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19話 宝箱はトラップだけじゃない


「あれ、今日はマリーさんが何だかとっても上機嫌ですね」


「そんなことないわ」


「いえいえ、昨日のセレスティアさんに負けず劣らずって、あれ?レルゲンさんは……あれれ??」


「言ってなかったか、二人は俺の奥さんだ」


「えぇぇぇぇぇぇ!!!」


朝からミリィの大きな声が攻略本部前にこだました。


中に入ると、レインが駆け寄って出迎えてくれた。


「レルゲンさん、皆さん。おはようございます。今日も攻略ですか?」


「今日から十三層と十四層を攻略するつもりだ」


「そうですか。昨日の事後処理でこちらは少しバタバタしておりますが、頑張ってください」


「ああ、行ってきます」


十二層から繋がっている構造で高くまで設定されている迷宮は、昨日のような人の気配がほぼ感じられない。


レルゲン達は昨日、スケリトル・ファラルを討伐する前に一度十二層のボス部屋を訪れていたが、


中間地点として設定されていた転移魔方陣を有効化している時間がなかった。


その為、空のボス部屋前まで再度一から登っていく必要があった。


お昼までの時間を使って十二層のボス部屋前まで到着し、転移魔方陣を有効化する。


通常、層ごとのボスは一度討伐されると七日間ポップしないが、


それ以上経過すると再度挑戦できるようになるとレインから聞いていた。


つまり十三層のボス部屋前に恐らく設定されているであろう中間地点の転移魔方陣を有効化できなければ、


レルゲン達は再度、六段階目のスケリトル・ファラルを討伐しなくてはならなくなる。


これは大幅なリスクと時間ロスが発生してしまう。


勿論、レルゲン達以外のパーティが先に転移魔方陣を有効化できればこの可能性が考えなくてもよいが


急な冒険者不足に陥ったダンジョンではあまり期待はできないだろう。


空のボス部屋を抜けると十三層の迷宮が広がっている。


「ここからが本番だ。またボスの解放がされている可能性がある。慎重に行こう」


これで仮にボスが再度解放されていれば


それはもうダンジョン攻略者以外の第三者の介入を疑うことになる。


つまりダンジョンにどこか抜け道があり、解放者はその抜け道を使い迷宮のショートカットをしていることが考えられる。


ここまでレルゲンが考えを巡らせていたが、三人には話さなかった。


不確定要素や予想の域を出ない上、ただでさえ高難易度なのだ。


不安を煽って動きが鈍れば余計に危険が伴うのは簡単に予想ができる。


歩みを進めていくと全身が骨で構成されている四段階目の魔物。

スケリトル・ソルジャーが十体近く現れる。


人型となればミリィの影移動による拘束が有効だ。


「拘束します!」


「助かるわ!」


マリーがスケリトル・ソルジャーの剣を躱しながら神剣に魔力を込めて振るうと一撃で魔石へと還る。


スケリトル・ソルジャーは刃こぼれのひどい剣を所持しており


攻撃力が低いと思われがちだが、実際刃こぼれのひどい剣で斬られると


傷口が裂傷に近くなるため、治りが遅くなる特徴がある。


治癒術師がいれば問題はないが

仮にいない場合は怪我を負うたびに飲料タイプの回復薬を使わされるので


冒険者たちからは効率が悪い魔物として好まれていない。


スケリトル・ソルジャーを順番に討伐していくと、一際魔力の濃い個体が現れる。

五段階目の魔物。スケリトル・キング


手にはカトラスのような武器を身につけており、指には宝石の数々。

売却すれば一気に大金が手に入るダンジョンでは人気の魔物だ。


倒せる冒険者は限られるが、その分リターンも大きい。


実力が足りない冒険者がこの魔物と遭遇し、何とか倒そうと挑み命を落とすケースも少なくない。


これにはレルゲン達も冒険者らしく目を輝かせて


「そこを動くなよ」


とやる気満々で武器を構えるのだった。


スケリトル・キングを討伐し、宝石と魔石をしっかり回収してから更に上層階を目指す。


十三層の中階に差し掛かった時に発見した小部屋に宝箱がポツンと置かれている。


それを見たミリィ以外の三人が


「罠だな」


「罠ね」


「罠ですね」


と一瞬で罠認定するが、ミリィは「罠ですかね?」とまだ半信半疑の様子だった。

それを聞いたレルゲンが


「十一層での転移事件を忘れたのか?」


とミリィに問うが、ミリィも応戦する。


「そう思わせておいての純粋な宝箱かもですよ?」


「だからって攻略で必要なものとも限らない」


かなり疑心暗鬼のレルゲンを納得させるために、ミリィが思いつく。


「ここでレルゲンさんの念動魔術ですよ。遠隔で開けてしまえばいいじゃないですか」


「わかったよ_セレス。一応バフを一通り頼む」


「本当に開けるのですね…分かりました」


バフが掛け終わってからレルゲン達は部屋の外まで行き、宝箱を遠隔で開ける。


すると意外にも何も起こらず、中には光の球のようなものが一つだけ入っていた。


「レルゲン、あの球_多分この剣にはめ込める奴だと思う」


「わかった。取り出そう」


念動魔術で宝箱から取り出した瞬間、部屋に警報音が鳴り響き、部屋の扉が閉まっていく。


レルゲンが音に驚いて一瞬操作を誤りそうになったが、

扉が閉まりきる前に球を取り出し、部屋は二度と開くことはなかった。


「管理者がいたら怒られそうだな」


「取れたんだから別にいいでしょ。見せて」


マリーに取り出した球を渡すと、その球の発光は徐々に小さくなり、

やがて透明の球へと変化する。


「入りそうか?」


マリーが神剣に空いている左右の穴に球を近づけると、吸い込まれるように球がぴったり嵌まる。


「「「おお!!」」」


三人が声を上げて盛り上げるが、ミリィは首を傾げていた。


マリーが神剣を見ると刀身が若干太くなり、重さも増しているようだ。


しかし、元々マリーが使用していた王国の宝剣はもっと重かったらしく


重量の増加は全く気にならないとのことでレルゲンは安堵する。


「これは開けて良かったという事ですかね?」


「ミリィ!大手柄よ!!」


マリーが大変喜んでいる。


「だそうですよ?レルゲンさん」


いたずらっぽくミリィがレルゲンに片目を閉じながら言い寄る。


「わかった、悪かった。ただ、今後また開けるときは遠隔で開ける他なくなったな」


「それはご自身の長所を活かしていきましょう!」


今後も宝箱は全て開けなくてはいけなくなったレルゲンの心労は溜まっていくだろう。


十三層のボス部屋の前に到着すると、中間地点と思われる魔法陣が光輝いている。


いつも通りセレスティアのバフをかけ終わってから魔法陣に乗り、攻略本部に通じていることを確かめる。


改めてボス部屋の扉まで転移し、これでスケリトル・ファラルの再討伐の心配は無くなった。


扉は二重構造になっているようなデザインが途中で大きく分けられているような構造をしており、中に入ると奥から火の照明が順々について明るくなり、ボスの全容が明らかになった。


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