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28話 テクトの過去

ディシアがダンジョン誕生のきっかけを話し始める。


「始めは地脈からの魔力をコントロール出来ないかの研究からでした。


ある程度研究が進み、付近の地脈から吸い上げた魔力を物質化

することに成功したテクトは大いに喜び、

ヨルダルクでも高い地位を得ていました。


しかし、彼の探究心は収まる事はなく、

物質化出来るなら人為的に魔物を生み出し、

魔石や魔物の素材を集める事が出来るのでは無いだろうかと考えました。


結果的にはこれもまた成功し、

テクトは更にヨルダルクでの地位を上げたかと思われましたが、

この研究はある危険を孕んでいました。


それは大きく分けて三つあり、

一つは魔物の人工生産による国家バランスの

著しい変化に対応が難しくなります。


二つ目は魔物をコントロール出来ずに

人工的な深域に似た環境を作ってしまう可能性がある点。


最後は地脈の流れを変えてしまう研究結果がありました。

ダンジョンが地脈から供給される魔力を

根こそぎ吸い上げてしまった場合は、

魔物の発生が極端に少なくなったり、

地脈のバランスが崩れたことで逆に多くなる箇所が発生したりと、

コントロールが難しい点にあります。


これを悪用すれば、何が起こるかは想像しやすいと思いますが、

ともかくテクトはこれらの危険性を無視して研究を進めよう

としたために、研究は凍結されましたが、

既にダンジョンとして幾つも生成してしまっていたことから、

出来るだけ休眠状態にすることで急場を凌いだと記録には残っています。


これは五十年程前の出来事で、

何者かがテクトを脱獄させてその後は行方不明になっていましたが、

どういう手段を用いたのか不明ながらもテクトは未だ健在。


ダンジョンの休眠状態も解除され、

着実にヨルダルクへの復讐の準備をしているものだと考えられます。


ざっくりテクトとダンジョンの関係性について

話しましたがついてこられていますか?」


二人共頷き、レルゲンが確認する。


「要するに、コントロール不可能と思われた手段を

実用化するまでに研究を重ねて、

実を結んだから奴が動き出したってことだな」


「そう考えるのが自然だと思われます」


暫くテクトについて話しをしていると再びの地震が発生する。

レルゲン達が体験した地震よりも更に大きな揺れが発生し、

付近のの家具に捕まり凌いだが、

食器が入った棚が倒れて、皿が何枚も割れてしまう。


揺れが治ってからレルゲンが念動魔術で掃除しているのを見て、

ディシアは思わず「便利な魔術ですね」と溢すのだった。


揺れの大きさから察するにもう猶予はないだろう。


気づけばもう昼下がりの時刻だ。

攻略本部によれば、冒険者の避難は九割方完了

しているとのことで、バリケードの設置を行うことになり、

残る冒険者が帰還してきた際は、

レルゲンが冒険者を連れて避難させる手筈となった。


しかし、街の避難はまだ半分にも満たない程で、

今魔物が解き放たれれば大混乱に陥る事は間違いない。

祈るようにただ避難が進むのを待つしか無いが、

テクトは待ってはくれなかった。


まず初めにセレスティアが気づく。

徐々に歩みを進めてくる大量の魔物が、

魔力感知に引っかかる。


「来ました!魔物の群れです」


それを聞いた攻略本部の長は気を失いそうになる。


「まだバリケードも避難も全く出来ていないというのに!」


レルゲンが黒龍の剣をすぐに準備し、

セレスティアとディシアに声をかける。


「俺の念動魔術で街の人達を魔物の進路とは反対方向に避難させる。

それが終わるまではディシア様を護るのはセレス。君に頼みたい。

それが終われば手筈通りに集められるだけ冒険者を集めて、

細い通路がある山岳地帯で一気に叩く。

現場の指揮は任せていいんだな?ここの長よ!」


「ああ!こうなってしまっては私が指揮を取る他無い!

君は出来る事をやってくれ!」


レルゲンが頷き、中にいる全員を念動魔術で連れ出して、

予想される進路とは逆方向に着地させる。


「セレス。俺は街の人達をこれから助けに行ってくる。

万が一こっちに魔物が来たら一番の戦力は君だ。

ディシア様を頼んだぞ」


「お任せ下さい。レルゲンもお気をつけて!」


レルゲンが頷くと、緊急の音声が流れてくる。


「これは訓練ではありません。これは訓練ではありません。

大量の魔物がこの街を埋め尽くします。

大至急、外に避難して下さい。繰り返します…」


「放送室にはまだ誰かいるのか?」


「いや、これは録音だ。自動で流れているだけで、

君が全てここまで連れてきている!」


「街に残っている人の数は?」


「五百人以上はいるはずだ」


「よし、それだけ分かれば十分だ。後は頼んだ」


避難警報が繰り返し流れている。

レルゲンは一直線に街の上空を目指して飛んでいく。


すると避難警報を聞いた街の人達が一斉に表に出てきており、

片っ端から魔力糸を伸ばして魔力を流し込み空中に浮かせてゆく。


一度に大量の人を運ぶ時には魔力糸を使った方が運べる人数が多い。

これなら一度に百人は避難が出来るはずだ。


続々と魔力糸を使った救助をしていくと、魔物が目視できた。

まるで行進でもしているかのように

綺麗に整列されて歩みを進めている様は、

人間の行軍のようにも思えるほど統率が取れている。


魔物が侵攻してくる場所から救助を行なっていたが、

街の人々を襲う事はなくその分早く歩を進めている。


「こっちのほうが好都合だな」


一度目の避難民を全てセレスティアがいる方へ連れてゆき、

再度街へ戻り救助に向かう。


二時間救助を行なったことで避難は完了し、一息つく。


「避難お疲れ様でした」


セレスティアがレルゲンにタオルと水を手渡す。

汗を拭いながら、セレスティアに問う。


「魔物の侵攻はどこまでいった?」


「行軍速度からまだ十キロに満たない辺りだと思われます」


「分かった。魔物がこっちに注意を向けないから

ガンガン狩っていこう」


ディシアが心配そうにレルゲンへ声をかける


「もう少し休んだ方がいいのではないですか?」


「いや、すぐに動けるように負担の少ない方法で

運んだから問題ない。これからセレスとディシア様を

念動魔術で空に連れ出して、

魔物の数を減らしていこうと思う。セレス、準備はいいか?」


「はい。いつでも行けます」


「十キロならすぐに着く、いくぞ」


三人がフワッと優しく浮き、すぐに見えなくなった。

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