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29話 本気の掃討作戦

十キロを数分で飛んでいった三人は

魔物の戦闘列まで追いついた。


小型の魔物でも四段階目、それよりも大きい魔物は五段階目以上だろう。


レルゲンは持参してきた王国の剣を

五本回転させ、円刃形態にして魔法を付与し

全ての剣に付与する。


「ウィンドカット」


五本全ての剣にウィンドカットを付与して、

高速回転すると一種の砂嵐に近いレベルで砂埃が舞い上がる。


強力に魔法が剣に固定され

切断力が大幅に強化された必殺の剣が地面にスレスレに固定されて、レルゲンの追加の命令を待っている。


対大勢の立ち回りは十一層の

トラップにかかった時に一度レルゲンが披露したが、


その時の五倍の手数で敵を蹂躙しようと

準備するのを見た時のセレスティアは、

あまりの容赦の無さに頼もしさを感じていた。


「まずはこの剣で四段階目の魔物を一掃する。

五段階目と六段階目はこの攻撃では、

精々足止め程度にしかないないからセレスの魔術で止めをさしてくれ」


「分かりました。時にレルゲン」


「なんだ?」


「野暮なので聞きませんでしたが、

他に念動魔術の使い手がいなかった

ダンジョンでは、この戦い方はできなかったのですか?」


「本当に野暮だな…

正直言って俺自身ダンジョンを楽しみたかったし、

それはセレスも同じ気持ちだっただろ。

あまり出しゃばりすぎて水を差したくなかったのもあるよ」


「そうですか。それを聞いて納得しました」


ニコッと笑うセレスティアも、

本気の討伐戦を仕掛けるべく、マルチ・フロストジャベリンを空中に四十本近く待機させる。


ダンジョンでは一度に十本の生成しか

見ていなかったレルゲンも悪い笑顔をする。


(楽しみたかったのはお互い様か…!)


(考えていた事は同じようでしたね)


二人の様子を見ていたディシアは、

セレスティアを見て


(本当に変わったわね…というより、昔に戻ったのかしら。それを叶えているのは間違いなくレルゲンに影響されて。

なんだか本当に羨ましく感じますね)



「さぁ、ここからが本気の討伐戦だ」


レルゲンが手を前にかざすと、

風魔法を纏った回転刃が前へと進んでいき、

まるで掃除をかけるメイドのように

綺麗な線になって魔物の列が魔石へと還ってゆく。


その規則正しい線を見て、

セレスティアとディシアは戦闘中にも関わらず、

何かの芸術作品の作成風景を見ているような気分になった。


レルゲンが一度に百体程、一度に魔石へ返した所で

五段階目のゴブリン・ジェネラルが足を斬られて膝をつく。


全て魔石に還った中に一つだけ残った五段階目の魔物は、セレスティアの待機されたマルチ・フロストジャベリンの一斉射出によって串刺しにされ、


こちらも巨大な魔石へと還っていった。


やはりダンジョンの、差し詰め高難度ともなると

攻略した後の経験値や魔力上昇効果が著しく高いものとなっていた。


マインドダウンの回数に換算しても、

セレスティアの場合は五回分、

レルゲンに至っては二回分、

実際のマインドダウンと合わせれば三回分に匹敵する上昇量だ。


この上昇はここにいないマリーも同様で、

魔力上昇量だけ見れば魔力量Aランクまで後一歩という所。


経験値は年齢問わず手に入るが、

最大魔力量に関しては幼い頃からおよそ二十歳近くまで際限なく上昇する。


それだけ器の消耗による自己修復能力が高いのだ。

セレスティアは現在十九歳。

マリーは現在十七歳。

レルゲンは十八歳のため、


この時期が実力的にも一番上昇が見込める機会だ。


狙ったわけではないが、

どれも成熟まで後一歩という所で

一番効率のいい修羅場を潜っていることになる。


しかし、そこはやはり才能が大きな割合を

占める魔術界においては、

十代という若い年齢で六段階目の魔物を複数討伐する実績は過去の記録を遡っていてもほぼ無い。


それこそ何百年も昔に現れた

"魔王"を撃ち倒した勇者でも無い限りは、

到底不可能な道筋を辿っていると言っていいだろう。


次々と魔物が魔石に還っていく様を見て、

ディシアは今後の研究に活かすべく、特にレルゲンの戦い方を目に焼き付けていた。


(念動魔術___開祖であるナイト・ブルームスタットが最も得意としていた操作魔術。

元々は手伝い使用人の為に作られた

とは聞いていましたが、戦闘にこんな活かし方があるとは!)


後にディシアが念動魔術の戦闘転用に

ついての論文を出す程にまで、衝撃を受けていた。


およそ十キロ近くの行軍を、

一キロ程押し返した所で魔物が左右に散り始める。


この様子を必ずどこかで観察している

テクトが早速動いてきた。


「実に素晴らしい掃討能力だ。

だが、四方八方に魔物が散った場合はどうするかい?さぁ見せてくれ、レルゲン・シュトーゲン」


別室でこの快進撃を目の当たりに

していたテクトもディシアと同様に興奮していた。


(やはりどこからか、俺達が魔物を討伐している風景を観察しているな!だがそれも想定の範囲内だ)


予め大規模な魔力糸を展開して、

綴雷電を常時発動させていた

即席の電子柵が効力を発揮し始める。


左右に散っていった魔物達が電気を浴びて感電し、

糸がレルゲンの方向に進むに連れて徐々に狭くなってくる。


正に水中の魚を捕まえる為の漁のような

仕掛けに、テクトは興奮を抑えきれなくなり、

もう少し後に展開するはずだった一手を打たざる得なくなる。


「少し早いが、次の一手といこう」


テクトがいる観察室にはいくつもの

外の様子が見て取れる画面が映し出されており、

沢山のボタンが配列されている板を叩く。


するとヨルダルクのダンジョン上部が開き、

中から無数のヒュージ・スワンが空中に解き放たれた。


暫くしてセレスティアがレルゲンに伝える。


「レルゲン!あなたの言っていた通り空中を移動する魔物がやってきます!

恐らく五段階目のヒュージ・スワンかと!」


「分かった」


いよいよレルゲンが山斬りが出来ると

言っていた黒龍の剣を背中の鞘から抜いていく。




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