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16話 セレスティアの千載一遇


少人数でのボス攻略を成し遂げたレルゲン達の功績は、攻略本部を沸かせていた。


「四人でボスを討伐したのか!」


「一体どこのどいつか?!」


レルゲン達のパーティはできるだけ悪目立ちしないように予め自分達が攻略したことは伏せていたが、


どこから聞きつけたのか不明とはいえ多少情報が漏れていたようだ。



レインが小声でレルゲン達に祝福する


「おめでとうございます。

いつか成し遂げるとは思っておりましたが、こんなにも早く単独パーティでボスを討伐するとは」


「ありがとう。

特に今回は全員が魔術戦を出来るから何とかなったが、五段階目とはいえ難しい相手だった」


「そうですか、これから十一層のボス攻略を考えている冒険者にこの情報はお伝えしても良いでしょうか?」


「ああ、問題ない」


「いえいえ、いつも貴重な情報をありがとうございます」


レインが深々とお礼をして受付の奥へと消えてゆく。


ボス攻略を見事成し遂げると、ボスの魔石換金とは別に攻略ボーナスというものが支給される。


いつものようにレインに支払いを任せて、レルゲン達は足早に攻略本部を後にするが、ここでレルゲンがミリィに今までの報酬分をまとめて渡す。


「これは今までミリィが頑張った分だ」


ミリィが袋の受け取ると、大きさの割に袋がかなり重かった。


「金貨がこんなに…!いいんですか?」


「ああ、それに今回のボスの報奨金は別でまだあるぞ。

十二層の攻略が終わったらまたミリィに支払うよ」


「はわわわ、これだけあれば暫くはお医者様に診てもらえるようになります。


再度の確認ですが、本当にこんなに貰っていいんでしょうか?」


レルゲンが力強く頷くと、金貨が入った袋を大事そうに抱えたミリィが微笑んだ。


「それではみなさん、今日はこれで失礼します!お疲れ様でした!」


「お疲れ様」


「またこちらに来てくだされば、美味しいものを用意しておきますね」


「いつでも念動魔術、知りたくなったらまた来ていいのよ」


「みなさんありがとうございます。では!」


ミリィが駆け足で宿に帰ってゆく。

残る攻略期限はまだ一ヶ月半もある。時間的にはまだまだ余裕があるだろう。


気にするところは期限よりもマリーとセレスティアの安全についてだ。


十層までは十一層のボス部屋前のトラップ自体存在しなかったらしいので、


いよいよダンジョンも本格的に攻略に来た冒険者を阻みに来ているのが分かる。


(ボス攻略の時も感じたが、気を引き締めないとな)


難しい顔をしているレルゲンを見て、マリーが歩きながら


「今日は旅館に戻ったらパーっとやりましょう!お酒も今日くらいは飲んでもいいわよね?セレス姉様?」


口に手を当てながら笑うセレスティアは


「そうですね、今日くらいは少し羽目を外しても良いでしょう。もちろんレルゲンも付き合ってくれますね?」


「そうだな、今日くらい俺もいいと思う」


「やった!じゃあ女将さんに言って普段より豪勢にしましょう!」


「普段から豪勢だろ」


レルゲンが思わずツッコミを入れるが、三人の帰路につく足取りはどこか軽いものだった。


浴衣に着替えた三人はお酒も交えつつお互いを労った。


出された料理はいつもより量が多いが、度重なる魔術行使による疲労からか直ぐに食べ終わってしまった。


お酒も進み、マリーが顔を赤くしながらレルゲンにお酒を注いでもらうべく、杯を差し出す。


「少し飲み過ぎじゃないか?」


「いいのよ、今日くらいは」


お酒による汗が鬱陶しかったのか、マリーは長い髪を後頭部に纏めている。


普段隠れていた首筋が露わになった様は何処か色っぽいと感じていた。


(いかん、俺も少し飲み過ぎだな)


マリーが眠くなったのか、座っているレルゲンの膝に横になって寝てしまう。


こんな無防備な姿は、王国に帰ったら見ることはできないだろうと思い、マリーの綺麗な金髪を優しくそっと撫でる。


「マリーばかり狡いです」


こちらもだいぶ出来上がって来ている。


セレスティアもマリー同様に髪を纏めて首筋からうなじにかけて見え、


心臓が跳ねるのをレルゲンは感じていたが表情には出さない。


しかし、セレスティアはその僅かな違いに酔っていながらも気づいていた。


「触れたいですか?」


「い、いや」


「マリーも寝ている事ですし、私は構いませんよ?」


何だかお互いにそういう雰囲気になって来てしまう。顔と顔が近付いていくが、ここで扉を叩く音がする。


「配膳を片付けに参りました」


セレスティアとレルゲンがさっと顔を離して


「どうぞ」


女将さんを中へと通すが、二人の雰囲気を察してか時間をかけずに片付けを済ませて足早に部屋を出て行った。


「寝ましょうか」


「そうだな」


一度リセットされた雰囲気は元に戻る事は無かったが、マリーは自分のベッドに寝かせ、


セレスティアは何も言わずにレルゲンの布団へと潜り込み、一夜を過ごしたのだった。


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