続剣だな)


しかし何度もこの速度はレルゲンもよく見て、そして見に受けていたために、更にカイニルを押していくことができた。


押され始めたカイニルは剣戟の最中、再び秘剣を披露する。


「神仙__雪中花」


しかしこの秘剣を三度見ているレルゲンは、慌てることなく剣の軌道上に帯同させている五本の剣をおき、


残りの一本分を黒龍の剣で全て当ててガードに成功する。


辛くも秘剣のガードに成功はしたが、お互いに再び距離が出来た。


「随分とその秘剣に頼っているんだな」


「頼る?違うわよ、これは秘剣の"基本技"。言ってしまえば難しい技ではないの」


(今のが基本技だと?)


レルゲンはカイニルの言葉に汗を滲ませた。


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